ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

「生まれ変わる」摩訶不思議な世界を体験する『花まんま』

2024-11-24 07:37:48 | ミステリー小説から見えるもの
人生の摩訶不思議な世界を誰もが一度は遭遇し、体験する。ここでは亡霊、奇妙な生物、死に別れ、生まれ変わり、死神・言霊、死の知らせなど世の中で決してないとは言えない事柄を思い出として記述した小説だ。特に「花まんま」(生まれ変わり)と言う内容は世界でも実例があり、人の魂は生まれ変わる(事も)という。現世に真っ当に生きれなかった魂があの世に行けず再び人間の現世に戻ってくるという話である。
『花まんま』朱川湊人
「概要」まだ幼い妹がある日突然、母のお腹にいた時のことを話し始める。それ以降、保育園をぬけだし、電車でどこかへ行こうとしたり、習ったことの無い漢字を書いたり。そして、自分は誰かの生まれ変わりだと言い出した…
「トカビの夜」いじめへの後悔
異国からの移住者へのいじめ。それは病弱な幼児へのいじめをしたことで悔いる
「妖精生物」生きる幸せ
妖精生物で幸福が訪れるといわれたが、幸福は母の離婚へとつながる
「摩訶不思議」思い通り
仕事もせず気ままな男が不意に亡くなると、3人の女性が葬儀に参加、葬儀は無事に終わる
「花まんま」
兄妹の妹が自分が「生まれ変わり」だと思い、全くの別人の名前と家族を言い当てる。それを確かめにその場所に出向く。そこで見たのは21歳で亡くなった娘を思い、やそ細った父親だった。その父親に娘の好きな「花まんま」(弁当箱)を贈ると記憶が蘇り妹が娘に見えた。
「送りん婆」
医者に見放され苦しんでいた男を、婆やは「言霊」で楽にしてあげた
「凍蝶」
南の方にしか生息しない蝶々を見て一人の女性が悲しんだ。それは病気で弟が亡くなった知らせを送ったのだ。


窃盗で得た大金で哀れな姿に『パリ警視庁迷宮捜査班』

2024-11-08 06:58:20 | ミステリー小説から見えるもの
殺人事件で身内が巻き込まれ複雑な事件へ発展、それも主犯格としての疑惑が。誰もが金が必要とする時がある、それも大金が一度に必要とする時。息子の出世の為での行為がまさかの結果になるミステリー小説だ。「お金を簡単なバイトで稼ぐ」窃盗、強盗など、現代の一軒家を狙う闇バイトに似ているかもしれないが、悪事と知っても引き下がれない理由がそこにある。それは良心の弱さとその先の人生が全く見えなくなるからではないかと。(場合によっては終身刑で人生を終えることになる)たった1回の行動で人生を終わりにする軽率な行為を今一度考えてみてほしい。 一人で悩むより相談する相手(家族・友人・もしくは警察など)で保護してもらう方がベストな選択となる。
『パリ警視庁迷宮捜査班』ソフィー・エナフ
「概要」カペスタン率いる特別捜査班に舞い込んだ今度の事件の被害者は、なんと彼女の義父だった。捜査班の面々は、プロヴァンスやリヨンで起きた事件との思わぬつながりを見つける。キャラの濃い新メンバーも加わって、さらに加速する名(迷)捜査から目が離せない!
ー元夫の父親(元警察官)が殺害され捜査が始まったが、何故殺されたのかが不思議でミステリーだった。だが、真相が暴かれていくとそこには意外な結果が。
ーキーワードは、元夫のコメディアンの出世に大金がつぎ込まれた。秘密を守るためか、金のありかを白状させる為か殺害された理由。


心の隙間に入り込む悪魂『枯葉色のノートブック』

2024-11-07 07:45:10 | ミステリー小説から見えるもの
男女交際に使う費用を会社での誤魔化しで捻出していた男が、その女(高校生)が日記のように書き残していたノート記述から学校、会社に暴露されていく。だが、双方とも社会問題として記事、警察沙汰にならにようにするが・・・現代、成績も優秀で何の不自由がない富裕層の子が違った世界を敢えて渡ろうと悪への行動へと誘われる。詐欺、窃盗など今までに考えられない巧みな仕組みから「心の隙間」に入り込み、分かっていながら悪の世界へと動かされる
『枯葉色のノートブック』赤川次郎
「概要」新しいケア付きマンション〈レインボー・ハウス〉の建設が進み、チーフとして忙しい毎日を送る爽香。そんななか、爽香の同僚・寺山(てらやま)が会社のお金を不正に使用しているとの疑惑が! 部下の麻生(あそう)に真相を探らせると、数々の不審な点が発覚する! 一方、爽香の周りに、あの殺し屋・中川(なかがわ)の影が……


いじめの社会から犠牲が生まれる『教誨』

2024-10-28 07:38:08 | ミステリー小説から見えるもの
「いじめ・弱者・犠牲・運命」が本書を読んで浮かんだ言葉だ。文中にある「約束は守ったよ、褒めて」は弱者が犠牲になる社会を恨んだ言葉に聞こえた「いじめ」は人の心を傷つけ、孤独化させる。それが学校であり、職場であり、住んでいる場所でも有り得ることだ。特に「いじめが陰湿」である事が、いじめている方は単なる「イタズラの延長」だと思ってもイタズラをされている方は恨みが積もり、暴発を止めることができないのではないだろうか。文中での気になる言葉:「いじめを立証することは難しいことです。傷つけられた者が物や身体といった目に見えるものなら立証しやすい。でもいじめで傷付くのは、目に見えない心です」「性格がやさしくてまっすぐ。だから、あんなことになちゃったんだよ」(人の言われるまま、疑いもせず信頼するが最後に裏切られた)「何が悪いわけでもないのに、上手くいかない人っているのよ。真面目で、逃げるのが下手で、不器用。もっと狡く生きればいいのに、それが出来ないんだよ」
『教誨』柚木裕子
「概要」女性死刑囚の心に迫る本格的長編犯罪小説! 幼女二人を殺害した女性死刑囚が最期に遺した言葉――「約束は守ったよ、褒めて」
吉沢香純と母の静江は、遠縁の死刑囚三原響子から身柄引受人に指名され、刑の執行後に東京拘置所で遺骨と遺品を受け取った。響子は十年前、我が子も含む女児二人を殺めたとされた。香純は、響子の遺骨を三原家の墓におさめてもらうため、菩提寺がある青森県相野町を単身訪れる。香純は、響子が最期に遺した言葉の真意を探るため、事件を知る関係者と面会を重ねてゆく。


情報漏洩から企業存続『国民収奪税』

2024-10-07 07:44:30 | ミステリー小説から見えるもの
金融(機密情報)における情報漏洩は社会を乱し一部の人間だけが徳をする、そんな「金」にまつわるビジネス小説だ。背景には切羽詰まった一人の金欠事情から迷い「悪」への手を差し向ける行為だ。更に権限を持った富裕層が如何に税制対策で「闇金」「隠し金」をするか、政府の多額に膨れ上がった赤字国債の破綻を回避する為の政策を上手く利用、巧みに便乗する事を考えて行動するのである。
現実、2024年日本の赤字国債は総額1297兆円で、政治家の利権に目が眩んだ公共投資、予備費、補助金などばら撒いた所為であり、今後数十年以上かけ負担を課せられるのは若い国民だ。(図表は日本の歳出額2024年) 

『国民収奪税』千代田哲雄
「概要」政府の愚策へ怒りをこめた情報小説!佐高信「大増税」が迫る中、必読の書!格付け情報の漏洩疑惑と新税にからむ大謀略。経済アナリストの闘いは――。新人とは思えぬ着眼点と分析力に感心。 清水一行「政府の愚策へ怒りをこめた情報小説!」経済小説は情報がいのちの情報小説である。しかし、情報を生み出すのも、それを操り、操られるのも人間であり、人間と情報の関わりがダイナミックに描かれなければ、経済小説にならない。著者は豊富な経験を生かし、国債、格付け会社等のテクニカルタームを不自然な形ではなく、小説の中に見事に溶かしこませながら、絵解きをしている。タイトルが語っている政府の愚策への怒りをこめてである。
ー金融絡み、投資から闇金への動きなど現実の世界を表現したビジネス小説だ。
ー「企業の格付け」の事前漏洩が格付けしている企業から出ていると言う噂から内部闘争が始まる。「格付け情報」を公開する前に知っている人物は四人。誰かが漏洩していると睨んんだ調査担当を社長から依頼され探求していく。
ー調査部の信念は「正しいと思ったことは例え圧力がかかっても曲げずに貫け」と言っていたが、政府のSECからの事情聴取うから会社の方針として隠蔽に走ることを決定。調査担当者は調査する上で浮かんだ、一部地域の土地を漁っているグループがベンチャー企業のグループであり、そのグループへの支援をしているのが「格付け調査」企業の社長との線がつながる。そこには土地値上がりを仕組もうとする政府財務省が動き始め、新たな税制の仕組みを仕込もうとしている情報をも得た。政府は「100兆円を超えるブラックマネー(裏金)」を炙り出す新税を考案中という。だが、それは政府の思惑とベンチャーグループの思惑の相違が後に出る。さらにこの漏洩の裏には介護とがんの病魔に苦しむ家族を救う為の行為が足を救われた形となる。
ー政府の赤字国債から脱却、国の存亡をかけた税制改革がキーとなるが、文中にある
・「財産税」(住宅ローなど借金を含めた預金封鎖による金融資産税)
・特殊法人格組織の民営化
・土地政策の時限付き措置(不動産取得税・譲渡所得税・登記登録移転などの登録免許税)
国債
1965年、佐藤内閣の時東京オリンピックでの過剰投資にきた不況を乗り切るために2千億円赤字国債が発行、その後毎年発行され1983年には発行残高が100兆円、1994年には200兆円、2002年には400兆円を超え、現在2024年には34兆9490億円発行し総額1157兆1009億円プラス短期的な借入金91兆4993億円、借入金が48兆5613億円、総額1297兆円
今後、金利が1%上がるだけで利払いが約13兆円増加することになる。税収は72兆円で国家予算は112兆717億円(27兆90億円が国債赤字返済となる)
ー文中での言葉
・国債の大量発行「利権に目が眩んだ政治家が、後先考えずに公共事業をばら撒いたツケだ」
・「企業犯罪ってきっと小さなことの積み重ねで、大きくなっていくんでしょうね、一つ隠せば次も隠さなければならなくなって、でもどうして隠そうとするんでしょうかね」「我が身のかわいさのエゴさ。人間なんてエゴイストばかりだからな」
・「人間はほんのちょっとした歯車の狂いから、足を舞台から踏み外して奈落の底へ落ちていく者なのか」
・「全員がアナリストとしての矜持と高い倫理観を持つことしか危機を乗り越える手段はありません」
・「人生とはわずかなきっかけで大きく変わる不思議なものだ」


「いじめ」同士から友好関係が生まれる『かがみの孤城(上・下)』

2024-07-11 07:46:03 | ミステリー小説から見えるもの
「鏡の城」それは時を超越した異空間に七人の引き篭もりの少年少女が集められる。同じ年頃でしかも同じ学校なにの鏡から戻るとそんな存在が見つからない。そんな世界に何故か助けあい友達になって行く気っ掛けを掴む。心の繋がりで人は幸せになることができる、そんな仕掛けを想像させるこの小説は読み終わった後に心がウキウキするのが不思議だ。人の繋がり、心が通じ合うと言う仲間は同じ環境、心境で初めて遭遇し合えるものなのだ。
『かがみの孤城(上・下)』辻村深月
「概要」学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていた。なぜこの7人が、なぜこの場所に――すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
ーかがみの中の世界はパラレルワールド・次元が七人とも違う場所に住んでいるという異様な世界を知る。時代が違うが同じ境遇うの仲間達だった。それはいじめに遭い、学校に通えない、仲間の中に溶け込めない、みんなと上手くやれないなどはみ出しの生徒だった。
ーある「心の教室」で出会った少女が勇気づけてくれた、それがこの七人のうの一人の姉の存在だった。心の病から13歳で亡くなった、、との時に穏やかな笑顔の優しい人に憧れ始めた、その人だった。


来世でのミステリー事件解決『クローズドサスペンスヘブン』

2024-07-03 07:44:19 | ミステリー小説から見えるもの
異次元(来世)で全ての人物が記憶喪失状態、更に創造し難いいくつかの条件は何でも可能となりその中から犯人を探すというのはミステリーに対する想像力と推理を半減以下にしてしまった。逆に人によってはこの本書の謎解きは複雑で難易度が高く、ミステリーとしての満足度が高いかもしれない。
『クローズドサスペンスヘブン』五条紀夫
「概要」俺は、間違いなく殺された――。なのに、ここはどこだ? 気がついたら目の前にはリゾートビーチと西洋館。姿の見えない配達人から毎朝届く不思議な新聞によると、ここは天国屋敷で、現世で惨殺された6人が記憶をなくした状態で天国に返り咲いたらしい。
ー来世で6人の人物が再会する。この中に5人を殺害した犯人を探す、だが誰もが記憶喪失者となっていると言う想定のミステリー小説だ。



記憶喪失から自分を知る術『フリークス』

2024-07-01 07:45:26 | ミステリー小説から見えるもの
事故で記憶喪失「自分は誰なのか」のミステリーは現実に起こっても不思議ではない。瀕死の状態から生き残った正体を知る為に自分との葛藤になる。だが五体満足ではない状態でどう調べる? ミステリーの面白さは「行き詰まり」からのどんでん返しだ。そこには必ず緒があることだ。現代では生成AI搭載のコンピュータが検索、意味付けてくれる事は間違いないが、自分の正体を知ることへの恐怖が募る。
『フリークス』綾辻行人
「概要」 「JMを殺したのは誰か」JMは自分より醜い怪物を作るため、五人の子供に人体改造を施した以上な科学者。奴を殺したのは、どの子供なのか。
「魔の手」(313号室の患者)
    幼い頃、悪夢に首を絞められる夢を何度も何度も見た。それがなんだったのか精神病患者の母のもとに見舞いに来た時に自分には弟がいたという。秘密裏にしていた箱の中身を問いただすとその正体がわかってきた。
「409号室の患者」
    麻酔から覚めると記憶がなく両足がない事を悟り悩んだ。事故に遭い瀕死の状態で担ぎ込まれた病院では自分の正体が、どうしてこんな悲惨な状態になったのか理解できなかった。自分の正体が明らかになることへの恐怖が湧いてくる
「フリークス」
    奇形児の生態実験をしていた醜い男と言われたJMが殺される。辺鄙な一軒家に奇形児、五人が一緒に暮らす不気味な館に弁護士が訪問する。事件を解決するべく全員から調書して行く、とある患者が妄想で創り上げたミステリー小説を探偵が犯人を調べていく。


「偶然と先入観」は感覚を麻痺させる『リバース』

2024-06-25 07:33:32 | ミステリー小説から見えるもの
「リバース」(逆転)と解釈している本書は最後までミステリーを読み解くには難しい小説だ。「人間嫌い」、「一人の方が楽しい」、「孤独が良い」と思う男女の唯一心を許せる友人が交通事故で亡くなる。それがミステリー事件として犯人を探す事になる。人は嫉妬する動物、だから邪魔者は要らない、これがこのミステリーのキーワードになる。三角関係の恋愛からそれをまさに破壊していく様がこの事件に繋がる、と読むことがミステリーになる。偶然が事件を起こす、だがそれは最初から仕組まれたことだった。「偶然」という仕掛けは人間の勘違い、先入観から感覚を麻痺させることがあるということ。
『リバース』湊かなえ
「概要」深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある”闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。


「お金」「人間関係」が招くミステリー事件『予知夢』

2024-04-23 07:39:02 | ミステリー小説から見えるもの
物理学者が単純な考察で事件を解決しないことを描いた短編ミステリー小説(5編)では、事件の背景にある「お金」や「人間関係」の問題が重要な役割を果たしていることを示している。
現代社会においても、多くの事件が「お金」を巡る問題から引き起こされて、近年ではギャンブル依存症などの問題行動に気をつける必要がある。 単純な判断ではなく、事件の背景にある複雑な要因を丁寧に分析することが重要で、物理学者の視点から事件の謎を解き明かすことで事件の本質に迫る面白い展開を見せる。
『予知夢』東野圭吾
「概要」深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張する。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する。5つのミステリ短編小説
・「夢想る」証拠この抹消、昔の想いを消す工作
・「霊視る」脅迫を受け殺傷、墓の近くで撮った偶然の写真が要因
・「騒霊ぐ」夫の行方不明、妻の予感
・「絞殺流」保険金目当ての自殺工作
・「予知流」模擬自殺工作が他殺に


女性にモテる秘訣は何よりも推しとまめである事『源氏物語を知っていますか』

2024-04-20 07:40:20 | ミステリー小説から見えるもの
@「源氏物語」は、平安時代の貴族社会における複雑な人間関係と恋愛を描いた傑作だ。光源氏は、経済力や男らしさだけでなく、相手への思いやりと誠実さが重要であることを示している。 当時の貴族社会では、娘を嫁がせることで家族の地位を高めることができたため、女性の役割が重要視されていた。一方で、光源氏自身も「一線を超えた不祥事」で皇室出自から平民に落とされ、再び貴族の地位を得るという曲折を経験している。
登場人物が多く、複雑な人間関係が描かれているのは、紫式部の卓越した筆致によるものだが、最後に登場する浮舟は、紫式部自身の姿を重ねて描かれているのかもしれない。
本文にある「女性にモテるための条件は経済力や男っぷりも大切だが、何よりも推しが強いこと、まめであること」とある。
『源氏物語を知っていますか』阿刀田高
「概要」男女の愛欲と孤独。野心と諦観。縦横無尽に張り巡らされた伏線の糸。
平安貴族を熱中させた、極上華麗な大ベストセラー大河小説『源氏物語』五十四帖を、短編小説の名手・阿刀田高があなたのかわりに読みました。大人のユーモアとエロス溢れる軽妙な語り口で、70年以上にわたる長大なストーリーと複雑に絡み合う人間関係が、すんなり頭に入ります。
光源氏の「一線を越える事」で血縁関係、位の上下関係、家族との関係が複雑化し始め、平民へ落とされる。のちにその複雑な関係から幸運にも復活する命が出される。息子と孫の世代では光源氏の過ちが自分へ回帰することで多くの女性を悩ませた事が反省する事になる。
源氏の「一線を越える事」で出世への道が閉ざされ、のちに回復する機会を得るなど男女の人間関係(恋愛・婚姻・離別・死別)は多くの貴族、皇族を巻き込み悩ませた物語である。


利権ビジネス・サスペンス小説『ウオーターゲーム』

2024-04-01 07:39:53 | ミステリー小説から見えるもの
このビジネスサスペンス小説は、利権絡みの競争社会を描いており、政治家の大物が関与する現実を反映している。物語の面白さは、主人公が過去の人生を晴らすために社会に斬り込む奇想天外な計画と逆転展開を描いている点にある。主人公は情報を駆使し駆け引きを行い、最終的には巧みな戦略で生き残りを果たす様子が描かれている。この小説は、現代社会における利権を巡る金持ちや政治家の貪欲さ、そして彼らが利権を手放さずにしがみつく姿をリアルに描写している。
『ウオーターゲーム』吉田修一
「概要」突如ダムが決壊し、濁流が町を呑み込んだ。水道民営化の利権に群がる政治家や企業による爆破テロ!? 秘密組織エージェントの鷹野一彦と田岡亮一は次の爆破計画を阻止するために奔走するが、事件の真相に迫るスクープ記事が政財界を揺るがす大スキャンダルを巻き起こす。テロの首謀者は、そしてこの情報戦を制する者は誰か
ー「水利権」に絡み情報を抜き、横槍を入れ、ビジネスの横取りが始まる。中心人物となる政治家、警察とのコネがある水利権に主要な人物、海外の投資家・銀行、諜報員・情報スパイ(元孤児)等が絡む裏ビジネスの事件裏だ
ー「水利権(水道事業)の民営化」中南米では外国の投資家による独占で、地元庶民は高騰する水料金に暴動を起こし政府が転覆、契約は破棄されるなどの事件が絡む、その事例をうまく投資家を抱き込んで投資させ暴利を稼ぐ利害関係を整理していく(国民の為に)
ー「男同士というのは知り合ったりしません。一緒にいるかいないか、それだけです。」
ー政治家等へのメッセージ「自分の国を出て、他の国を見ようとしない人たちは皆世間知らずになる、時間が止まるんです」


祟り、迷信をどこまで信じるか『骨灰』

2024-03-22 07:40:31 | ミステリー小説から見えるもの
江戸時代から戦後にかけて東京は地中深くどこでも大火、戦争の後の屍があったとしても不思議では無い。都心での建設ではまさに土壌深くをも調査しすることで始まるが、その地鎮祭などを仕切る企業が人柱を侵した事で、そこに居合わせた人に乗り映る奇妙なミステリーが始まる小説だ。現代、その慣習は続いており不気味な何かが起こっても不思議では無い。本書にもある、魔除けのお守り、祟りを避けるお守りがあれば大金でも買いたいと思うのは現代でも同じような気がする。人は迷信など表向けには信じないようで実は心ではお祈りをするものだ。
『骨灰』冲方丁
「概要」大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。
建築予定の場所では地鎮祭などお祓い、お浄めをすることは慣習になっているが、この小説はそのお浄め場所での祟りに触れ、不気味な出来事が発生していく。
ー地下での粉塵に呪われた光弘は、家族に様々な異変が起き始め、それが祟りかもしれないと御守りを購入する。だがその金額は予想以上に高く、二度までも余儀なくされる。が、家族の安全を考えると止めるわけにもいかず原因追及すると地鎮祭を司る企業(玉井工務店)から思い以上に故人が出てきた時には要注意と警告する。


パニック状態になった時の心理状態と行動『スワン』

2024-03-19 07:36:18 | ミステリー小説から見えるもの
テロ事件など、人はパニック状態でどの様な行動が取れるだろうか。日頃訓練している人でも瞬時の行動は予期せぬ行動に出るかもしれない。そんなテロ事件に巻き込まれ生き残った女子高校生は次なる事件に巻き込まれ、誰も知らない新たな証言のシナリオを作る展開は興味深い。生き残ったものだけが知る真実は、往々にして加害者なのに被害者となりうる可能性も大だ。それは残された被害者家族の複雑な心境に変化が生じるからだ。文中で気になる弁護士の言葉「実際の仕事は被告人の最大限に守る事、依頼人がどんな人物であろうとも」(どんな凶悪犯罪社の人間であろうと「犯罪者の味方」でいるのが弁護士の仕事)
『スワン』呉勝浩
「概要」首都圏の巨大ショッピングモール「スワン」で起きたテロ事件。
死者二十一名、重軽傷者十七名を出した前代未聞の悲劇の渦中で、犯人と接しながら、高校生のいずみは事件を生き延びた。しかし、取り戻したはずの平穏な日々は、同じく事件に遭遇し、大けがをして入院中の同級生・小梢の告発によって乱される。次に誰を殺すか、いずみが犯人に指名させられたこと。そしてそのことでいずみが生きながらえたという事実が、週刊誌に暴露されたのだ。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに一通の招待状が届く。集まったのは、事件に巻き込まれ、生き残った五人の関係者。目的は事件の中の一つの「死」の真相を明らかにすること。彼らが抱える秘密とは? そして隠された真実とは。
ーかろうじて生き残った数人を集めて検索議論が始まった。それはある会社の社長の母親がその現場で亡くなったことで疑問を呈し、探索しようと弁護士に頼んだのだ。
数回に及ぶこの茶会は参加者からの真実を読み取り事件の真相を解決したいという依頼人の話とは別に家族を亡くした夫、親友同士で競い合ったともが傷つくなど、事後の事件証言は二転三転する。


弱者の方舟・幻想世界『Butterfly World最後の6日間』

2024-03-08 07:43:53 | ミステリー小説から見えるもの
今の社会から逃避した人々、いじめに遭い閉じ籠りの人、生まれながらに、或いは身体障害者、不治の病気持ちの人々が求める幻想空間「普通の世界」(虐待者も居ない、介護人もいないごく普通の人間として安心、安定した暮らしができる社会)を探究し集まった異空間「紅紹館」は、全く違った発想の幻想社会ミステリー事件小説だ。現実社会において「社会の弱者を助ける」といった内容を含めた興味深い小説だ。 今後「孤独社会」が生み出す人間差別のない、ごく普通の人間として暮らせる幻想空間社会、少し前あったような「セカンドライフ」(仮想の世界)がVRデバイスの進化と共に発生しても不思議ではないし、存在してほしい。
『Butterfly World最後の6日間』岡崎琢磨
「概要」人型のアバター=バタフライが生息するVR空間〈バタフライワールド〉にログインしたアキは、ログアウトせず現実世界に戻らない者たちが暮らす〈紅招館〉に向かう。アキはある事情から〈紅招館〉に住み続けたいと願うのだが、非暴力が徹底されているはずの〈館〉で住人の死体が発見される……。現実世界とVR空間を行き来するパラレルワールド・青春本格ミステリ
ー幻想の世界、妄想に夢を追う、そんなVRデバイスからの「救われる」異次元世界に入れる世が来るのだろうか。暴力もいじめも無い、さらに思いのまま自由にさまよえる幻想の空間(BW)でのびのびと行きたい人々が集まった館「紅紹館」(四六時中滞在できる)に異変が起きる。
十人が住む不思議で孤立した館を探し求め二人が新入するとたの空間と隔離され事件が発生していく。犯人を求めて住人含めて現象を検証していくハイテク幻想世界のミステリー小説だ。