名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

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大山将棋研究(543);中飛車に45歩急戦(山口千嶺)

2017-06-07 | 大山将棋研究

☆ 昨日の復習

先手番中原先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜20170607
昭和55年7月、山口千嶺先生と第28回王座戦です。


山口先生は四間飛車だと思っていましたが中飛車です。「英ちゃん流中飛車」は54歩を突かない駒組みです。ここで45歩同歩33角成同桂24歩の時に46角23歩成28角成33と、そこで54銀と逃げられるという寸法で、この図では45歩の仕掛けがないのです。でも32金と備えておいたら大山先生はどう指したかというのは気になります。加藤流の袖飛車をやったとは思えないのですが。

57銀と上がった後なら46角はないわけで、45歩の仕掛けができます。54歩を突いてあれば55歩同角54飛という受け方もありますが、突いていないのですから32金。

この形は居飛車が46歩と控えて打って、45桂を狙うというのが手筋です。

大山先生の天守閣美濃も珍しいと思いますが

結局は銀冠に組み替えです。山口先生は玉の堅さで劣るので仕掛けどころと見ました。

44銀が動けば33角の利きが通ります。

大山先生は予定通りの45桂で反撃。

山口先生としては先に45飛もありましたが37歩成。これは王手で取られるのですが、その前に34銀と抑え込みを狙われました。ここが勝負の分かれ目です。28と43銀成ではまずいですが、45飛同銀28とはありそう。次の49飛が両取りです。

41飛でチャンスを逃しました。王手で37と を払えば大山先生が指しやすいです。

駒損でも山口先生は桂を使って筋よく攻めます。

角を取られても飛をさばき

飛桂交換でも勝負の形になっています。これで後手玉が堅ければよい勝負ですが。

馬を作り、金を剥がしに行き

駒損でも と金で攻めようとしています。

だけど後手玉が堅くないのです。大山先生の寄せは75桂から。

大駒を急所に打って、でも粘られた感じですが、

角を切って62歩成。軽い決め手がありました。75桂が大活躍です。

51香を取れればもう少し。山口先生の攻めも確実ですが、小駒だけなので足は遅いです。

取った香を83に打って寄り筋でした。

後手玉は詰めろ。投了です。

山口先生は筋の良い振り飛車党なのですが、大山先生の34銀で惑わされました。打つ方も空振りになると形勢が悪くなるので勇気が必要ですが、本局はうまくだましてしまった感じです。
大山先生の寄せ方を学んでおきましょう。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山王将
後手:山口千嶺6段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 5六歩(57)
8 4三銀(32)
9 6八玉(59)
10 5二飛(82)
11 7八玉(68)
12 7二銀(71)
13 5八金(49)
14 6二玉(51)
15 2五歩(26)
16 3三角(22)
17 3六歩(37)
18 7一玉(62)
19 4六歩(47)
20 8二玉(71)
21 9六歩(97)
22 9四歩(93)
23 5七銀(48)
24 6四歩(63)
25 1六歩(17)
26 1四歩(13)
27 4五歩(46)
28 3二金(41)
29 4四歩(45)
30 同 銀(43)
31 3七桂(29)
32 4二飛(52)
33 4六歩打
34 5四歩(53)
35 8六歩(87)
36 7四歩(73)
37 8七玉(78)
38 6三銀(72)
39 7八銀(79)
40 7二金(61)
41 6六歩(67)
42 8四歩(83)
43 6七金(58)
44 7三桂(81)
45 7七角(88)
46 4三飛(42)
47 8八玉(87)
48 4二金(32)
49 6八角(77)
50 5二金(42)
51 7七桂(89)
52 6二金(52)
53 8七銀(78)
54 6五歩(64)
55 同 桂(77)
56 同 桂(73)
57 同 歩(66)
58 3五歩(34)
59 2四歩(25)
60 同 歩(23)
61 6六銀(57)
62 3六歩(35)
63 4五桂(37)
64 同 銀(44)
65 同 歩(46)
66 3七歩成(36)
67 3四銀打
68 4一飛(43)
69 4六角(68)
70 5五歩(54)
71 3七角(46)
72 3六歩打
73 2六角(37)
74 5四桂打
75 7七銀(66)
76 6六歩打
77 6八金(67)
78 3七歩成(36)
79 同 角(26)
80 7三桂打
81 3三銀(34)
82 同 桂(21)
83 2三角打
84 4五飛(41)
85 同 角成(23)
86 同 桂(33)
87 5五角(37)
88 4七角打
89 6四歩(65)
90 5二銀(63)
91 7八銀(87)
92 5六角成(47)
93 1一角成(55)
94 5七桂成(45)
95 同 金(68)
96 同 馬(56)
97 5九香打
98 5六歩打
99 5七香(59)
100 同 歩成(56)
101 5三歩打
102 同 銀(52)
103 7五桂打
104 6四銀(53)
105 6三歩打
106 6一金(62)
107 4四馬(11)
108 5三歩打
109 4三角打
110 7一金打
111 2一飛打
112 5一香打
113 6一角成(43)
114 同 金(71)
115 6二歩成(63)
116 同 金(61)
117 5一飛成(21)
118 7五銀(64)
119 同 歩(76)
120 6七と(57)
121 6四金打
122 7七と(67)
123 同 銀(78)
124 6五角打
125 8三香打
126 同 玉(82)
127 9一龍(51)
128 8七銀打
129 7九玉(88)
130 8二金(72)
131 6三歩打
132 投了
まで131手で先手の勝ち



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20170607今日の一手(その520); 反撃を見せる

2017-06-07 | 今日の一手

20170607今日の一手

これも5月のR選手権予選から、私の将棋です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは同程度。(細かく比較すると、先手玉は上部に厚く、後手玉は横からの攻めにも強い。)
先手の攻め駒は持ち駒角1枚。
後手の攻め駒はありません。

総合すれば互角です。

☆ 大局観として
本局は私が先手で76歩34歩77角に同角成から始まっているのですが、後手番で33桂の形での角換わり、というのを30年来(時々思いだしたように)指しています。対局相手も大学の後輩のK君で、懐かしい戦型です。私の中では少しずつ進化していて、攻撃力は少ないけれど、少し固く囲ってみました。
後手は65歩からの銀桂交換が狙い(飛銀桂が攻め駒になる)ですが、73角と打たれる傷があるので自陣に82角と据えたわけです。
65歩から動かれたら後手の攻め駒はうまくいけば4枚になります。先手は攻め駒1枚ですが、28飛はすぐに使えるとしても、3枚目、4枚目の攻め駒は難しいですね。左側に目を向けながら、やや受け身で指すことになりそうです。


○ 実戦は35歩同歩26飛と進めたのですが、これは定跡の応用です。

これはやや古い形なのですが、30年前に谷川先生が開発した攻め筋があって、25桂24銀28角

から415歩同歩64角を目指す攻め筋で、それまで角換わり腰掛銀は千日手になると思われていたのがひっくり返りました。
これを15年前に後手を持った郷田先生(20020801棋聖戦第5局で、注釈康光戦記に詳しい)が75歩同歩84飛

と受けて、45歩同歩同銀に76歩同銀45銀同飛54角

という筋で有利になった(ただし銀得でも大差ではない)、というのが基礎知識。75歩を手抜いて、というのも検討されましたが、現在ではこの攻め筋は見送られています。先手は4筋に飛をまわるよりも、2筋のまま攻めるほうが主流です。

さて、それを元に問題図からでも35歩同歩26飛

と受けたわけです。65歩に同桂同桂34歩

普通の腰掛銀と違って、桂交換になるので後手から34桂を打たれないように注意します。(34桂28飛46角を嫌った)34同銀65歩に55桂

何だろう?と思いました。まあ65銀同銀同飛56角が両取りになるというのは同じですから、それは回避するだろうと思っていたのですが。応手はいろいろありますが、66金が普通のはず。47桂成?

これで感心してしまったのが間違いでした。うまい手ではないだろうという直感と、69飛成を食らってまずい、という読みが違う結論を言っているわけです。
これは直感のほうが正しくて、素直に47同銀65銀同金同飛56角69飛成に79金

56の角が78に利いているのです。78金がないので大丈夫。ここまで読めませんでした。(私が読む深さはその日の体調次第です。)49竜なら58銀打から34角がまわれば勝ちです。竜を作られていても金と銀銀の交換ならばいいでしょう。(長年の修行で少し読めるようになった、というのが間違いのもとで、3手くらいしか読まないならこう進んだのに。)

さて、47桂成を取れないと思い込んで(そのために55桂の応手を間違ったかと、局後もずっと悩んでいたのですが)64桂

が次善策です。64同角同歩同飛で歩切れ、55角

と打つのが形だと思ったのですが、この時に後手の持ち駒は桂と歩だけなので、角を打たずに67金と引いて66歩68金引

としておけばよかったのです。利かされでかなり指しにくいのですが、73角が狙い。角と成桂の交換ですから我慢しておくべきだったか。

さて実戦は55角

以下、55同銀同銀61飛83角62飛74角成

これも悪くはなさそうに見えます。57成桂64歩に58角

これも私には不可解な手だったので、次の手がわからず。(67歩ならわかりますが。)27飛が正解でした。それを73銀92飛63歩成42金右44銀と進めてしまったので、54桂65金67成桂

で不利になりました。後手からは54桂~67成桂の他にも、67歩~68歩成のねらいがあり、ひとつ前の図で27飛を逃したら勝てないようです。
後手Kさんの意味不明(私には)な手に惑わされました。彼のような思考派(読みを中心のタイプ)とは、感覚が合わない場合があります。


△ 普通の受けは48飛で

これは普通の角換わり腰掛銀でも最初に検討されていた手です。後の46角を防いだわけです。
65歩同歩同桂66歩77桂成同銀65歩

65飛~25飛を防ごうとしても、しつこく攻められると少し指しにくいです。(後手からは85桂もある。)

ならば素直に交換させて(65同歩同桂同桂同銀同飛)56角

とすれば29桂にひもがついています。それでも25飛74角42金右には28歩くらいか。

持ち歩があるので28歩もそんなにつらくはない(37桂と跳ねられる)のですが、後手から55桂もあるので形勢不明。ただし後手玉が堅くなって、先手玉が薄くなっているので勝ちにくいです。


△ 37角なら後の25飛はないです。

65歩同歩同桂66歩77桂成同銀35歩

でも角頭に嫌味があります。少し指しにくい感じです。


△ 何もしないで待つなら86歩くらい。

85桂を避けつつ銀冠を目指した、という手です。65歩同歩同桂同桂46角37角

37同角成同桂65銀同銀同飛66歩61飛73角

バランスは保っていますが、1歩損なのであまり指したい手順でもないです。


× 37桂と攻めの態勢を作ろうとするのも自然ですが

65歩45歩66歩68金引85桂

と攻め合いではまずいです。

65歩には同歩(あるいは同桂)しかなく、

65同桂同桂46角には73角

があるので先手よし。

後手は素直に交換しておきます。(65同桂同桂同銀同銀同飛66歩62飛)

これは互角の図ではありますが、玉の堅さが違う(37桂が77にあるなら互角)ので後手を持ちたいです。


○ 他には83角

後手の攻め駒候補が動きだしていないので、けん制しておきます。
こうなってはいけない順は、63金37桂85桂同桂同歩45歩73金

で角を殺されることですが、

63金に75歩同歩を入れておけば48飛

で困りません。85桂同桂同歩には74桂で返せます。後手から手を出せなくなっていて、22玉に45歩同歩37桂とか攻めることができます。


○ もうちょっと工夫して75歩同歩74角

から83角成を狙ってみます。85桂83角成65歩なら

65同桂46角18飛

76歩くらいしかなくて、73桂成92飛47歩

と角を追います。13角なら15歩同歩同飛で指しやすいし、73角同馬95歩には84馬から受けます。

これくらいの図で、銀と馬の交換なら悪くはないです。

戻って85桂の前に65歩としたら

65同歩85桂48飛77桂成同銀71桂

互いに我慢して、という図です。52角成から攻める(52同金64桂42飛52金43飛72桂成)


よりも、じっと66銀と上がっておいて

63銀同角成同金55桂

から43銀を狙うほうが手厚いです。



☆ まとめ
互角の序盤から有利にになろうと思ったら、何か好手が必要です。

35歩同歩26飛というのは定跡を応用した好手です。直感派はこういうのを思い出すのが得意なはず。部分的でも使えそうな筋を思い出して、適用できそうか考えるのです。これはただ受けただけではなく、後手からの65歩以下の攻めをやりにくくしている(65飛の形で34歩同銀56角がある)わけです。こういうのは「働いた受け」といいますね。反撃の味がある受けなのです。

もちろん48飛とか37角とか放置して86歩でも形勢が悪くなるというわけではありません。ちょっと指しにくいかなあ、くらいのところです。

先手陣が左に偏った(玉を固めるのを優先した)ので、37桂は方向違いで指しにくくなりそうです。単純な攻め合いには持ち込めません。

先手陣が左に偏っているのですから逆で戦うほうが良く、83角でけん制するとか、75歩同歩74角とか、角を打ち込む筋を考えるのは良い手になります。
83角はもたれて指す感じ
75歩同歩74角は攻め駒を攻める(責める)という感じです。
後手の攻撃陣が重い(まだ攻め駒は0枚)ので、その隙を突くわけです。通常は後手の85桂が銀当たりですが、この場合はせいぜい桂交換なのでぬるいわけです。先手玉が上部に厚い、というのがわかります。89玉の位置なので、玉頭で戦っているという感じも薄れていて、この場合は正しい感覚だと思います。


代償なしで後手の65歩からの桂+銀交換は避けたいです。そのために少し違う筋で反撃を見せておく、という問題でした。

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