震災後の復興建築のひとつで、石張りの一階部分以外は、全面茶色のスクラッチタイルでおおわれた外壁は重厚感にあふれています。重厚な分ちょっと華やかさには欠けますが、各階の窓の形や大きさに変化をつけることで、外観にリズミカルな動きをつくりだしています。特に最上階の窓台を付けたアーチ窓と、コーナーのメダリオン風ワンポイント装飾は絶妙で、装飾排除のインター・ナショナルスタイルに占拠される前の昭和レトロな雰囲気が伝わってきます。
震災後の昭和戦前期(1920後期~30年代)に多数建てられたモダンな復興建築群も、今では希少な存在になっています。ツルピカの高層ビルに囲まれて、さらにその存在感が際立つ学士会館。昭和のモダンな街角の風景を今に伝える貴重な存在です。
■一ツ橋交差点からの建物全景
■建物西面
■建物東面
■2・3階の窓廻りは直線、最上階は曲線を基調としたデザインは当時流行した表現主義風
■半円大アーチのエントランス
■学士会館/千代田区神田錦町3-28
竣工:昭和3年(1928)
設計:佐野利器+高橋貞太郎
施工:戸田組
構造:SRC造地上4階、地下1階
撮影:2017/08/11
※国指定登録文化財