ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

「誘惑に弱い」は人をハメる『転落弁護士・私はこうして堀の中に落ちた』

2019-10-29 07:46:10 | 人生を「生かす」には

人は「誘惑に弱い」、特に男は「金と女」にハマると世界が一変「天国と地獄」を見るのだ。正にこのノンフィクション小説は有能な弁護士がそれにハマり、獄中生活を余儀無くされる。裸の人間の平等さ、人の恩、情けなど人間臭さを知り、時には過酷で辛い経験もし、生き延びた元囚人の生き様である。世間には甘い話、儲かる話などなど「誘惑を誘う」話がたんまりとある。だが、一旦入り込むと中々出口を迎えない、結局終焉(罰)を受けることでやっと気づくことだ。人間の愚かさは最後に二進も三進もいかなくなった時に知らされ、自ら悟とれるものだ。(煮湯を飲まされる)。

『転落弁護士・私はこうして堀の中に落ちた』内山哲夫

「BookData出典」羽振りのいい天才詐欺師「ハマのマッちゃん」の弁護を引き受け、うまくいったのが転落の第一歩だった。夜の銀座にハマり、遊ぶカネ欲しさにヤバイ筋の事件ばかりこなす日々。気がつけば、5000万円の横領と企業恐喝の罪で実刑判決。塀の中では、卑劣な刑務所ヤクザの陰謀が待っていた。警視庁出身の元弁護士による、激動の告白ノンフィクション。

  • 恩師や若手弁護士に対する「若手弁護士に対する反面教師になれ」、「我が国の刑務所における懲役囚の処遇の現状を正確に伝えろ」の2つの目的を持った自らが書いたノンフィクション小説である。概要は、現職の弁護士が金と女に目が眩み、悪の道に入り込み、数回逮捕。 5年間の懲役で過酷で個人的な自由のない刑務所生活を経験する。 また出所後の就職に50歳という年齢と職歴からまともな職業にはつけず途方にくれてしまう。だが、昔の友人・先輩が手を差し伸べ支援する姿には感動する。「苦しくなったらいつでもワシを訪ねて来なさい。いいな」と弁護士の大先輩からの言葉。
  • 「再犯率が多い原因」 それは「刑務所の処遇に問題があるのではなく、むしろ娑婆の受け入れ態勢の方に問題がある。 刑務所を出たばかりのものに対し、刑務所以上のコクな仕打ちをする雇用者が多いからです。」
  • 刑務所にいれば「真の平等とは何か」を悟ることができる。 同じ人間(裸)として全て一緒に扱われるから。
  • 「正門」と「裏門」の出所。正門は仮釈放の出口で裏門は満期出所である。現状仮釈放は半数を超えている。(満期釈放の者には華やかさはないが、仮釈放は人間のやり直しを込めた送り出すことの儀式をする)
  • 「刑務所での学習」読み書きソロ弁から始まる小学・中学レベルから高校の通信教育も受けられる。また英語、簿記含めた教科にクラブ活動、短歌、俳句、書道、ペン習字、珠算、詩吟、墨絵、茶道、禅、カラオケなどもある。だが全て規則正しい時間と規則があり「平等」である。 刑務所内では陰謀、ヤクザからの嫌がらせは頻繁にある。それを終日、何十人もの囚人を仕切る刑務官たちの職業に感心せざるを得ない。

憧れた心の隙間を倦める『切羽』

2019-10-27 08:00:10 | 人生を「生かす」には

人は何事にも全てに満足することはなく、いつも何かを探し求め、彷徨っている。子供のいない夫婦だけの生活が続くと、変化を期待したいことで生まれる偏見が、昔恋した夫に欠けたものを他の男に見つけ出し、心が揺れる。そんな恋心を描いた妻の心境の小説だ。結婚間のない子供のいない妻であり教師の隙間心を埋めようと、いつもと変わらない生活から何か物足りないと思いつつ、新たな出来事に反応していく、それに偏り始める。人には超えてはならない「壁」がある、また他人との間にも「壁」がある。人間関係の大切さは双方の「壁」、それは妻であり、夫であり、友人であり、親友であり、同僚でもある、を理解してこそうまくいくのだ。 それと「人はたまに何か無性に何かをやってみたいと思う、そうするとどこかに着くとような気がする」 馬鹿になることで自分をブレイクさせることもストレス解消に現代は特に必要かもしれない。

『切羽』井上荒野

  • 第139回(平成20年度上半期) 直木賞受賞 かつて炭鉱で栄えた離島で、小学校の養護教諭であるセイは、画家の夫と暮らしている。奔放な同僚の女教師、島の主のような老婆、無邪気な子供たち。平穏で満ち足りた日々。ある日新任教師として赴任してきた石和の存在が、セイの心を揺さぶる。彼に惹かれていく──夫を愛しているのに。もうその先がない「切羽」へ向かって。
  • 「切羽」とはトンネル工事または鉱石、石炭などを採掘する坑内作業の現場。一番先が「切羽」と言う。
  • セイ、妻は赴任した男の先生に心を揺さぶられる。それは何か物たらない心の隙間をその赴任した男性に惹かれた。悶々とする中、同じ学校の独身の女先生が東京の男性と不倫をする。ある日、その男の妻が島に来て喧嘩となり、男は妻と一緒に東京に帰ってしまう。その日喧嘩別れで不倫の男を亡くした独身女先生は赴任してきた男性と寝てしまい、結婚すると言い出す。ところが数日後不倫した男がまた帰ってきて依を戻し始める。セイは心を寄せた男性が女の先生と結婚することに唖然となるが・・・
  • 人はたまに何か無性に何かをやってみたい、「馬鹿みたいに踊ったり、闇雲に足ったり、大声を言ってみたりと、どこかにつくような気がする」

アルゴリズムの「37%ルール」で解決『アルゴリズム思考術』

2019-10-26 07:58:05 | 最新技術(IT)で変わる事

「37%ルール」と言うものが、アルゴリズムにある。アルゴリズムとは簡単に言うと「計算・思考を効率良くする手段」だと言うことで、その一つがこの「37%ルール」だ。例は2〜3本書の概要を下記に記したが、37%を超えた時点でそれまでの考えをまとめ、結論つけていけば問題解決になると言う説明だ。(検索収集・整理整列・活用利用)。コンピュータの計算を効率良くすることと人間の思考能力を良くすることにも触れており、「断捨離」などにも応用、「車の駐車場場所選択」なども一例として本書にある。 もう一つシャーロック・ホームズの言葉「人はどんどん詰め込んでいけば、新しいことを一つ覚えるたびに古いことを一つ忘れる時が必ずやって来る。だから、無用の知識はどんどん忘れて、有用な知識の邪魔にならないようにすることが、極めて重要なんだよ」

『アルゴリズム思考術』ブライアン・クリスチャン

  • ベンチャービジネス売却の最適タイミングはいつか。車をどの駐車スペースに停めるべきか。何人めの交際相手で手を打って結婚すべきか。ずいぶん違った問題のようだが、どれも解決できる、最良の共通手順がある…問題解決のため、機械的に進めれば目的を達成できる一連の数学的な手続きがアルゴリズムだ。達人でも天才でなくても難題を切り抜け、日々の作業や仕事を楽にする秘訣が学べる、現代人必読の書
  • 「アルゴリズムの思考術」アルゴリズムがあれば推測を行い、より単純な解決策を優先し、エラーのコストと遅延のコストのトレードオフを行い、賭けに出ることができる、合理的な思考である。一つの例が「37%ルール」37%を基準にトレードオフし、判断を導く方法。「計算の負担軽減」として考える。例として①「秘書採用」において、全体の37%に達するまで選択せず、検討だけ続け基準を定める。37%を過ぎたら基準に従って選択する態勢を作る。②配偶者を求める、では探す適齢期を18歳から40歳までとすると検討する期間の37%は26.1歳となりそれまでの候補者からの基準で決めていく。③レストランを決める方法、では「都合の良いとき」と漠然とした返答ではなく「火曜日午後1時から3時まで」、また2-3つの選択肢を与える事で相手の「計算・思考を効率良くする」ことにつなげる。
  • 「アルゴリズム」と言う言葉の由来は、9世紀古代ペルシア数学者アル・フワーリズミーの名に由来する。バグダッドの近くでシュメール語の刻まれた4000年前の粘土板が発見されたがそこに長除法(割り算の筆算)が記されていた。
  • 「探索」と「活用」。「探索」とは「集めること」で、「活用」とは「使う」こと、それを「ソート」(整列)させること。穴のあいたカードを開発して並べ替えた企業がIBMとなった(発明者:ハーマン・ホレリス)
  • 整理整頓の基本は並べ替え「いつからあるのか、まだ使えるのか、同じものを持っていないか、最後に使ったのはいつ」などひとまとめにまとめることで断捨離可能
  • シャーロック・ホームズ「どんどん詰め込んでいけば、新しいことを一つ覚えるたびに古いことを一つ忘れる時が必ずやって来る。だから、無用の知識はどんどん忘れて、有用な知識の邪魔にならないようにすることが、極めて重要なんだよ」(追いだしと千里眼)
  • 「歳をとり、記憶の遅延が時折起きるようになっても、気に悩む必要はない。遅延の長さは経験の豊かさの指標でもあるから。思い出すのに苦労するのは、知識が豊富であることの証と言える」

国籍の違い『蔭の棲みか』

2019-10-25 07:47:43 | 世界の動きから見えるもの

@人は環境次第で変わる。だがその背景次第では変えたくとも変えれない事もある、とはこの小説。国籍の違いから考え方の違いは思った以上に解離がある。商習慣の違い、生活環境の違いはその典型的なものかもしれないが、国籍の違いで思うままにならない事も多くある。現実、日本人はそうは思わなくとも海外からの移住者・定住者にとっては日本のハードルは相当高いと言う。日本は外国人に対して冷酷な国なのか、島国の日本、これからの国際化の波にしっかり歩調をとって欲しいところだ。

『蔭の棲みか』玄月

  • 第122回(平成11年度下半期) 芥川賞受賞 ソバン翁の右手首は、戦争で吹き飛ばされた。朝鮮人の元軍人が補償を求めて提訴したことを知り、過去が蘇る。芥川賞受賞作他二篇
  • 「影の棲みか」朝鮮・韓国からの安い日雇い労働者団地に住む一人の老人ソバン。数百人を超えるその団地での様々な事件、問題を抱えた歴史を知るソバンがいた。朝鮮から来てこの団地で財産を稼いだ主と一部住民が賃金のことで対立、騒動を起こす。中国人が騒動を起こしたと密告で警察が立ち入るが警察と主が賄賂で繋がっており刑事事件にはならない。ところが団地そのものの解体が始まる。
  • 「おっぱい」子供は絶対いらないと言う朝鮮人女性と日本人の青年が結婚、ある日、韓国籍の恩師とその盲目の娘を家に招く。盲目の娘は結婚した女性と仲良しで、恩師に対しては金銭的な支援しており相当な尊敬の念を持ってのもてなしをしていた。2年後、今度は盲目の娘の赤ちゃんも一緒に連れて訪問する。夫婦は娘の巨大な母乳を見て圧倒、母親の強さを感じた。2年前の娘と母の差を感じた。その後夫は子供はいらないという妻に心変わりするのかと期待したが「あんたの考えていることなんて、みんなわかっているのよ。私をなんだと思っているのよ。甘く見ないでよ。あんたが思っているようには、絶対にならないからね。」とピシャリ。

人生の裏から這い上がる『影裏』

2019-10-24 07:47:34 | 人生を「生かす」には

人生には「裏と表」がある。ここでは「影」から「裏」へと人生を歩み始めた一人の男が迷い、特定な友しか話ができない環境を自らが作り、孤独となり最後には大震災の被災者となり消えていった。家族に見放され、仲間にも敬遠され生き続けた結果、選ばざる道に入り込りこみ、自然の神が奪いさった男である。 あまりにも酷い「運命」と言うより、自力で這い上がる勇気を見失った所為だろう。「生きていれば必ず逢える運」と言うものを信じことだ。周りの家族・友・仲間をもっと大切にすることでそれが見えてくるはずだ。(袖振りも合うも多少の縁)

『影裏』沼田真佑

  • 第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。
  • ある日の被災で友人を失くしたことがほぼ明らかになる。ところがその友人の父親は、勘当しており息子ではないし、遺族探しはしないと言う。過去の出来事から母親は早くに亡くなり長男と次男と父親の3人暮らしだった。次男のその友人は大学を合格したが4年間とその後どのような暮らしをしていたのか皆目見当も付かずだったという。ただ普通の生活ではない事は薄々感じていたと言う。それに借金を抱え犯罪に手をつけていたことも感じられた。

人はいつでも迷い、疑い続ける『秋月記』

2019-10-22 07:51:57 | 歴史から学ぶ

「上司の悪評」を巧妙に利用し、役職を奪い取り、首を代える、とはこの時代小説だ。それは現代で言う、部下の仕業で上司を入れ替えると言うことだが、結局一旦権力者がその地位・権力を持つことになると部下は単純に利用されるだけだと言うことになる。 小説では元上司を代えることで何もかもがよくなると勘違いしての行動で、結局同じ過ちを繰り返しを食らう結果になった。ここにある「目の前の敵がいなくなれば、味方の中に敵ができる」と言うことである。人はいつでも迷い、疑い続ける者だと言うことだ。(鼎の軽重を問う)

『秋月記』葉室麟

「Bookdata出典」筑前の小藩・秋月藩で、専横を極める家老・宮崎織部への不満が高まっていた。間小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除に成功する。藩政の刷新に情熱を傾けようとする小四郎だったが、家老失脚の背後には福岡藩の策謀があり、いつしか仲間との絆も揺らぎ始めて、小四郎はひとり、捨て石となる決意を固めるが──。

  • 若い家臣7名が現家老と重臣を本藩へ命を賭けて悪行を訴える。そしてそれが認められるが、現家老に代わって赴任した家老がまたしても本藩の意図を組み秋月藩を利用して出世しようと企む。若い7人は結局前家老の思いを勘違いしていたことで再び新たな本藩の家老を追い出す工作を考えるが財政的な自由がもぎ取られてしまう。 一人悩みながら前家老の言葉を鑑みながら突き進むが、最後には周りから敬遠され罷免、隠居、島流しになる。歴史の繰り返しとなる。
  • 目の前の敵がいなくなれば、味方の中に敵ができる、そのことを覚悟されい
  • 「旧来の門閥の重臣の派閥と若手の改革派に分かれる」
  • 政事はどのように行っても、全てのもに良いと言う事はないようです。それゆえ後の世の人に喜ばれるものを、何か作っておきたくなる。人に憎まれることばかりやって追ってはたまりませんからな
  • 「山は山であることに迷わぬ。雲は雲であることを疑わぬ。人だけが、己であることを迷い、疑う。それゆえ風景を見ると心が落ち着くのだ」
  • 静謐こそ、我らが多年、力を尽くして作り上げたもの。さればそれが己にとっては誇りでござる。」



刑事の「勘」とマスメディア取材暴力『廃墟に乞う』

2019-10-21 07:51:47 | 世界の動きから見えるもの

刑事の「勘」とは人並み以上の鋭い臭覚の才能と経験だ。古い事件でも警察が見逃した物・事から証拠なり、アリバイ、もしくは根拠につながる糸口を探し出し、しつこく、何かを見つけに行く動物的本能だ。人間には誰しもが何らかの才能を持っていると思っている。だがそれを知らず、使わずにいる人も多くあるという事は実に「勿体無い」。 もう1点、気になった点は「マスメディアの取材暴力」である。容疑者、親戚、友人、会社関係者など、また周辺の近所迷惑構わず執拗以上のインタビューと撮影する行為。見ていても本当に気の毒な場合もある。マスメディアは常識マナーをもっとわきまえての行為、行動を取って欲しいところだ。それと最近のマスメディア・取材の人々の知識・情報不足の無さで、報道される内容が薄く、肝心がボケ、他局と同じ事を繰り返すなど視聴者側に退屈させる事が多い事だ。(ネットの情報をコピーして放映するのは如何なものか)

『廃墟に乞う』佐々木譲

Bookdata出典」仙道孝司は北海道警・捜査一課の敏腕刑事だったが、任務がもとで罹ったPTSDのため、休職を命じられている。ようやく回復してきた頃、かつて札幌で起きた殺人事件と同じ手口で、千葉でデリヘル嬢が殺された。これは13年前のあいつの犯行かその矢先に犯人から接触された仙道は、旧炭鉱町へ向かう(表題作)。リゾート村、札幌の倉庫、競走馬生産牧場を舞台に、警察手帳も銃も持たない休職刑事が事件に新たな光と闇を見出す、連作警察小説。直木賞受賞作。

  • 「廃墟に乞う」 での容疑者は生まれながらにして貧しい環境で苦痛に耐え忍んだ恨みが犯罪に繋がっている。
  • 「オージー好みの村」「兄の想い」「消えた娘」「博労沢の殺人」「復帰する朝」など休職中の刑事に様々な依頼がくる。 警察・刑事の捜査等から外から見て一歩踏み込んだ真犯人を突き止めることから、被疑者への擁護、容疑者への説得、真犯人の捜査など刑事の「勘」で解決していく。刑事の「勘」は人並み以上の才能として持って生まれた特性なのかもしれない。 休職を言い渡され保養地での休養を医者から言い渡された理由は、聞き込みで、ある男とドアで聞き込みをした時に不審に思い、再度聞き込みをしなかった後悔である。あのあと男は部屋の中で一人の女性を殺害したのだ。あの時、不審に思った時にはまだ生きていた女性が・・・自分の過失を悔やんで暴れたことが原因だった。

参謀としての役割、経験-教訓の価値を説く『鬼神の如く』

2019-10-19 07:52:43 | 歴史から学ぶ

「敵を欺くにはまず味方から」、事の重要性を再認識させる、あるいは味方に失敗させないための策として味方を騙し誘導させる策略は現代ではあまり聞くことがない。この時代の策略家・参謀は裏の裏、騙しを騙しで返すくらい命を賭けた力量と勇気(鬼神)があったと、この小説を読んで思った。 権力者(2代目以降の経営者など)は何か先代とは違った戦略戦術で功績を残したいが為に昔の苦い経験-教訓を忘れ再び暴権(権限利用)することがある。それを正当な道に戻せる悪役を勝手でる参謀は現代でも必須だろう。(関西電力の賄賂事件・誰も善悪の分別もつかない状態になった会社組織・残念だが真の参謀が不在だ)

『鬼神の如く』葉室麟

『BookDataより出典』「わが主君に謀反の疑いあり」。筑前黒田藩家老・栗山大膳は、自藩が幕府の大名家取り潰しの標的となったことを悟りながら、あえて主君の黒田忠之を幕府に訴え出た。九州の覇権を求める細川家、海外出兵を目指す将軍家光、そして忠之―。様々な思惑のもと、藩主に疎まれながらも鬼となり幕府と戦う大膳を狙い刺客が押し寄せる。本当の忠義とは何かを描く著者会心の歴史小説。

『メモ』

  • 大膳と藩主との揉め事を利用し、有力藩を廃藩、藩主を蟄居させる江戸時代において、大膳はそれを利用とする幕府の幕閣と手先を利用しながら将軍の意思を確認する目的だった。 その意思とは九州の有力藩主に増え続けるキリシタンをルソン島まで遠征して弾圧させること。 大膳の意思とは豊臣の朝鮮出兵で豊臣は崩れ落ちたことは、まさに海外での遠征は意味のない藩武士勢力を利用することは間違いであったと幕府に認識させることだった。
    • 「兵は詭道なりと言う。つまるところ戦いとは詭道、すなわち騙し会いだ」
    • 毛利元就は「反間」(間者を味方に入れ敵を諜報する役割—二重スパイ)の策を利用し中国地方を手に入れた。厳島の戦いは長門周防の2万を4千で打ち破った。
    • 生きてある限り、この世の道全て荊で覆われている。傷つくことを恐れず、信じる道を行く者だけが神の国にいるのだ
    • 乱を起こすには率いる者がおらねばならなぬ。天草四郎はそれだけの器量があるとみた。乱を起こすに、若いも年寄りもあるまい。ただ、己の行く道を信じて迷わぬものだけが力強き者に抗して立つのだ。

「勉強」とは「教える」こと『風の谷のあの人と結婚する方法』

2019-10-15 07:21:00 | 人生を「生かす」には

「勉強」とは「教える」ことに繋がる。「理解している状態」から「知っている状態」にするには行動に移す事、それが「教える」という。現代の評論家の多くは「理解している」人々で、実際に自ら行動を起こし実践した経験がない人が多い。知識を役に立つようにするには行動する事だというのがこの書。最近の調査資料等も安易に集めた「収集資料」だけであまり信憑性がなく、どこまでが本当の数値なのか疑わしい時代となっている。「自分だけが」「我々だけが」「この国だけが」という考え方では世間は、世界はうまく動くはずがない。ではどうすればいいのか。『I』より『WE』、『WE』より『ALL』で物事を考えたいものだが、ネットの社会では個々の意見の尊重(発言力の強大化)など非常に難しい。だが、今後『AI』によるコンピュータ判断が多数決を決断する段階になると筆者は見ている。

「BookData出典」格闘家から作家へ。変幻自在のトリックスター・須藤元気が、“幸せに生きるヒント”を大公開。「自分をポジティブに変える近道は、プラス思考の人たちの中に身を置くこと」「無理をして失敗するよりは、少し楽にして続けたほうがいい」―自分を見失いそうになったとき、読めば心が軽くなる。哲学に笑いを交えた未だかつてない名エッセイ。

『メモ』

  • 学びの基本は「守・破・離」 (守り・破壊・離れる)、行きずまったら「離れて呼吸を置く」(違うことをして楽しむ)
  • 「勉強」とは、物事を変革するための道具。 勉強したことを生かして「行動」を起すことが必要。「理解している」状態から行動して「知っている」状態に移行することが大切。よって「教える事は最大の学び」となることを知る事。
  • 「ラテラル・マーケティング」とは水平思考の考え方で新商品を作るときに考える事。今までの市場・客層のニーズとはあえて違った・ギャップを拾い上げる事。「新しい発想は、大抵常識の枠の外にある」
  • 自分を上達させるためには自分より上の人と一緒にいる事。「自分をポジティブに変える近道は、プラス思考の人たちの中に身を置く事」。いい人間関係とは、奪い合いではなく、与え合いです。
  • 「成功は人のおかげ、失敗は自分の所為」と考えると人間関係がうまく生き、心の軽やかでいられる。 「誠実さ」で人間としての魅力を増す
  • 「時間の伸び縮み」嫌な時間から好きな時間へと切り替える「自分が好きなことをやりながら生きているかどうか」確認し記録してみる事
  • 成功を手にするには「I」より「WE」で物事を考えること。明治維新、自信が無く身分の低かった政府要職者に大久保利通がさせた事は、立派な礼服を着させ、馬車に乗せ、街を一周させた。(民衆の目と本人たちのその気にさせる技)
  • 勝負の勝敗は「極めの集中力」(力みを無くし集中する)。力みがないことでのリラックス効果も得られる
  • 「〜たら、〜れば、〜けれども」を使いすぎないこと。
  • 「プラシーボ効果」とは医者から「よく効く薬」だと言い聞かせ、気をコントロールすること(病は気から)
  • 「セルフハンディーキャップの設定」とは負けた時などの言い訳を用意
  • 「シンクロニシティ」とは偶然の一致=奇遇・奇跡

権力に向き合い真相を伝える勇気『一枚摺屋』

2019-10-14 08:04:15 | 歴史から学ぶ

時代の変わり目に一番必要なのが真相の情報だ。この江戸幕府崩壊の前は目まぐるしく世間が変動しほとんど真相を知る者はいなかった。というよりも「お上」が情報漏洩を恐れ取り締まったのである。現代でも同じように政府・官僚の「不都合で悪い情報」「批判的で思わしくない情報」などは一切マスメディアは口外しない仕組みとなっている。それはマスメディア内部の体制がひ弱(首元を牛耳られている)であるからだと昔から言われている。現実政府等への批判するあるメディアは政府の記者会見、記者クラブ等への出入りを禁止されている。よって今ある政府情報も一方通行で国民は消化不良状態であることを認識しておくべきかも知れない。どうも最近の新聞媒体等は特に「政府」含め「広告主」等に対しても背を向けた発信ができない、やらないのは経済環境の所為だろうか。 「真相情報」の提供には「勇気」と「行動」が改めて必要だとこの書でも認識させた。

『一枚摺屋』城野 隆

BookData出典」第12回(2005年) 松本清張賞受賞 一枚摺のために親父が大坂町奉行所で殺された。背後に浮かんできたのは三十年前の大塩の乱。幕末大坂の街を疾走する異色時代小説 第二次長州征伐の準備で騒然とする幕末の大坂で、打ち毀しを一枚摺(瓦版)に取り上げた親父の与兵衛が町奉行所で殺された。たかが一枚のために、一体何故?勘当中の息子、文太郎は親父の敵をとるため、潜りの一枚摺屋となって事の真相を探り始める。その発端は、三十年ほど前の大塩平八郎の乱に係わりがあるようだった。

  • 時は幕末前の長州征伐から大政奉還。 大塩平八郎の乱で何か係りを持っていた父が長州征伐の記事をありのままを書いたことで投獄、獄死する。たかがその記事で獄死はと不審に思い倅文太郎がその背景を探り出す。行き詰めた先が奉行所のお偉方。
  • 一方、親父の残したかわら版屋から潜りで一枚の現代で言う「号外」を出そうと動き出し、長州と幕府の戦いを克明に載せた1枚の号外を大阪界隈に売りまくる。ところが幕府・奉行所の目にとまり際どい商売となる。 やがて「新聞」という事業を志す。またヤクザ商売で「ショバ代」請求されると文太郎は親分に対して「わてはここへ来る途中、命を長堀の川底に捨ててきましたわ。親分と刺し違える覚悟で来ましたんや」。また新聞を作ろうと言う話に来た喜兵衛は「新聞は時の権力と向き合わねば本物ではないと西洋で学びました。そんな新聞を作りたい。」
    • 「大塩平八郎の乱」数万の反乱者との噂から密告者により反乱は数百人となり1日で鎮圧された。「君子もし善を知って行わずんば、すなわち小人に変ずる」

妻からの「素晴らしい」遺言『あなたへ』

2019-10-12 09:07:05 | 人生を「生かす」には

@妻からの遺言、それは夫に「最大のプレゼント」を用意することだった。出不精な夫を妻の故郷に旅をさせ、不思議な体験をさせ、最後には自分なりの自由で心ゆく「一歩」を踏み出せる勇気を与えることだった。 1通目の遺言で夫を旅をさせる仕組み、2通目の遺言で夫婦の絆と愛に感動し、涙する小説だ。「最大のプレゼント」の発想と夫の性格等を正確に読み取り、妻なき夫のその後の人生まで考えた仕組みはとても愛らしく素晴らしい。 旅での「奇遇」とは本当は世に仕組まれた出会いかも知れない。「遺言」それは寂しさと別れの言葉ではなく、その後家族・仲間を思い「生きている者への勇気のステップ」などの言葉に変化させたいものだ。

『あなたへ』森沢明夫

『BookDataより出典』富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。

  • 15年付き合った妻が癌で亡くなる。妻の遺言は「遺骨を生まれ故郷の海に散骨してほしい」と、もう一つの遺言は「生まれ故郷での書留郵便を受け取ってほしい」というものだった。
  • 妻の座右の銘「他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる」。さらに「人生には賞味期限がない」
  • 妻の思いはあまり出歩かない夫の性格を読み「最大のプレゼント」を遺言に遺す事だった。それは夫に生まれ故郷まで旅をしてもらい「今この瞬間」を大切に思ってもらう事。また、不思議な偶然の出会いに出会える事を望んでいた。 実際この旅で3つの偶然に遭遇、1つは刑務所で木工を教えていた元受刑者と会った事、2つ目は妻の同級生とあい親切にしてもらった事、3つ目は人生の賞味期限内に自由に心ゆくまで生きていく「一歩」だった。
  • 2通目の遺言には「あなた」
    • 「あなたと一緒に旅をしてみたかったです。新婚旅行のつもりで。」
    • 「正直にいうと人生は思っていたより、ずっと短かったです。」
    • 「自分の「生」を愛おしく思えるということは、私がとても幸せな人生を送れたという証しでもあります」
    • 「あの海に散骨をしてもらえたら、いよいよあなたとお別れです。どうか、あなたは、あなたのこれからの人生を、自由に心ゆくまで生きてください。今回の旅は、私が強引に誘い出しましたが、これからのあなたには、あなただけの「一歩」があると思うのです。その一歩を踏み出して、どんどん素敵な人生を歩んでいってください。」

貪欲になる理由「他人との比較」『成就』

2019-10-11 08:49:35 | 歴史から学ぶ

「人の貪欲さ」、金を生み、金をどうにでもできる権力が与えられると人は変わる、とはこの小説の悪党たちである。 公の大金を自分の采配で私腹を肥やすようにできると人は、それが「悪」とは感じなくなる。まさに関西電力の事件は、20年間も金を貢いだ助役といい、貢がれた関西電力の幹部といい、「賄賂」に麻痺しているかのような精神(振りかも)をしているのが不思議でならない。 「人の欲は域」を感じなくなる、とは「貪欲」になり始めると周りが見えなくなり「善悪」判断ができなくなる、まさに今回の事件は「周りも一緒なら悪にはなら無い」と思ったのだろう。では貪欲にならない方法はあるのか。 やはり「他人との比較」が一番、比較しない事だろう。欲はあってもいいが「貪欲」とは一線を超える事であり、今の自分の在り方を良しと考える事だろう。

『成就』鳥羽亮

『BookDataより出典』仇の一人を討ち取った伊丹茂兵衛と松之助は残る男の行方を追う。だが折も折、茂兵衛に与する亀沢藩下目付の同僚が何者かに斬殺された。事件の裏には国元で暗躍する黒幕の影が。激しさを増す藩内抗争はやがて茂兵衛と松之助の運命をも吞み込みながら、思わぬ展開を見せる。孫を連れ仇討旅を続ける老剣客の哀歓を描く人気シリーズ、感動の完結篇!

  • 国元の普請奉行の長が金に目がくらみ様々な普請から金を生み出し、不正をしていた。それを知った伊丹茂兵衛の倅夫婦がその長の家臣たちに無残にも惨殺された。 伊丹茂兵衛と松之助はその仇を討つべく江戸に逃げた男に敵討ちをするが、実は普請奉行の長の不正を消すために江戸に刺客を送ったのである。 伊丹茂兵衛は敵討ちとその刺客を江戸藩邸の家老とで吟味して仲間の家臣と殺戮の戦いを繰り広げる。

現代っ子は今や「親を頼る世代」となる『螢川・泥の河』

2019-10-09 07:52:44 | 人生を「生かす」には

@戦後の生活から読み取る子供の心理。父親は強運の持ち主だったが体を悪くして亡くなる。母親一人で育った少年はどことなく父親を憎み、哀れみ、悲しんでいる姿が読める。羽振りの良い時とその後は天と地獄の世界のごとく少年の心にも響いてくる。この時代の子供の心理は、おもちゃも無く遊びは自然と一握りの同じ貧相レベルの友人だけと言う多分現代っ子には全く理解できない「親を思う心」「世間を渡る術」vs「親次第で将来が決まる」「親の言いなり」など当時の一時期生活の小説である。逆に言うと現代っ子は自然の摂理に理解も乏しく、自分で己を知らないから自分で進路も判断できない「親次第・何事も親に頼る世代」になってしまった。それは日本の起業・留学などにも大きく影響していると感じる。自立心が無くなり、海外への興味・勉強・好奇心が無くなる事は日本の経済の成長にも大きく繋がるのではと懸念する。

『螢川・泥の河』宮本輝

『BookDataより出典』戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。

  • 「泥の河」

少年同士の付き合い方を考える物語で、戦後の生活環境が苦しい時の少年達の遊びと付き合いは限られていた。大人、親の言うことには忠実に逆らう事は決してない、また世間から見て曲がりもの等に関してはみんなが同じような見方をする時代である。なんとなく仄かであり、厳しい生活環境での子供でも世間体を気にした、現代では考えられない子供の世界を描いている。

  • 「螢川」

一生に一度か螢が一斉に出る夜を待ち、少年と好きな少女、それに螢をよし知ったおじいさんとそれぞれの母親がせせらぎの山の奥へ見に行く。 そしてその螢の大群を見つける。「螢の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、計り知れない沈黙と刺繍を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら爪いた火の粉状になって舞い上がっていた」、その時皆がそれぞれの道を悟るのである。

 


「秘め事」を絶対明かせない心理『雁の寺・越前竹人形』

2019-10-08 06:05:00 | 人生を「生かす」には

@この小説は、誰にも言えない隠し事、それはたとえ親族でも隠し通したい事を常に抱えながら辛身に耐え、我慢し、自分を生んだ母親に憎しみを持った人生の物語である。自分だけの秘め事が誰かに漏れる事は絶対にあってはいけないと思う心境が日頃の姿勢に出てくる。それは時とともに隠しきれない状況にもなる。だが一旦それが公になる事で自信をなくす自滅を意識しだすかもしれない。人には一つや二つは他人に知られたくない秘め事がある。それは生涯、自分だけにとどめておくことが良しとしなければならない。

『雁の寺・越前竹人形』水島勉

  • 「軍艦頭」と罵倒され、乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧の孤独と凄惨な情念のたぎりを描いて、直木賞に輝く「雁の寺」、竹の精のように美しい妻玉枝と、彼女の上に亡き母の面影を見出し、母親として愛情を求める竹細工師喜助との、あまりにもはかない愛の姿を越前の竹林を背景に描く、哀しみを全身に秘めた独特の女性像をうちたてた「越前竹人形」。
  • 「雁の寺」
    • 預けられた異様(軍艦頭)な小僧(寺僧)が育ての住職を殺害する。それは住職への恨みと、自分の母は乞食であり、母への恨み、絶対誰にも明かすことができない秘密を隠し持っていた。 それは寺の部屋にある雁の襖の絵(母の絵)に隠されていた。 小僧は最後にその襖の絵の母の部分だけを破り寺をさった。
  • 「越前に竹人形」
    • 幼い頃母を亡くし父親だけで育てられた職人男が時を経て父を亡くすと今までの職人の腕を磨き生活を余儀なくされる。その時父が作ったとされた竹細工の人形が父の恋した女性に贈ったものだったと判る。それがなんとも巧妙にできた人形で市中に高い評価を受けて商売として作成、商売繁盛となる。実はその人形は亡き母の姿に似ており、父の恋した女性に瓜二つであり、職人男も惚れた。 その後女性は職人男と結婚するが最後まで妻ではなく、母としての存在を頑なに守った。実は結婚した直後に昔馴染みの男性と会い妊娠、悩みに悩み狼狽するが体の異変で堕胎する。他の男との妊娠、それは決して夫には言えない生涯の秘め事になった。