80歳に向けて・「新風来記」・・・今これから

風来居士、そのうち80歳、再出発です。

轍(わだち) (2)

2018年04月15日 06時45分17秒 | 考える
朝、出がけに四つ葉のクローバーを見つけた。

ちょっぴり嬉しかったが、よくよく考えてみれば、それで
すっと未来が変わるわけではない。


私が変えていかねば、自分から変わっていくものなど
何ひとつない。


私の欲しかったのは、クローバーなどではない。
それが、たとえ四つ葉だろうと五つ葉だろうと。


と格好つけてみたところで、それが実際はどう見えているのか?

まぁ、私にどう見えようと、それはそれでいいのだが。

振り向けば、心に刻み込まれた「過去という名の轍」・・・。

今さら、自分の人生を出し惜しんでどうなるというのか?
70・・・、明日をも知れぬ我が生命。

他人が起き上がってくるのを待っていても仕方がない。
もともと彼と私の時間は、進行速度が違っているのだ。
彼と私、その残り時間は、圧倒的に私の方が短い。


が、私には、自分の知らぬ世界が、まだまだたくさんある。
ということは、そこにこそ、まだまだ私の生きていく希望と、
さらに伸びていく余地が、充分に残されているということだ。


ここは、決して頂上などではない。
いくつになろうとも、私は人生において、まだまだ「新人」
過ぎない。


この轍 付かず離れず どこまでも

青空に 溜息ばかり 独り者 轍 刻んで 今日も旅行く

  (ちょっと無理っぽかったろうか・・・?)

轍(わだち) (1)

2018年04月14日 16時44分51秒 | 考える
来た道を、まっすぐ曲がらず真南へ、裸足で歩くゆっくりと。
見上げる空は曇り空。


お互いに自由に生きよう、考えよう。
50年、60年の知り合いと言えども、元はといえば別人同士。

それが良いのか、悪いのか?
今、この時点では分からない。
分かりようがない。
おそらくは、今後も分かることはないだろう。

では、何故分かろうと、無駄な努力を続けるのか?
良かったと、あるいは失敗したと考えるのは一時のこと。
その一瞬先は、分厚い雲の内だ。


今ひとつ、他人の中に入り込んでいけず、離れてもいけない。

本心は、ずっとそれを求め続けてきたのにも関わらず・・・。

止まれ、私が望んだ「それ」とは、一体何なのか?
「入り込んでいく」事なのか?
それとも「離れていく」事なのか?

一体どっちなのか?

 ・・・考えてみるとよく分からなくなってくる。

この頃、ずっと記憶力不足は、難聴のせいだとごまかしている。
考えてみれば、もともと聴きづらく、はなから頭に入らないと
するなら、記憶力もへったくれもないのだが。

いずれにせよ、今、やりたいことをやるしかない。
しかしまた、私のやりたいこととは、一体何なのか?
私としての、本当の人生は、まだ始まっていないのではと思う。

「捨てることから始めよう。」
誰かが言っていた。

捨てるもの・・・?
何だろう?  私に何かあるのか?
思えば周囲、ごみだらけ。

大体、人は自分の過去を捨てることなぞ出来るのだろうか?

ふっと、寄り道をしたいなと思った。
しかし、一体どこに寄れば良いのだろうか?

それに「本道」とは、一体何なのか?

思えば、私の場合、そもそも過去の総てが寄り道だった。
そんな気がする。

「短編小説」のつもり ― ユウコちゃん (その 5 = お終い)

2018年04月13日 06時07分03秒 | 創作
ユウコちゃん (その 5 )

ユウコちゃん、未だに私は君を見上げている。

もしかすると君は、あの日の母のように、どこかで私を見おろして
いてくれているのかも知れない。

いや、これは、君が私を軽蔑して、上から目線でいるという意味では
決してない。

優しくと言うか、女性は常に男性を見おろしているものらしい。
人からそんな事を聞いたことがある。

確かに、女性とはそういうものなのかも知れない。
いつの頃か、私もそんな風に思うようになった。

古墳の町で電車を乗り換えた時、すでに時間はかなり午後に食い込ん
でいた。
電車は、ゆっくり一駅、二駅と止まり、三番目の駅が目的の町だった。

この時点で、まだ彼女がどこにいるのかも、私は全く把握していない。

駅のホームに立って、ふと思う。
私は今回、ユウコちゃんに会うことが出来るだろうか?

たまたまにしろ、彼女に会えたら、その時、私は一体どうするのか?
その後どうするのか?
( )

思えば、肝心なことを何一つ考えてこなかったのに気がついた。

今さらだが、何だか不安になってきた。
このまま黙って、東京に引き返すのが正解なのかも知れない。

私の生き方ときたら、今までずうっとこんな調子だった。
現在、すでに70歳、何と進歩のない人生なのだろうか。

いずれにしても、もう時間が無い。

ともかく開いているお店に入って、ユウコちゃんの消息を尋ねてみる。

ひょっとしたら・・・、
もしかして、もしかしたら・・・。


ユッコ、君に会いたい!!

でも今すぐ、このまま君と会うのは、ちょっと怖くもあり・・・。

期待と怖れ・・・、複雑な気持ちで、私は店のドアに手をかけた。
(お終い)

「短編小説」のつもり ― ユウコちゃん (その4)

2018年04月12日 09時16分15秒 | 創作
ユウコちゃん (その4)

目的を持った行動、目的のある毎日。
愛する人のいる家庭。

自分の行為、目的が、常に愛する人に結びつく、そんな生活。
心地よい疲労感。 ・・・

旅・・・人生という旅を、たった一人で歩いていくのは、あまりにも
寂しいことだ。


現在、70歳、今後10年を生きる目的、目標を考えてみる。

いつの間にか遠離る過去・・・。
見失われる目的と目標・・・、そして未来すらも。

自分が良ければ、それはそれで良いのではないだろうか?
そうも思う。
他人のことなどいろいろと考えたところで、所詮、他人は他人でしか
ないのだ。

お互いの間に強い信頼感がなければ、結局、他人は他人でしかあり得
ない。

新年度、あるいは自分の誕生日、時に触れ、総てをやり直すつもりで、
歩き出してみる。

しかし、結局、私は私以外の何者にもなり得ない。


思えば、いつもいつも、何か、やろうやろうと考えてはみるものの、
結局何も見つからず、何も出来ないまま、いつの間にかグータラ生活が
体に染み込んでしまった。


そう、まさに後悔は先に立たず・・・だ。

午前中、寄り道をして、私は、あの古墳の町に立っていた。

目の前の、小高い丘は、大昔、誰やらを葬った墓であるらしい。
ここで石器らしきものを見つけたこともあった。
私には、大変思い出深い丘だ。

以前、丘のふもとの公営住宅で、私たち一家は暮らしていた。
いたずらをした時に父に、木の枝で昼間も少し薄暗い山道を、
「反省しながら、一人で頂上まで登ってこい!!」とやられる。

まだ幼かった私には、細く薄暗い山道登りは、思う以上にきつかった。
・・・

私はいつも泣きながら、あるいは半べそで、えっちらと岡の頂上まで
登って帰ってくる。

今から思えば、これはいたずらの罰であると同時に、私の足腰の鍛錬
でもあったような気がする。


さらに、後で気がついたことだが、そんな時、いつもそっと母が
後ろから付いて来てくれていたようだ。

(続く)


「短編小説」のつもり ― ユウコちゃん (その 3 )

2018年04月11日 17時56分13秒 | 創作
ユウコちゃん (その 3 )

今回の旅行に出て以来、ずっと繰り返し考え続けてきた。

今さら・・・、いや、今だからこそ・・・、そう、今しかない・・・。
しかし、本当にこの先、何かが待っていてくれるのか? ・・・と。

青春期、私も人並みに、何度か恋を経験した。
しかし、結局はどの恋も実ることはなかった。


初めての恋・・・、気持ちを打ち明け、即座にはっきりと断られた。
「悪いけど好みじゃない。あんたとずっとやっていく自信がない。」

また気持ちを打ち明けたが、返事すらもらえずに無視されたことも。

さらには片思いのまま、打ち明けることすら出来ずに終わったことは
二度、三度・・・。 ()

恋多き男と言わば言え。
それが青春期というものではないだろうか。


そう、ユウコちゃんの話だった。
彼女と別れてから、すでに60年以上になるだろうか?

無論、今もなお、ずっとこの街に暮らし続けているとは考えにくい。
それならそれで、その後の消息が気になってくる。
どうなんだろう・・・?

そう、初恋と言うにはあまりに幼なすぎた。

思えば、学校で彼女と過ごした時間は、ほんの一瞬とでも言うような
短期間だったが、あの日、それが蘇ってから以降、ずっと気になって、
時折、彼女の幼くかわいい姿が眼の前にちらつくようになった。

人は希望があるかぎり若く、失望と共に老い朽ちる。 S・ウルマン

ユウコちゃんへの思い・・・。
そう、それだけが今、やっと仕事から解放された男の、ただ一つの夢。
ひょっとしたら、それが私に心の安らぎを与えてくれそうな、そんな
気がする。

しかし、これはあまりに身勝手な、また虫のいい話だろう。

もしも、ユウコちゃんの消息が知れたならそれだけでいい。
そのまま黙って帰ってこよう。

考えてみれば、それは当然の事だ。
どうして、今まで気づかなかったのか?

私は、自分の思いつきに思わず指を弾いた。
(続く)