医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

ヘリコバクター・ピロリの保菌と胃ガンの発症率

2006年10月11日 | 消化器
胃の中はとても強い酸性なので、菌は短時間しか生きられないのではないかと考えられてきましたが、15年ほど前に酸の影響が及ばない粘液の下にヘリコバクター・ピロリとよばれる細菌が生息していることが明らかになりました。ヘリコバクター・ピロリは潰瘍や胃ガンと関連があるとされ、日本人の4割は保菌者であるといわれています.

ピロリ菌がどれぐらい胃ガンの発症と関係があるかを調べた日本で調査された有名な論文があります。
Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer.
Uemura N, Okamoto S, Yamamoto S, Matsumura N, et al.
New England Journal of Medicine. 2001;345:784.

(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープ、潰瘍はないけれど「もたれ」「不快」「胸焼け」などの消化障害を認める(non-ulcer dyspepsia) 1,526人を対象に7.8年間追跡して、胃カメラで調査されました。1,246人(82%)がヘリコバクター・ピロリを保菌していると確認されました。

ヘリコバクター・ピロリ保菌者のうち36人(2.9%)が胃ガンを発症しましたが、非保菌者からは胃ガンは発症しませんでした。

胃ガンの発症は、潰瘍はないけれど「もたれ」「不快」「胸焼け」などの消化障害を認める445人のうち21人(4.7%)、胃潰瘍を認める297人のうち10人(3.4%)、胃過形成ポリープを認める229人のうち5人(2.2%)に認められましたが、十二指腸潰瘍を認める275人から認められませんでした。

日本人は、ヘリコバクター・ピロリを保菌していると2.9%もの胃ガンのリスクに曝されるというショッキングなデータでした。

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大腸内視鏡で異常なかった後の大腸ガン発症率

2006年10月02日 | 消化器
週末はキャンプに行ってきました


50歳を越えると年々大腸ガンの発症率が上昇するため、住民検診では便潜血検査が施行され、陽性であった場合には精密検査が勧められます。その中の1つである大腸内視鏡検査を受けて異常なかった後、どれくらいの頻度で施行すればいいのかというデータです。

Risk of Developing Colorectal Cancer Following a Negative Colonoscopy Examination: Evidence for a 10-Year Interval Between Colonoscopies
The Journal of the American Medical Association. 2006:295;2366.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

大腸内視鏡検査で悪性所見の認められなかった35,975人が調査対象となりました。検査前にすでに大腸ガン、炎症性大腸疾患、大腸手術もしくは5年以内に検査を施行された場合は除外され、1989年から2003年まで後ろ向き(既に起きてしまった事を後から振り返って)に調査されました。

大腸内視鏡検査の施行にかかわらない人口全体の大腸ガン発症率は1,000人中6人で、その値と比較した場合、大腸内視鏡検査で悪性所見の認められなかった1年後の発症率は0.66倍(つまり1,000人中4人)、2年後は0.59倍(1,000人中3.5人)、5年後は0.55倍(1,000人中3.3人)、10年後は0.28倍(1,000人中1.7人)でした。

一度の大腸内視鏡検査で悪性所見の認められなければ、その後10年にわたり、大腸ガン発症率は低下していることが確認されました。

この論文が言いたいことはわかりますが、この結果を現実社会でどう利用するかは難しいところです。つまり、たとえ検査によって発症率が半分になることが確認されても、まだ半分の発症率があるのですから検査を受ける必要があるのは変わらないわけです。

ただし、人口全体から計算された大腸ガン発症率は1,000人中6人とそれほど高くはありませんから、一度「大腸内視鏡検査で悪性所見の認められない」と太鼓判を押されれば、その後は2年毎など定期的に大腸内視鏡検査をする必要はなく、便潜血検査で十分だということでもあります。


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コーヒー摂取によってアルコール性肝硬変を防ぐことができる

2006年07月11日 | 消化器
Coffee, cirrhosis, and transaminase enzymes.
Achives of Internal Medicine. 2006;166:1190.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この研究では、健康保険に加入している様々な国の人々の中で、肝疾患がなかったと申告された125,580例から、1978年~1985年の健康診断におけるデータが調査されました。

2001年までに、これらの加入者の中の330例が肝硬変と診断され、そのうち199例はアルコール性肝硬変、131例は非アルコール性肝硬変でした。

コーヒーを1日に1杯未満飲用する人は飲用していない人に比べてアルコール性肝硬変の発症は0.7倍、1~3杯では0.6倍、4杯以上では0.2倍でした。非アルコール性肝硬変のリスクは、1杯未満では1.2倍、1~3杯では1.3倍、4杯以上では0.7倍でした。

カフェインを含む紅茶類の飲用は、アルコール性または非アルコール性肝硬変の発症を減少させなかったために、コーヒーの中に含まれるカフェインが原因となっているとは考えられませんでした。

また、コーヒーを飲用する人では、肝臓の障害時に上昇するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼとアラニンアミノトランスフェラーゼが高レベルである人の割合が低いことも明らかになりました。

1日に4杯以上飲用する人における、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ異常高値のリスクは0.5倍であり、アラニンアミノトランスフェラーゼ異常高値に関しては0.6倍でした。

ただしこの研究では、研究を始めたときのコーヒーの飲用に関するデータを調べているので、その後に変化した習慣に関しては考慮されていないこと、肝硬変の程度ではなく肝硬変による入院や死亡を評価項目として使用したことが限界としてあげられています。

コーヒーにはいろいろな有益な作用があるようですが、、今回の結果に関して言えば、アルコール性肝硬変の予防には多量の飲酒を回避または中止することが一番ですから、アルコールの多飲が止められないからといってコーヒーを多飲するのはナンセンスのような気がします。

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鼻からの胃カメラ

2006年06月20日 | 消化器
帰国がせまってきました。私が勤めていた病院です。


医療機器の進歩はめざましく、以前お伝えしたようにカプセル型胃カメラも登場しました。今回は鼻からの胃カメラです。一見すると口から入れる場合より怖そうな感じですが、「おえー」っという嘔吐反射は舌の根本(舌根)に物が触れることにより起こるので鼻からファイバーを入れれば嘔吐反射を誘発することなく口から入れるよりも楽です。

これまでの口から入れる胃カメラは細いものでも直径が8mmでした。2002年にフジノンという日本の会社が直径5.9mmの胃カメラを開発・発売して鼻からの胃カメラが始まりました。その後この会社は東芝と合弁して現在はフジノン東芝ESシステムとなっています。

この開発は他のメーカーにも刺激をあたえ、最近ではオリンパス社が最大径5.2mmというGIF-N260を発売しましたし、ペンタックス社は最大径5.3mmのEG-1540を発売しました。フジノン東芝ESシステム社は、最大径4.9mmの世界最細径スコープを発売する予定です。

実際に体験された方に、口から入れる胃カメラと較べて楽だったかというアンケートをすると9割強の方が楽だったと答えているそうです。残りの1割の中にはもともと口からの胃カメラが苦痛でない方が含まれていますので、鼻からの胃カメラの効果は絶大です。ついでに声帯も観察できますので、声帯ポリープも見つけられます。

例えばオリンパス社製のものでは上下2方向しかアングルがかからず操作しにくいとか、ペンタックス社製のものでは鉗子孔と送水孔が同一であるためレンズのくもりを取りにくいなど、術者側への不都合はあるものの、将来これらが改善されれば爆発的に普及すると考えられます。


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肉の摂取で胃ガンのリスクがどれだけ増えるか

2006年04月20日 | 消化器
食肉消費量が増えると結腸直腸癌、乳癌、前立腺癌の発症リスクも増えることは報告されていました。しかし1997年に発表された栄養と癌に関する報告書で、食肉及び保存加工肉の消費量と胃癌・食道癌の発症リスクとの関連はエビデンス不十分と結論づけられていました。最近その関連を調査した結果が発表されました。

Meat intake and risk of stomach and esophageal adenocarcinoma within the European Prospective Investigation Into Cancer and Nutrition (EPIC).
Journal of the National Cancer Institute. 2006;98;345.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

対象は欧州の10カ国に住む35歳から70歳までの521,457人で、European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition(EPIC)試験という調査の中で食肉消費量に関するアンケートを受けていました。

平均6.5年間の追跡調査期間中に、胃癌330例、食道腺癌65例の診断がなされました。食肉は赤身肉(牛、豚、羊肉など)、鳥肉(鶏、七面鳥、家鴨など)、加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーガー、肉団子、パテなど)に分類しました。

胃癌の発症リスクは、総食肉摂取量(1日摂取量100g増加あたりのリスクの増加は 3.52倍)、赤身肉摂取量(1日摂取量50g増加あたりのリスクの増加は 1.73)倍、加工肉摂取量(1日摂取量50g増加あたりのリスクの増加は2.45倍)と有意な関連がありました。ピロリ菌陽性者では総食肉摂取量が1日摂取量100g増加あたりのリスクの増加が 5.32倍と、食肉摂取量増加に伴うリスクの増加率は高くなりました。

食道腺癌と総食肉摂取量ならびに加工肉摂取量の間には統計学的有意差は認められませんでした。60歳の被験者が10年以内に胃癌を発症する絶対リスクは、総食肉摂取量が下位4分の1のグループでは0.26%、上位4分の1のグループでは0.33%でした。

肉が大好きな方、肉の摂取もほどほどにということです。


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胃潰瘍の治療薬

2006年04月06日 | 消化器
逆流性食道炎、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍は、胃酸の分泌が粘膜保護能力(粘液、血流、プロスタグランディンなど)を超えると発症しやすくなります。そこでこれらの疾患の治療にはヒスタミンレセプター2・ブロッカー(H2ブロッカー)やプロトンポンプ・インヒビター(PPI)という胃酸の分泌を抑える薬が使われます。一般にPPIはH2ブロッカーよりも胃酸分泌抑制作用が強いと言われています。

H2ブロッカーは昭和63年から発売されていましたが、10年ほど前にPPIが開発され、厚生労働省から定められた薬価はPPIがH2ブロッカーの2倍ですから、製薬会社は売り込みの姿勢を強めていきました。

しかし、日本人は欧米人に比較して胃酸分泌が弱いため、高い料金を払ってPPIを使用する必要があるのかという議論がありましたが、日本人での研究があまり進んでいませんでした。無作為試験ではないのですが、昨年にやっと日本行われた大規模臨床試験の結果が発表されました。

Minimal change oesophagitis: a disease with characteristics difference to erosive oesophagitis.
Alimentary Pharmacology & Therapeutics. 2005;Suppl 2:19.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

胃カメラが施行できた606人の外来患者さんを対象として、582人が解析可能でした。そのうち347人は非治療群、235人が治療群でした。

結果は、
1、逆流性食道炎は日本人の場合、非びらん性の場合が多くH2ブロッカーでコントロール可能であること。
2、上部消化管出血に関して、我が国では一般的に内視鏡的止血術が行われており、ヒスタミン刺激による胃酸分泌が主である絶食時にはH2ブロッカーの胃酸分泌抑制作用はPPIと同等であること。
3、抗炎症剤による潰瘍の場合、H2ブロッカーも有効であり再発抑制にも有効であること。

PPIはH2ブロッカーよりも胃酸分泌抑制作用が強いからPPIを使用するというのは、両者の薬価が同じ場合に言うことができるのであって、PPIの薬価がH2ブロッカーの2倍というのであれば、まずH2ブロッカーを投与し無効の場合PPIを使用するのが適切ということになりますが、最近では製薬会社の宣伝にのせられ、最初からPPIを処方するケースが増えてしまっています。

PPIとH2ブロッカーの薬価(胃潰瘍に1日2回使用する場合の1回分)
H2ブロッカー
ガスター20mg 68円
ザンタック150mg 59円
アルタット75mg 59円
アシノン150mg 57円
ストガー10mg 57円
タガメット400mg 40円

プロトンポンプ・インヒビター
オメプラール10mg 134円
オメプラゾン10mg 134円
タケプロン15mg 141円
パリエット10mg 231円


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カプセル型胃カメラ

2006年01月05日 | 消化器
医療機器はさまざまな進歩をとげています。その中にカプセル型の内視鏡があります。その名のごとく、薬のカプセルほどの大きさのカプセルの中に画像をワイヤレスで送信できるカメラを搭載して、それをそのまま飲み込み食道から大腸や直腸までの様子が観察できるというものです。価格はたしか数百ドルだったと思いますが、もちろん使い捨てで(消毒しても再利用には倫理的?精神的?な負担があります)今のところコストに問題があります。

そんなカプセル型内視鏡ですが、そんなもったいない使い方をするのではなく、これまで通常の胃カメラを使用して一部の患者さんが嚥下に辛い思いをしていた場面で、このカプセル型内視鏡に紐を付けて、食道の静脈瘤を観察するためだけに使い、使用後回収すれば(もちろん口からです)、コスト・ベネフィットと同時に汎用性が高まるのではないかという報告が最近なされました。

Jornal of American Gastroenterology. 2005;100:1065.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)

Feasibility and safety of string wireless capsule endoscopy in the diagnosis of esophageal varices.

対象患者は肝硬変により食道静脈瘤が疑われた30人(平均年齢54.4歳)で、全例で紐が切れたりカプセルが消失したりする事がありませんでした。平均観察時間は5.8分で、これまでの胃カメラでその後観察した結果、正確度は96.7%で、苦痛もほとんどありませんでした。全体の83.3%の方がカプセル型内視鏡を好みました。

単純にカプセル型内視鏡に紐をつけただけですが、素晴らしいアイデアです。食道の観察に関しては、数年後にはこれが主流になっていくかもしれません。

百聞は一見にしかず↓
http://www.gihealth.com/html/test/given.html



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ヘリコバクター・ピロリと潰瘍の関係

2005年12月27日 | 消化器
胃の中はとても強い酸性なので、菌は短時間しか生きられないのではないかと考えられてきましたが、15年ほど前に酸の影響が及ばない粘液の下にヘリコバクター・ピロリとよばれる細菌が生息していることが明らかになりました。ヘリコバクター・ピロリは潰瘍や胃ガンと関連があるとされ、日本人の4割は保菌者であるといわれています。

一方、非ステロイド性抗炎症薬の多くは、胃壁の防御作用に関与しているシクロオキシゲナーゼ活性を阻害し、胃潰瘍や消化管出血の原因となります。今回はこのピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬の相互作用がどれくらい潰瘍と関連があるかという研究報告です。

Role of helicobactor pylori infection and non-steroidal anti-inflammatory drugs in peptic-ulcer disease: meta-analysis. Lancet. 2005;359:14.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★☆)

25の研究の結果をまとめたメタアナリシスです。非ステロイド性抗炎症薬は4週間以上の服用を服用群と定義されました。ヘリコバクター・ピロリ保菌者かつ服用群では潰瘍の発生は95/180人(52%)で、保菌者かつ非服用群では43/205人(21%)、非保菌者かつ服用群で23/127人(18%)、非保菌者かつ非服用群で0/149人(0%)でした。保菌者かつ服用群は、非保菌者かつ非服用群と比較して潰瘍になるリスクは61.1倍でした。服用群では、保菌者であることは、潰瘍になるリスクが3.53倍でした。同様に保菌者では、非ステロイド性抗炎症薬を服用することは潰瘍になるリスクが3.55倍でした。

また、出血性の潰瘍になるリスクは保菌者で1.79倍、非ステロイド性抗炎症薬服用で4.85倍、両方有する場合で6.13倍でした。

ヘリコバクター・ピロリ保菌と非ステロイド性抗炎症薬服用は潰瘍の独立した危険因子であり、ヘリコバクター・ピロリ保菌者は除菌をしたほうがよいし、非ステロイド性抗炎症薬服用の際は胃薬の併用が必要です。

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肝硬変の予後

2005年12月25日 | 消化器
ウイルス性肝炎による慢性肝炎やアルコール性肝障害などによる肝障害のために肝臓が何度も繰り返してダメージを受けると、組織に線維化が生じて肝臓全体が硬くなり同時に機能しなくなります。この状態を肝硬変といいます。肝硬変は肝臓病の終末期の姿ともいわれ、肝臓がんのほとんどが肝硬変から発生します。肝硬変の原因別の予後の報告です。

Long-term survival and cause-specific mortality in patients with cirrhosis of the liver: a nationwide cohort study in Denmark
Journal of Clinical Epidemiology. 2003;56:88.からの報告です。
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

1977年からデンマークの病院に入院した肝硬変の患者10,154人(平均年齢56.9歳)が調査されました。最初の1年で38%が死亡しました。そのうち56%の死因は肝硬変に関する(肝不全、食道静脈瘤破裂、肝性昏睡)ものでした。

10年生存率は、アルコール性肝硬変で34%、原因不明の肝硬変で32%、原発性胆汁性肝硬変で59%、ウイルス肝炎性で66%と、原因によりかなり異なっていました。

全体で見ると肝硬変患者の死亡率はそうでない患者の5倍で、肝硬変を原因としない死亡(心臓病、肺炎、自殺、事故など)も高かったようです。その死亡率は感染症で5倍から22倍、消化器病で8倍から14倍でした。

欧米ではアルコール性肝硬変が一番多いのですが、日本ではウイルス肝炎性です。ウイルス肝炎性肝硬変の10年生存率が66%というのは、高いともいえるし低いともいえる微妙な結果です。

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便潜血を考える

2005年09月10日 | 消化器
「降水確率」という言葉(アメリカではchance of rainといわれています)は今では誰にでも受け入れられています。この表示が始まった当時「降水確率50%」といわれても、雨が降るとも降らないともとれる表現に誰もが戸惑ったものでした。私は「ほとんど大丈夫」などという表現を使わないように努めています。そこにはどれくらい大丈夫かの情報が含まれていないからです。考えてみれば「曇り一時雨」というのは非常にあいまいな表現で、雨がどれくらいの確率で降るのかピンときませんね。

さて、秋の健康診断の季節です。皆さんは便潜血という言葉をご存じですか。便潜血とは便の中に血液が潜在していたという事で、肉眼的にみえない便中の血液反応(ヘモグロビン)を調べることにより消化管出血(腸からの出血)を診断する検査方法です。特に免疫学的便潜血検査では胃や十二指腸からの変成したヘモグロビンは検出しないので、大腸癌の有無を調べるために用いられています。これはほとんどの健康診断で検査項目に含まれています。大腸癌が存在するのにたまたま出血していなかった日がある可能性もあるので、通常は2日間にわたり2回調べられます。二日法は一日法より大腸癌の検出率が1.3倍高いのです。

便潜血が陽性の場合どれくらいの確率で大腸癌が存在するのでしょうか。1,000人の便潜血を調べると陽性の人はその中の60~70人、さらにその中で実際に大腸癌である人は1~2人にすぎません。この検査は大腸癌がありながらそれを見逃してしまう事をできるだけ避けるよう採用されています。従って便潜血が陽性の場合でも大腸癌でない確率の方がずっと高いのです。大腸癌でなくても潜血が陽性になってしまうのは、痔からの出血があったり、大腸憩室といって大腸の壁が外側に突出し嚢状になった部位から出血があったりしても陽性になるからです。

さて、便潜血が陽性といわれて注腸検査(おしりからバリウムを浣腸してX線写真を撮る検査)の日まで不安な毎日を過ごしている皆さん、こんなことなら医者は「ほとんど大丈夫」というよりも、「1,000人の便潜血を調べると陽性の人はその中の60~70人、さらにその中で実際に大腸癌である人は1~2人にすぎない」と言ってほしいですよね。私は必ずこう言うようにしています。

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