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自然の偉大さと人間の偉大さ「凍」by沢木耕太郎

2018年07月08日 | 小説レビュー
~最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。
世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。
だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった―。
絶望的状況下、究極の選択。鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。講談社ノンフィクション賞受賞。「BOOK」データベースより


沢木氏の作品の中で、『深夜特急』シリーズを読みたいのですが、なんせ長編なので、しり込みをしています

そこで、沢木氏の作品の中でとても気になる本があったので、借りてきました。

いつものごとく、本の紹介文を読まずに読み始めたので、普通に「フィクション」やと思って読んでいました。でも途中から、「こんなに臨場感溢れて、しかも突拍子もない展開がないのは、ノンフィクションでは・・・?」と思いながら読みました。

恥ずかしながら、日本人として最高峰クライマーとして呼び声の高い「山野井泰史さん」と「山野井妙子さん」のご夫妻のことを知りませんでした



まぁとにかく凄まじい世界です。世界最高峰とよばれるエヴェレスト山脈の山々を次々と制覇した山野井さんは、妙子さんと一緒に、「ギャチュンカンの北東壁」を目指してチャレンジされます。

現地についてから、様々なアクシデントがあり、北壁に変更するんですが、それもまた大変厳しい過酷なクライミングとなってしまいます。

極限状態における夫婦の絆というには、あまりにも壮絶すぎて、夫婦というより、最も信頼できるパートナーとして二人の絆は繋がっています。

ギャチュンカンから奇跡的に生還した二人の夫婦の後日談が書かれているのですが、これまた凄まじい日々の暮らしぶりです。

妙子さんにいたっては、両手両足の指のうち両手の10本、両足の8本を凍傷で失い、それでもお箸を持ったり、包丁を握ったり、裁縫をしておられるそうです。

そんな二人が、いまだに山に登っておられるというの読んで、「人間の力ってスゴいな!」と感服させられました。

ドラマチックな展開はなく、冬のエヴェレストの厳しさが手に取るようにわかる沢木氏の文章にも感心します。解説でわかるのですが、沢木氏自身も一緒に登山をしながら、お二人から直接お話を聞き、また実体験として山の厳しさを知っておられるだけに、文章に重みと深み、そして臨場感があふれています。

★★★3つです。