@現実にはあり得ない娘の体に妻が「憑依」、夫との異様な生活が始まる、そんな冒頭からのミステリーが最後には一変する。「秘密」とは信頼の上にある相互関係で、互いに秘密を守るのは容易では無い。亡くなった妻のことを悼み、悲しむ夫に対してフリをしていく様は娘だけの「秘密」だったのか。「自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶ」と締める。
『秘密』東野圭吾
「概要」運命は、愛する人を二度奪っていく。自動車部品メーカーで働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。 その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密"の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、 平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。
ー事故にあい娘に憑依した妻と夫との微妙な関係が本筋となる。母と娘、妻と夫の関係を互いに想い憑依したように見せかけた心遣い。
ー文中の気になる言葉「1つ破ると、2つ破るのも、3つ破るのも同じだと思っちゃう。そうしてどんどんダメになっていっちゃう。私の前の人生は、それの典型だった。その結果、小学校から短大まで14年間も学校と名のつくところに通っていながら、生きていくための術が何一つ身に付かなかったの。私は、同じことを2度と繰り返したくないわけ。あんなに深い後悔を、もう一度するのは死んでも嫌いなの」
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