獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅱ章 その2

2023-02-18 01:36:02 | 東村山女性市議転落死事件

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
■Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき

 


万引き疑惑

◆1900円のTシャツ
東村山署の千葉副署長が、「自殺の動機」と指摘する「万引き事件」とは次のような事件だった。
1995年(平成7)6月19日午後3時頃、東村山駅東口駅前の線路沿いにある洋品店「スティル」で、店頭に陳列されていた1900円のTシャツが万引きされる。防犯ミラーでそのようすを見ていた「スティル」の女性店主T・Sさんは、すぐさま犯人を追いかけて詰問。品物を取りかえすが、犯人はそのまま逃走したというもの。T・Sさんは、その犯人が朝木さんだったとして駅前交番に通報、被害届を提出したのである。女性店主のT・Sさんが語る。
「朝木さんが店にやってきたのは、6月19日の午後3時頃。店の前に置いてあるワゴンセールのところに立ち止まり、少し店のようすを窺うようにした後、レジからは死角になるところにかけてあったTシャツのビニールをまくり、すばやくハンガーからはずしてたたみ、脇にはさんで立ち去ったのです。その一部始終は、万引きを防止するための防犯ミラーによって見えましたので、急いで追いかけ、店から10メートルほど先で万引きの事実を問いつめたんです。すると、
「知らないねよ。言いがかりをつけないで」とすごい剣幕。そこで『手をあげなさい』といって両手をあげさせたところ、Tシャツが脇から落ちました。朝木さんは私がTシャツを拾っている間に、足早に立ち去り、イトーヨーカ堂に入って行ってしまったんです。そこで、ちょうど店内にいた人に店番を頼んで、駅前交番に届けました」
東村山署は、事件から11日後の6月30日になって朝木さんに出頭を要請。以後、7月4日、そして7月12日と、3回にわたって当日の足どりや経歴などについて形式的な事情聴取を行った後、7月12日午後、突然、東京地検八王子支部に書類を送検したのだった。

◆名誉毀損で告訴
これに対し、朝木さんは、
「まったくのデッチあげ。事件の時間には、別の場所にいたというアリバイがある」
「事件は創価学会・公明集団の『草の根』を潰そうとする謀略だと思う」
と主張。8月2日には、洋品店主T・Sさんを、名誉毀損で東京地検八王子支部に告訴した。
朝木さんが、検察ならびに警察に提出した告訴状には、朝木さんの当日の足どりが次のように詳述されている。

「告訴人(朝木)の6月19日の行動は以下の通りである。
①6月19日は、自転車で分厚い『例規集』『自治六法』計3冊を載せて午前10時5分前に市役所に登庁し、草の根市民クラブの議員控え室で委員会の開会まで待機した。
所属する市議会建設水道委員会の会議は、10時15分から、11時07分ころまで行なわれ、これに出席した。
②建設水道委員会の会議終了後、市議会総務委員会が開催されていたので、12時過ぎまで、総務委員会を傍聴した。
③12時半ころ、総務委員会に所属する矢野穂積議員と一緒に草の根市民クラブの議員控え室に戻り、午後2時前まで、6月22日に行なう一般質問の準備を行なった。
④両名とも朝食が遅かったので、昼食を遅らせていたが、ようやく空腹を覚えので、矢野穂積議員と相談して、昼食は府中街道久米川辻先の『びっくりドンキー』というハンバーグ・レストランでとることに決めて、午後2時ころ市役所を矢野議員と一緒に自転車で出た。
久米川辻先のこの『びっくりドンキー』というレストランに決めたのは、自転車で行くにしても遠いが、値段が安く味もまずまずだったからである。
⑤両名は、自転車で市役所を出て、本町都営と消防署の間を抜け税務署の前の裏道を通り、途中、2時10分過ぎに『たくぎん』で一件振込で送金をした上で、市場前の裏道を通り、府中街道に出て『びっくりドンキー』には、2時半過ぎに着いた。
⑥『びっくりドンキー』では、ハンバーグなどを注文して、3時半ころまで滞在した。
帰りは、分厚い『例規集』『自治六法』計3冊を自転車の前部カゴに載せて久米川辻の交差点から右に曲がり、鎌倉街道をとおって裏道に出て東原商事そばから府中街道の傍を通り、パチンコビルの所で右に曲がって、事務所に戻った。
事務所に戻った時刻は、午後3時45分ころである。
その後は事務所で、矢野議員と一緒に改修していた事務所の壁のペンキ塗りなどをし、議会の一般質問の準備を行なった」

◆アリバイを証明するもの
要するに、この日、午前中に市議会の建設水道委員会に出席した朝木きんは、午後2時頃、矢野氏とともに食事を取るために市役所を出、途中、2時12分に東村山駅前の「たくぎん」で振り込みを行った後、「びっくりドンキー」に入店。牛後3時頃まで食事をしており、「スティル」方面にはまったく足を向けていないというのである。同行していた矢野氏も次のように証言する。
「朝木さんには完璧なアリバイがあります。犯行があったという午後3時頃には、二人で府中街道沿いの『びっくりドンキー』というレストランで食事をしていました。私と朝木さんは、警察からの呼び出しがあった後に、『びっくりドンキー』を訪れ、食事のときの概要を説明してレシートをもらい、そのレシートを警察に提出しました」
だが、このレシートは、朝木さんのアリバイを証明するものではなかった。朝木さんと矢野氏は勘違いによって、他人のレシートを提出してしまっていたのである。
「10日以上も前のことだったので、食事の内容に若干、記憶違いがあり、結果的に間違ったレシートをもらって提出していたのです。しかし、よくよく考えてみると食事内容が少し違う。そこで、正しいレシートを提出すべく、店側に再度レシートをリクエストしましたが、警察がレシートの控えをすべて押収してしまっていたため、レシートを出してもらうことはできませんでした。そこで、警察にレシートの控えをすべて見せてほしいと申し入れていますが、応じてくれません」(矢野氏)
これに対し東村山署は、朝木さん、矢野氏が主張するアリバイは成立しないと主張。創価学会の外郭企業である潮出版社発行の雑誌『潮』の取材に、朝木さん、矢野氏がレシートを提出したことは「アリバイ工作」の可能性さえあると、次のように話している。
「(朝木)市議はその時のものだというレシートを持参した。すでに裏付け捜査を終えている警察は、どこからかレシートを入手してアリバイ工作に使ったものと判断し、彼女の弁明を否定、『そのレシートはこセ物です。店から正しいレシートを貰ってきなさい』と、とどめを刺した。
むろん“本物”のレシートが提出されるはずはない。
これで勝負ありである。
警察は反省の色なしとして、7月12日、東京地検八王子支部に書類送検した」(『潮』95・11号)
両者の言い分は真っ向から対立しているのである。

◆匿名の怪文書ファックス
しかし、この万引き事件をめぐっては、事件発生後、さまざまな奇怪な動きが生じており、単なる万引き事件とはいえない複雑な要素が垣間見える。
まず、第一には、事件をマスコミが察知する前、書類送検前日の7月11日に「東村山在住 健全な社会を願う一市民より」という匿名の怪文書ファックスが、地元のマスコミ各社に出回ったことだ。そこにはこうある。
「東村山市議会議員の朝木明代氏が、市内の女性服販売店で万引きをしたとの事実を確認いたしました。
去る6月、東村山駅東口近くのブティク『スティル東村山店』で、店頭ワゴンに並べられていた商品(女性服)を、朝木氏が万引きをし逃げようとするところを、店員に捕まり、その場で商品を取り上げられたとのこと。事後に、店からは警察に被害届が出されています。
先の統一地方選挙では、朝木氏の娘が市議選に当選したにもかかわらず、議席を同会派『草の根』の次点の議員に譲渡し、市民から『議席の私物化』と非難をうけたばかり。今度は、朝木氏自身の『商品の私物化』を、我々市民が黙って見過ごす訳にはいきません。
ぜひとも、取材の上、事実の正否を市民に投げかけて下さい。
   東村山在住 健全な社会を願う一市民より
ブティク スティル東村山店 東村山市本町×-×-×
   0423-×-××××
朝木事務所『草の根』    東村山市本町×-×-×
   0423-×-××××
発信元は、小平市小川町一丁目にあるコンビニエンスストアーに設置されたクロネコファックス。その近所には、池田大作創価学会名誉会長が会食にしばしば利用する創価学会の外郭企業が経営する割烹料理店「青山・満月」の小平支店や創価学園がある。マスコミさえ事件を知らない段階で、事件を知ってい者はいったい誰であり、なんの目的でこのような怪文書を送付したのか。

◆「朝木が謝れば送検しなかった」
第二には、朝木さんが書類送検される当日、東村山署の署長室に公明の木村芳彦市議会副議長が詰めていた事実が、全国紙の地元記者によって目撃されており、本人もこれを認めていることである。
「万引きのうわさを聞いたので確かめただけ。学会が仕組んだなんて、とんでもない」(『週刊朝日』95・7・28)
市議会の副議長を務める公明の古参議員が書類送検する当日、なぜ、署長室に詰めていたのか。
本人は、「うわさを確かめただけ」だというが、噂を確かめるぐらいなら電話でもできる。どうしてわざわざ出かける必要があったのか、疑問である。
この点に関連して、送検の必要性の有無という疑問もある。たとえ10円の窃盗でも犯罪は犯罪だが、被害額が1900円のTシャツ、それも品物を盗られていない、被疑者が否認する事件を、急いで送検する必要が果たしてあったのかどうか。実際、私の取材に対して千葉副署長は、「この程度の事件で送検したのは初めて」と語っている。木村副議長が送検当日に署長室に詰めていた事実は、送検の背後になんらかの政治的圧力があったのではとの疑問を抱かせよう。
千葉副署長は、マスコミの取材に対し、
「一般論だが、普通、微罪の場合は、加害者にお詫びしなさいと忠告し、それで解決する。だが、今回は、朝木さんとT・Sさんの主張が真っ向から対立している。だから送検した」
とか、
「朝木が謝れば送検しなかった」
などと語っている。だが、その一方では、
「冤罪と主張する朝木も職を賭しているだろうが、自分もこの事件には、職を賭している」
と力説している。東村山署管内では、警察官が殺された殺人事件が未解決のまま残っているが、そうした重大事件の解決に「職を賭す」ならまだしも、軽微な万引き事件ごときに「職を賭す」とまで発言する真意は那辺にあるのか。朝木さんを罪に仕立てあげなければ、クビになるとでもいうのだろうか。

 

 


解説
事件をマスコミが察知する前、書類送検前日の7月11日に「東村山在住 健全な社会を願う一市民より」という匿名の怪文書ファックスが、地元のマスコミ各社に出回った
……発信元は、小平市小川町一丁目にあるコンビニエンスストアーに設置されたタロネコファックス。その近所には、池田大作創価学会名誉会長が会食にしばしば利用する創価学会の外郭企業が経営する割烹料理店「青山・満月」の小平支店や創価学園がある。マスコミさえ事件を知らない段階で、事件を知ってい者はいったい誰であり、なんの目的でこのような怪文書を送付したのか。

私が在学した創価学園のそばから、こんな怪文書ファックスが発信されていたとは。
関係者は、事実を墓場まで持って行かないで、良心に従って公表してください。
匿名のコメントでも構いません。

獅子風蓮



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