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朝昼晩、時間を問わず飲んで喰って面白おかしく過ごす人生を歩みたいです。※旧名「日が沈む前に飲む酒はウマい」

名峰がルーツの優良店 所沢『早池峰亭』

2021年05月21日 | 中華食堂
今から30年ほど前、私がまだ中央競馬の熱心なファンだった頃、ハヤチネという牝馬がいた。
主に活躍したのは900万下条件。今でいう1000万下…じゃなくて、2勝クラスっていうのか。
当時でも珍しいカタカナ4文字の馬名と、直線一気の追込みという競走スタイルが印象に残り、
GⅠなどの大レースには無縁だったものの、私を含む一部マニアが注目した、名脇役であった。
レースでは毎回、道中最後方をトボトボと追走しながら、直線に入ると急にエンジンがかかり、
外から一気に差脚を伸ばし、ライバルたちを次々と抜き去り、ゴールへ駆け抜ける。
ただし、すでに3頭ほどが先にゴールしており(笑)、掲示板には乗るも勝利には至らず。当然、馬券もハズレである。
追い込むも届かず4~5着という競走を繰り返した彼女は、結局900万下を卒業できぬまま引退。
産駒にも恵まれず、競馬史に名を残すことはできなかったが、私にとってハヤチネはそれでも、
同期のオグリキャップやスーパークリークといった、当時の名馬たちと同様、忘れられぬ競走馬である。

ハヤチネという馬名の由来は、日本百名山にも選ばれている、岩手県の早池峰山だと最近気づいた。
この早池峰山近辺で生まれた方が営んでいるのが、今回のテーマである、所沢の中華食堂『早池峰亭』だ。


お店は、プロぺ通りを突っ切り、ちょっと進んだ先にあり、創業は1972(昭和47)年だから、来年で50周年になる。
最近は更新されていないがHPもあり、「ハヤチネ」と店名をカタカナ表記している。店主もあの馬のファンだったのかな?
私がこの店を知ったのは、だいぶ前に紹介した、鈴木隆祐さんの著書「愛しの街場中華」にて。


尊敬する鈴木先生が絶賛していたので、数年前のある日、友人と『百味』で飲んだあとに寄ってみた。
店内はカウンター席やテーブル席の他、中華飯店らしい円卓もある。床も卓上もべたつくことなく、清潔であった。
従業員はベテランの男性が3人。頑固職人風の見た目に反し、どの方も温和な応対をしてくれたのも気に入った。

ドリンク類はビール、焼酎類、日本酒に紹興酒と、中華食堂ではおなじみのラインナップ。
料理メニューはやはり、昭和の時代から続いているだけあって、麺類、ご飯類、一品料理に日替わりと、実に豊富。
まずは瓶ビール570円(現在の価格、以下同)を注文すると、お通しとして、ワカメの酢の物が出てきた。


手の込んだ一品で、飲み客を歓迎しているのが伝わってくる、いいお通しである。
注文したのは、どちらも手作りの「ギョウザ」440円に「シュウマイ」440円、日替わりの「玉子とホーレン草炒め」単品。
単品価格は不明だが、定食だと820円なので、「ライス」280円抜きで540円くらいと推測。
まずは玉子とホーレン草炒めが登場。『餃子の王将』が期間限定で出す、「ポパイ」という料理に似ているね。


ホーレン草と玉子の相性もさることながら、豚肉と玉ねぎの歯応えがいい。さすがは約50年続く中華食堂だ。
続いては横に長い、珍しい形状のギョウザが登場。均一の焼き色がイイネ!


その直後、千切りキャベツが添えられた、シュウマイも蒸し上がった。


この焼売が、なかなかのビッグサイズで、大きさが伝わるよう横アングル画像も載せたが…それでもわかりづらいか。


餃子のアンは、野菜多めで旨味もしっかりついており、醤油などの調味料がなくても美味しい。
一方の焼売は、しっかり練り込んだと思われる豚肉が、ジューシィかつ甘口で、ありがちな肉臭さなど微塵もなし。
双方ともウマかったし、ビールのツマミにも最適であったが、わずかな差だけど焼売に軍配を上げたい。
「餃子の大将」を自称し、餃子を愛してやまない私だが、早池峰亭さんの焼売には感激させられた

その後はちょっと間隔が空き、またまた『百味』だか『くるま』で飲んだ帰りに、友人と再訪。
この日は「ウーロンハイ」450円を1杯と、おつまみとして黒板の日替わりメニューから、


「青椒肉絲(牛肉ピーマン炒め)」の単品、推定590円をオーダー。お通しは「冷奴」であった。


しばらくして、青椒肉絲がやってきた。まさに(牛肉ピーマン炒め)というメニューの記載通りの一品だ。


竹の子は入ってないが、これがハヤチネ式(←個人的に、カタカナ表記の方が好き)なのだろう。
味付けが濃厚で、もう1杯ウーハイを飲みたくなったが、すでに結構飲んでいたので我慢し、シメの食事に。
友人は彼の好物である、熱々あんかけが乗る醤油ベースの「広東メン」760円、


私は、メニューブックで“当店自慢”とオススメしていた、塩味ベースの「五目そば」760円を選択。


実際の商品はこちら。見本の写真と同様、なかなかの具だくさんである。


各種野菜などの具材から旨味が溶け出し、やや濁った塩味のスープが、飲んだカラダにジワジワと浸透する。
あと、自家製と思われるハヤチネ・チャーシューが、思わず撮影しちゃうほどウマい。※なのにヘタな写真で失礼


友人からひと口もらった広東メンもウマかったし、なにを食べてもハズレのないお店である。
結局、他の店で飲み食いしたあとだったのに、スープまで全部飲み干してしまった。

それからいろいろあり、東京では3度目の緊急事態宣言が発令され、
埼玉でもまん延防止ナンタラで、さいたま市や川越市、そして所沢市などでは、酒類の販売中止が要請された。
この時期、私用(飲酒ではない)で所沢に来たので、3度目の訪問をさせてもらった。
ハヤチネさんも、普段は店頭に置いてある「紹興酒」など酒メニューの看板を出さず、ノンアル営業に徹していた。
久々に入店したら、いつもと同じベテラン職人がふたり。もうひとりは出前かな?
そう、ハヤチネさんは昔ながらの中華屋さんなので、近隣に出前もしているのである。立川市は…さすがにムリか。
相変わらず、客席の床やテーブルは清掃が行き届いており、厨房内の壁やダクトも、ピカピカに磨かれていた。
来店客は減っているのだろうが、きちんと手抜きなく、迎え入れる体制を整えている。これぞプロだ

この日、私が注文したのは、前回気になったチャーシューが主体の料理「チャーシュー丼」820円と、
餃子と焼売が満足できたので、同じく点心メニューの「ワンタン」490円。
ほぼ同時に両者が到着。ワンタンは、真っ黒な醤油スープの中に、計10個の雲吞が泳いでいる。


すべて肉が詰まっており、しかも「ワンタンメンの麺抜き」なので、ちゃんとメンマまで入っている。


ご飯類のお供に、そして酒のツマミにもなる、いいメニューであった。
チャーシュー丼の付け合わせは、お新香とスープの代用品(ワンタンを頼んだので)の野菜サラダ。


ラーメン用の丼にご飯をよそり、刻み海苔を乗せ、その上にチャーシュー5枚。
シンプルな構成だが、先述したようにチャーシュー自体がウマいし、タレが浸みこんだメシが、これまた絶品。
白菜漬けとサラダ、さらに途中で飲むワンタンの醤油スープも、いい口直しになる。
しかも、ワンタンを半分以上食べ終えたところで、メンマだけでなくチャーシューも入っていたことを発見!


終盤のボーナス(?)に気分が良くなり、今回もご飯もスープも残さず食べ切ってしまった。
初めてシラフで食べたが、ハヤチネ料理は、やっぱりウマかったよ。

冒頭で触れた競走馬のハヤチネは、追い込んでも届かぬ、ひと息足りないレースばかりであったが、
所沢の中華食堂ハヤチネは、濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい塩梅の料理ばかりである。
味だけでなく、接客面も衛生面も問題ない。末永く続いてほしい貴重な中華食堂である。
脇役だったハヤチネ号を、こうして30年たっても覚えている人間がいるように、
早池峰亭さんは、近隣住民を中心に、未来永劫語り継がれるのは間違いない。

追記1 今回のブログタイトル、当初は「直線一気の追込み」だったが、早池峰亭さんと重ならないので変更
追記2 競走馬のハヤチネについても、そのうち書かせていただく→書きました



早池峰亭
埼玉県所沢市東町7-4
西武線所沢駅より徒歩約8分 
営業時間 11時~22時 現在は20時閉店
定休日 水曜
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