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小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

それぞれの人生、それぞれの幸せ『蛇行する月』by桜木紫乃

2018年07月05日 | 小説レビュー
〜人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。
―道立湿原高校を卒業したその年の冬、図書部の仲間だった順子から電話がかかってきた。
二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。
故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、引き寄せられていく―。
彼女たちの“幸せ”はどこにあるのか?「BOOK」データベースより


『起終点駅(ターミナル)』に続く、桜木紫乃作品、2作目です。

高校の同級生6人の女性の物語を紡いだ連作短編集のような感じです。

北海道の釧路と東京を中心に、それぞれの人生について語られていくんですが、全員が日々の暮らしに何らかの悩みや苦しみ、また倦怠感を感じながら生きています。

『蛇行する月』というタイトルの意味が最後の解説を読むことによって明らかになるんですが、蛇行する川のように、人生は曲がりくねっているんですよね。

その中の一人、順子は、20歳も年の離れたオッサンと不倫関係の末に駆け落ちをして、東京で隠れるように暮らしています。

釧路に残って、年に一回は集まって飲む同級生たちから、「一番不幸な女」のように思われていた順子ですが、それぞれに蛇行する川のような人生を歩みながら、そのS字の真ん中を貫くように、自分の思いに真っ直ぐな人生を歩み「私、しあわせよ」と言い切る順子に、それぞれが、「ホンマかいな?」と、疑いの眼差しで会いに行きます。

そこで、はた目からは決して幸せそうには見えない順子を見て、「それみたことか!」と感じるのですが、少し話をしていくうちに、「こういうところに幸せってあるのかも?」と、自分の姿と照らし合わせてみて、初めて気付くことがあります。

巻末に
「川は曲がりながら、ひたむきに河口へ向かう。
みんな、海へと向かう。
川は、明日へと向かって流れていく・・・」
と、結んであります。

曲がって、澱んで、時には決壊して・・・、美空ひばりじゃないですが、人生は川の流れのようです。

「友情とは?家族とは?」、「本当の意味での幸せとは?」・・・。

「寄り道してもいいじゃない、今からでも遅くないよ。」と、色々なことを考えさせてくれる作品です。
★★★3つです。