@金融(機密情報)における情報漏洩は社会を乱し一部の人間だけが徳をする、そんな「金」にまつわるビジネス小説だ。背景には切羽詰まった一人の金欠事情から迷い「悪」への手を差し向ける行為だ。更に権限を持った富裕層が如何に税制対策で「闇金」「隠し金」をするか、政府の多額に膨れ上がった赤字国債の破綻を回避する為の政策を上手く利用、巧みに便乗する事を考えて行動するのである。
現実、2024年日本の赤字国債は総額1297兆円で、政治家の利権に目が眩んだ公共投資、予備費、補助金などばら撒いた所為であり、今後数十年以上かけ負担を課せられるのは若い国民だ。(図表は日本の歳出額2024年)
『国民収奪税』千代田哲雄
「概要」政府の愚策へ怒りをこめた情報小説!佐高信「大増税」が迫る中、必読の書!格付け情報の漏洩疑惑と新税にからむ大謀略。経済アナリストの闘いは――。新人とは思えぬ着眼点と分析力に感心。 清水一行「政府の愚策へ怒りをこめた情報小説!」経済小説は情報がいのちの情報小説である。しかし、情報を生み出すのも、それを操り、操られるのも人間であり、人間と情報の関わりがダイナミックに描かれなければ、経済小説にならない。著者は豊富な経験を生かし、国債、格付け会社等のテクニカルタームを不自然な形ではなく、小説の中に見事に溶かしこませながら、絵解きをしている。タイトルが語っている政府の愚策への怒りをこめてである。
ー金融絡み、投資から闇金への動きなど現実の世界を表現したビジネス小説だ。
ー「企業の格付け」の事前漏洩が格付けしている企業から出ていると言う噂から内部闘争が始まる。「格付け情報」を公開する前に知っている人物は四人。誰かが漏洩していると睨んんだ調査担当を社長から依頼され探求していく。
ー調査部の信念は「正しいと思ったことは例え圧力がかかっても曲げずに貫け」と言っていたが、政府のSECからの事情聴取うから会社の方針として隠蔽に走ることを決定。調査担当者は調査する上で浮かんだ、一部地域の土地を漁っているグループがベンチャー企業のグループであり、そのグループへの支援をしているのが「格付け調査」企業の社長との線がつながる。そこには土地値上がりを仕組もうとする政府財務省が動き始め、新たな税制の仕組みを仕込もうとしている情報をも得た。政府は「100兆円を超えるブラックマネー(裏金)」を炙り出す新税を考案中という。だが、それは政府の思惑とベンチャーグループの思惑の相違が後に出る。さらにこの漏洩の裏には介護とがんの病魔に苦しむ家族を救う為の行為が足を救われた形となる。
ー政府の赤字国債から脱却、国の存亡をかけた税制改革がキーとなるが、文中にある
・「財産税」(住宅ローなど借金を含めた預金封鎖による金融資産税)
・特殊法人格組織の民営化
・土地政策の時限付き措置(不動産取得税・譲渡所得税・登記登録移転などの登録免許税)
ー国債
1965年、佐藤内閣の時東京オリンピックでの過剰投資にきた不況を乗り切るために2千億円赤字国債が発行、その後毎年発行され1983年には発行残高が100兆円、1994年には200兆円、2002年には400兆円を超え、現在2024年には34兆9490億円発行し総額1157兆1009億円プラス短期的な借入金91兆4993億円、借入金が48兆5613億円、総額1297兆円
今後、金利が1%上がるだけで利払いが約13兆円増加することになる。税収は72兆円で国家予算は112兆717億円(27兆90億円が国債赤字返済となる)
ー文中での言葉
・国債の大量発行「利権に目が眩んだ政治家が、後先考えずに公共事業をばら撒いたツケだ」
・「企業犯罪ってきっと小さなことの積み重ねで、大きくなっていくんでしょうね、一つ隠せば次も隠さなければならなくなって、でもどうして隠そうとするんでしょうかね」「我が身のかわいさのエゴさ。人間なんてエゴイストばかりだからな」
・「人間はほんのちょっとした歯車の狂いから、足を舞台から踏み外して奈落の底へ落ちていく者なのか」
・「全員がアナリストとしての矜持と高い倫理観を持つことしか危機を乗り越える手段はありません」
・「人生とはわずかなきっかけで大きく変わる不思議なものだ」