毎朝キッチンの窓から、見えていた大木があった。
数百メートル離れた高台にある小学校の木だ。
朝食後、その木を見ながらコーヒーを飲むのが、
私の平凡な日々であった。
時には優しく、時には大きく揺れる枝を見て、風を感じ。
若葉が萌え、葉が茶に色付いて、季節を感じていた。
天気の日は、小さな葉がキラキラと輝いていた。
季節を感じ、気候を知り、時を感じる大木だった。
ある日突然、
その大きな木が消えてしまった。
数軒の屋根越しに見ていた大木が、
突如消えたのだ。
窓越しに目をやるが、
数十年見ていた大木が無い。
季節を感じ、風を感じる楽しみが消えた。
ほのかな恋心を持った大木だったが、もう見えない。
何故か恋人を失ったような寂しさを感じた。
この写真の奥中央部に大木があった。