@「火の鳥」取り柄もない若い女性が男のために尽くそうと思い、寄り添うと不幸が訪れる。やがてそれは自分の甘えと知り、生きていくために女優になることを決意して一生懸命努力、自分の愛欲にも我慢を強いる。人への思いとは上手くいかないものだ、ましてや恋愛のような双方に思いがなければ上手くいかない。世の中も自分の思った通りには行かない、教えてくれるのは周りの人々の助言と自分の行動で社会を体験し気付くことなのだ。
『新樹の言葉』太宰治
「概要」昭和14年、井伏鱒二夫妻の媒酌で結婚。再生を度る太宰、30歳から31歳の作品群。
ー懶惰の歌留多 (いろはで綴る短編小説、と言うよりコメント集)
い:生きくることにも心せき、感ずることも急がるる
は:母よ、子のために怒れ
に:憎まれて憎まれて強くなる
ー葉桜と魔笛
姉妹愛、妹が死ぬ前に影で愛していた男性がいたと見せかけの手紙を自分宛に書いていた。「あんまり寂しいから、一昨年の秋から、一人であんな手紙書いてあたし宛に投函していたの」しばらく手紙が来ないので心配した姉がその男性のふりをして妹に書いた・・・それが死ぬ前にバレる。
ー新樹の言葉
男爵といあだ名の北国の地主の倅が人柱で人の役に立ちたいと動く。ある日昔女中としていた女性と会うとその女性、既に女優として名声を持つ、が「結婚を考えているが弟が納得していない。なんとか説得してほしいと願う」それは弟が男爵という男を結婚相手としての見聞する目的だった。
ー火の鳥
一人の若い女性が男と一夜の出会いで心中するが自殺未遂で発見される。女性は男の事(銀行強盗)は何も知らずなんとか尽くそうと思った矢先の出来事だった。自分だけが生き残り、他に作家、記者にも慕われたが恋までには至らず自分の我儘と過去を捨てるため女優になる。
ー兄たち
家族、兄との死別。巻末にある「父に早く死なれた兄弟は、なんぼうお金があっても、可哀想なものだと思います」は弟が死ぬ間際までそばで看病し、儚く若くして亡くなった兄が何となく切なく、女性との関係もないまま、無言で死んでいった。言葉が少なくとも悲しみが十分伝わる言葉だ。
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