花にまつわる幾つもの話

子供時代の花にまつわる思い出や、他さまざまな興味のあることについて書いていきたいと思ってます。

第八章 白薔薇(しろばら)

2010年04月15日 | 花エッセイ
 急勾配の坂の上に小さなマンションが建っていた。

三階建てのこじんまりとした建造物で、そのマンションは周囲を薔薇の垣根が囲っていた。

 どうやらマンションの管理人の趣味だったらしく、

その垣根の真っ白な蔓薔薇が毎年五月になると一斉に咲きそろった。

 その甘い芳香が薫風にのって辺り一面に漂うのである。

 市販の薔薇のように豪華な花弁は持たず、あくまでも小ぶりだが、

その香りたるや素晴らしく高い。

花粉を運ぶ蜜蜂を誘うせいか、どうやら野生の薔薇の方が温室育ちの花よりも

いっそう強く香るらしい。

 清々しい新緑の季節、この白い薔薇の香りを嗅ぐと初夏を実感した。
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