獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅱ章 その3

2023-02-19 01:48:37 | 東村山女性市議転落死事件

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
■Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


◆背後に組織の影
第三には、朝木さんの書類送検が報じられた直後に、「朝木市議万引きで書類送検」「議会の私物化の次は商品の私物化」という次のような内容のビラが、「草の根」の事務所をはじめ、市内各所に大量に張られた事実である。

「●今年4月の市議選でトップ当選した朝木氏。同選挙では娘も当選したが、同じ政治グループの次点候補に議席を譲渡。勝手な議席の操作が『議席の私物化』であるとして社会問題になったばかり●そんな朝木氏、懲りずに今度は『商品の私物化』●朝木氏の愚弄な行為に『議員失格!』との声が続出」

素早くビラを作成し、市内に配布するだけのノウハウと組織力をもった者でなければできる芸当ではない。


◆“替え玉”
第四には、事件報道があった直後から「草の根」の事務所に、創価学会貝を名乗る人物からの「組総ぐるみの謀略」であるとの電話や、「万引事件には『替え玉』を使っている。それを調べること」と記された市民の投書が寄せられていることである。

「東村山市民新聞を読ませていただきました。
週刊誌などでも朝木議員さんが事件にまきこまれでいることを知って驚いています。
事件と関係があるかどうかわかりませんが思いだしたことがありますので、一応、お知らせしておこうと思います。
私は、6月19日の午後3時15分に友達とイトーヨーカドーの入口で待ち合わせていましたが、朝木議員さんによく感じの似た人が私の前を通り、花屋さんの前で若い女性が運転する車に乗って駅方面に走って行きました。
よく見ると朝木議員さんではないことがわかりますが、私が一瞬、朝木議員さんと思ったくらい感じが似ていましたので、万引きされたといっているお店の人も人違いしたのではないでしょうか。事件のあったという時間に近い時間のことでしたので、もしかしたら関係があるかもしれないと思いました。
朝木議員さんが万引きするはずは絶対ないと思っています。事件の解決にお役にたてばと思って、書きました。どうぞ頑張って下さい。
  7月29日       本町住民より」

9月4日午前、朝木さんの告別式が東村山中央公民館と府中街道をはさんで向かい合わせの葬祭式場で行われたが、このとき、中央公民館前には、異様な態度の中年女性が多数見かけられた。
彼女らは、葬儀に参列するわけでも、焼香するわけでもなく、ひたすら対面する中央公民館の前から葬儀の模様を監視、あわせて取材に来たマスコミ陣に対し、朝木さんの悪口を言いふらすという異常な行動に終始したのである。その中年婦人たちのなかに、一人、朝木さんによく似た人物がいたことが、遺族、「草の根」関係者によって目撃されている。
「あまりに態度がおかしかったので、VTRで投影しておいたのですが、そのなかに、母にとてもよく似た人物が映っています」(朝木さんの長男・巌さん)


◆流言飛語
また、第五として、万引き事件が発覚後「朝木は以前から万引き癖がある」との流言飛語が、創価学会関係者や「議席の私物化を許さない会」の関係者から、さかんに流されていることが指摘できる。そうした流言飛語の一つに、以前、朝木さんがイトーヨーカ堂で万引きをしたことがあるとの話があった。さっそく、複数のマスコミ関係者がイトーヨーカ堂店長に確認したが、店長は、そうした事実はないと断言している。
その後、朝木さんの自宅がある東村山市諏訪町の商店街でも朝木さんは万引きをしていたとか、朝木さんばかりではなく、長女の直子さんや長男巌さんにも万引き癖があるなど、朝木一家は万引き一家だったとのとんでもない噂も流されている。
こうした事件をめぐる“奇っ怪”な動き以外に、事件そのものにも、いくつかの疑問が指摘できる。
例えば、この事件には物証がない。犯人はTシャツを盗む際に、ビニール袋をたくしあげたとT・Sさんは話している。ビニールには指紋がつきやすい。だが、盗られたというTシャツは証拠品として押収されているものの、ビニール袋は押収されていない。朝木さんが容疑を否認したとしても、指紋が検出されていれば言い逃れはできない。その意味では、まっさきにビニール袋を証拠品として押収すべきだが、押収されていないのである。千葉副署長は、「通常、万引きで送検までするケースはまれ。それを20日以上かけて捜査し、送検したことの事実の重みを考えてほしい」(「週刊朝日」95・7・28)と述べるが、指紋が検出されたとは発表していない。あるいは、起訴、公判に備えての「隠し玉」だったのかもしれないが、朝木さんは否認しているのだから、指紋が検出されていれば、それを示して供述を迫るなり、身柄を拘束するなりできたはずである。その意味では指紋は検出されていないと考えられる。

◆不自然な供述
また、朝木さんを犯人だとするT・Sさんの供述にも、不自然な点が指摘できる。
95年7月28日号に続いて万引き事件を報道した『週刊朝日』8月4日号記事もそうした雰囲気を伝えている。
「万引きされた店の主人は、本誌の取材に、
『朝木さんの顔はよく知っている。前に来店したときも商品がなくなっていたので、注意して見ていた』
と話した。だが、事件直後に、別の人には、
『自分は朝木さんだとわからなかったが、店にいた客が朝木さんだと教えてくれた』
と話していた、という。
朝木さんの顔を知っている理由についても、
『毎日、朝木さんの事務所の前を通るから』
と説明したが、朝木さんは事務所の前にポスターを張ったことはない、という」
T・Sさんは、私の取材に対し、朝木さんを前から知っている理由として、「子どもの通っている化成小学校の入学式で見ている」ことを挙げ、
「前に自転車で来たときも、荷物を自転車のカゴに入れるなど挙動不審な動きがあり、あとで調べたら商品がなくなっていた。そこで、今回は注意して見ていた」
と語っている。
『週刊朝日」記者の取材に対する話と、私の取材に対する答えは微妙に違っている。まして、「自分は朝木さんだとわからなかった」となれば、マスコミに対する説明やその後一貫して朝木さんが、“常習”であるかのように話す内容と大きく矛盾をきたすこととなる。
T・Sさんならびに夫で店主のT・Hさんは、自分たち夫婦は「創価学会員ではない。創価学会とはまったく関係ない」と強調する。以前、聖教新聞を購読していたことについても、客に頼まれてつきあいとして限定的にとっただけだと説明する。
私に対してT・Hさんは、
「事件後、亡くなった母の葬儀の席上、叔父に、『H、お前はいつ創価学会になったんだ』と叱責され、本当に悔しい思いをした。私も被害者なんです」
と創価学会との距離を強調する。
しかし、その一方で、創価学会が朝木さんを憎悪するのと同様、朝木さんに対しては、敵意をむき出しにする。私が、「あるいは替え玉ということもあるのでは」と水を向けでも、
「いや、犯人が朝木であることは間違いない。替え玉なんてとんでもない。絶対に見間違いではない」
と一歩も譲らない。
なぜ、これほど朝木さんを敵視するのか、私にはよく分からない。だが、Tさんの店のパート店員の一人が学会員であること、また、万引き疑惑の情報が、その店員から95年4月の統一地方選挙で初当選した公明の新人女性議員を通じて、朝木さんと同期の公明女性議員に入り、その経由で「議席の私物化を許さない会」に入っていることが確認されている。

◆“急いで”送検
東村山署が本格的な事情聴取を行わないままに送検したことも疑問である。千葉副署長は、マスコミの取材に対し、
「通常、送検する場合は、3回以上事情聴取を行うことになっているので、今回も、3回の事情聴取を行った。なんら問題はない」
と語っている。だが、朝木さんに対する事情聴取は、形だけは3回になるものの、調書をとったのはたった1回でしかない。したがって実質的な事情聴取は1回しか行われていないのである。
その事情聴取について朝木さんは、生前、私にこう語っている。
「6月30日に、警察からちょっと来てほしいという連絡があったので気軽に出かけました。というのも、万引き事件が発生する前日の18日に、5月2日の器物損壊事件(「市議の当選返上を考える会」でT氏が起こしたテープレコーダー損壊事件)の告訴での事情聴取が終わったばかりだったので、なにかまだ追加があるのかと思ったからです。警察で担当の白石刑事課長代理に、『まだ、なにかあるの』と声をかけたところ、白石さんは、『朝木さん、今日は逆なんだよ。あなたが万引きしたという被害届が出ているんだよ』というんです。『エーッ』という感じでしたね。そのときは30分ほど事件の説明があったので、それを聞いただけで帰ってきたのですが、かなり頭にきましたね。そこで7月3日にこちらから警察に抗議に行き、「びっくりドンキー」のレシートを提出、アリバイを説明しました。2回目の事情聴取は、その翌日の7月4日に行われ、
経歴調書が作成されましたので、最後に『万引き事件はデッチ上げ。被疑者扱いされること自体、人権侵害であり、名誉棄損に当たるので、真相糾明のために捜査に協力する』と供述しています。
調書を取られたのはこれ1回です。その後、7月10日になって「どうしても来てほしい。時間はいつでもいい』というので7月12日午前に警察署を訪問、レシートに食い違いがあるので、それについては調べるということで帰ってきました。ですから、当然、これから本格的な事情聴取があるものと思っていました。ところが、午後になって突然、送検したというので、本当にびっくりしました」
千葉副署長は、マスコミに対し、前出のとおり、
「通常、万引きで送検するケースはまれ。それを20日以上かけて捜査し、送検したことの事実の重みを考えてほしい」
と語っているが、朝木さんの発言から類推すると、東村山署は、3回の事情聴取という形式だけ整えたうえで、“急いで”送検したようなのである。
もっとも、全国紙の地元記者は、千葉副署長から、事前に検察と打ち合わせを行い「早く送れ」との指示を受けて送検したとの話を聞いており、その事実を直子さん、矢野氏に明かしている。

◆「お礼はワイロ、受け取りません」
もともと朝木さんは、議員報酬のお手盛り値上げを8年間にわたって返上。万引き事件の直前にも、6月分ボーナスの割り増し分約20万円を返上している人物である。また、「お礼はワイロ、受け取りません」をキャッチ・フレーズとして、政治活動を続け、建築紛争で住民の味方をし、有利な結果を引き出しても、いっさい謝礼は受け取らない主義を通すなど、金銭に対しては“潔癖”といっていいほどの厳格な姿勢を貫いていた。
実際、私も、何度となく喫茶店で取材をさせてもらったが、たかだか千円未満のコーヒー代でも、謝礼の意味をこめて出そうとすると、いつも「ワリカン、ワリカン」と笑って言われ、おごったことは一度もなかった。そうした人物が1900円のTシャツを万引きするなどとは考えにくい。だが、中年の女性には更年期障害をはじめ、さまざまな身体的、心理的ストレスがある。そうしたストレスが引き金になって、あるいは万引きをしないとも限らないという。そこで、私は、朝木さんに、その点を率直に聞いたことかある。
「失礼だが、朝木さんくらいの年齢にをると、更年期でカーッとなって万引きするという例があると聞く。正直に答えてほしいが、自分でそうした徴候を感じることはなかったか」
朝木さんは、困ったなというような笑いを浮かべながら、
「他人に聞いていただいた方がいいと思うけど、自分としてはそういうことを感じたことはない」
と答えている。この点については、直子さんをはじめとする家族や、「草の根」事務所に出入りする複数の人に確認したが、いずれも、朝木さんがヒステリーになったり、躁鬱状態を示すような場面は、見たことがないと話している。もちろん、過去に盗癖や万引き癖はまったくなかった。

◆「真相究明の為、徹底的に闘います」
ところで、東村山署の千葉副署長は、この万引き事件を朝木さんの死を自殺と判断するうえでの動機と位置づけており、あたかも朝木さんが起訴を悲観し、追い詰められていたかのように主張する。実際、東村山署幹部はマスコミ関係者に対し、
「朝木は9月5日に地検に呼ばれ、そこで万引きを認めれば起訴猶予、否認すれば起訴することが決まっていた」
との情報をリークしている。
そしてこれまた実に奇妙な話なのだが、「議席の私物化を許さない会」のメンバーが、8月23日、週刊誌の記者に対し、「朝木が起訴されることが決まった。知っているか」と連絡してきた事実がある。
この週刊誌記者は、さっそく朝木さんに電話し、「起訴されると聞いたが、すでに検察の事情聴取を受けているのか」と質問。朝木さんから、
「まだ事情聴取もされていないのに、起訴されるわけない」
との話を聞いている。
矢野氏が語る。
「私に対する暴行事件のあった7月16日の翌17日に、万引き事件を依頼している高田治弁護士が、地検の事件担当である信田検事と面談しています。その際、信田検事は私の暴行事件を報じる新聞記事を提示し、『この事件は万引き事件と関連がありそうですね』と述べ、『村山の事件には、なにか大きな裏がありそうだ。一つにまとめた方がいい。どうも万引き事件は枝葉のようですね』と発言したと聞いています。それがいきなり起訴ですか。まだ一度も事情聴取されていないのに、起訴などありえるわけない。仮に起訴されたとしても、朝木さんは、とことん戦うつもりでいました。悲観して自殺するなんて考えられません」
事実、朝木さんは、8月14日、支持者に残暑見舞いの葉書を出しているが、そこには次のように記されている。
「残暑お見舞い申し上げます。
真相究明の為、徹底的に闘います。
   1995年8月14日」
朝木さんは、万引き事件について徹底して闘う決意を明らかにしていた。決して東村山署や反「草の根」グループが主張するように追い詰められていたわけではなかったのである。むしろ焦っていたのは、千葉副署長が「職を賭す」と発言していた東村山署であり、「草の根」攻撃を続ける創価学会・公明をはじめとする反「草の根」勢力だったとの見方も可能だ。


解説
「万引事件には『替え玉』を使っている。それを調べること」と記された市民の投書が寄せられている

もし、『替え玉』が事実なら由々しきことです。
事情を知る学会員はまだ複数おられるはずです。
関係者は、事実を墓場まで持って行かないで、良心に従って公表してください。
匿名のコメントでも構いません。

獅子風蓮



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