高坂氏はタスマニアに行ってから、閑なときにタスマニア土人の滅亡のことを調べたり、お茶の時間にその話を聞いてみたりした結果、タスマニア土人の滅亡に関して1つの仮説を得た。
『タスマニア土人を滅亡させる上でもっとも効果があったのは、イギリス人の鉄砲でも大砲でもなかった。皮肉なことに、そうした文明の利器よりも、イギリス人が彼らの身体のなかに携えて来た微生物が、はるかに有効だったのである。もちろん、イギリス人は細菌戦をしたわけではない。
ただ、彼らの体内にはタスマニア土人がまだ出会ったことのない微生物が多数存在した。たとえば結核菌は陽転している人間なら、だれでも持っているし、工業化の初期のイギリスには結核にかかっている人が多かった。風邪のビールスでも、イギリス人の体内にはタスマニア土人の知らない種類のものがあった。そして、タスマニア土人は、こうした微生物に出会ったことがなく、したがって抵抗力を持ちあわせていなかったために病気は急速に拡がり、しかも致命的であった。
とくに、結核菌はタスマニア土人をバタバタと倒して行ったという。1803年には5千人ほどいたタスマニア土人が27年間に25分の1の203人に激減したのには、この事情が大きく作用しているのである。そして1876年もっとも原始的な民族タスマニア土人は滅亡した』
この話は古い過去の話ではなく、今につながる話である。人類にとって異なる世界と交渉するときの最大の問題のひとつは、病気の伝染だからである。グローバル化の急速にすすむ現代、新型インフルエンザに振り回された少し前のことを思えば、予期せぬ形で私たちのまわりにも起こりえることだ。
また、宇宙にまで生活の範囲を拡大している人類にとって、さらに悲惨な事態もあり得るという覚悟も必要である。
高坂氏が40年前に発した『現代の技術文明はきわめて強い力を持っているが、それによって自然を統御することなどはできないように思われる。現代文明は人間にとって確かに強力なものではあるが、自然を統御するほど強力ではない。それなのに、現代の人間は現代文明は人間がその意思に応じて使いこなすことができ、しかも、相当大幅に世界を変えうると考えているように思われる。それは大層危険なことではないだろうか。』という警鐘は色あせていないように思う。
『タスマニア土人を滅亡させる上でもっとも効果があったのは、イギリス人の鉄砲でも大砲でもなかった。皮肉なことに、そうした文明の利器よりも、イギリス人が彼らの身体のなかに携えて来た微生物が、はるかに有効だったのである。もちろん、イギリス人は細菌戦をしたわけではない。
ただ、彼らの体内にはタスマニア土人がまだ出会ったことのない微生物が多数存在した。たとえば結核菌は陽転している人間なら、だれでも持っているし、工業化の初期のイギリスには結核にかかっている人が多かった。風邪のビールスでも、イギリス人の体内にはタスマニア土人の知らない種類のものがあった。そして、タスマニア土人は、こうした微生物に出会ったことがなく、したがって抵抗力を持ちあわせていなかったために病気は急速に拡がり、しかも致命的であった。
とくに、結核菌はタスマニア土人をバタバタと倒して行ったという。1803年には5千人ほどいたタスマニア土人が27年間に25分の1の203人に激減したのには、この事情が大きく作用しているのである。そして1876年もっとも原始的な民族タスマニア土人は滅亡した』
この話は古い過去の話ではなく、今につながる話である。人類にとって異なる世界と交渉するときの最大の問題のひとつは、病気の伝染だからである。グローバル化の急速にすすむ現代、新型インフルエンザに振り回された少し前のことを思えば、予期せぬ形で私たちのまわりにも起こりえることだ。
また、宇宙にまで生活の範囲を拡大している人類にとって、さらに悲惨な事態もあり得るという覚悟も必要である。
高坂氏が40年前に発した『現代の技術文明はきわめて強い力を持っているが、それによって自然を統御することなどはできないように思われる。現代文明は人間にとって確かに強力なものではあるが、自然を統御するほど強力ではない。それなのに、現代の人間は現代文明は人間がその意思に応じて使いこなすことができ、しかも、相当大幅に世界を変えうると考えているように思われる。それは大層危険なことではないだろうか。』という警鐘は色あせていないように思う。
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