~演劇を通して世界に立ち向かう永田と、その恋人の沙希。夢を抱いてやってきた東京で、ふたりは出会った―。
『火花』より先に書き始めていた又吉直樹の作家としての原点にして、書かずにはいられなかった、たったひとつの不器用な恋。夢と現実のはざまにもがきながら、かけがえのない大切な誰かを想う、切なくも胸にせまる恋愛小説。「BOOK」データベースより
リアル感がスゴい!「火花」by又吉直樹 以来の又吉作品二作目です。多くの方のレビューにもあるように、『火花』より非常に読みやすくなっていますし、読んでいて引っかかるような不快感はありませんでした。
文体や表現に不快な点は全く無いのですが、この主人公の永田という男のダメっぷりが腹立たしくて、女性が読んだらムカつきが止まらへんと思いますよ。
永田と同じ劇団に所属していて、路線の違いから脱退した青山さん(女性)の味方をしたくなりますし、本当にダメな男の典型を見事に描き切っています
これだけ読者をムカつく気持ちにさせるだけの筆力が又吉氏にはあるということでしょう!
それにしても、主人公である関西弁の劇団主催者「永田」が又吉に思えて仕方ないのは僕だけではないでしょうね
ストーリー的には、ダメな主人公の夢の実現のために無償の愛情を注ぎ続ける彼女「沙希ちゃん」。この子が本当に健気で可哀そうすぎる 青山じゃなくても、絶対に止めますよね!
でも、世の中には、こういう二人のように周りから見れば「最悪やん!今すぐ別れた方がいいのに!」と誰もが思うような感じやのに、実は二人は幸せに暮らしているという関係も多くあるんだと思います。
『コンビニ人間』の時にも書きましたが、まさに多様性が叫ばれる世の中なので、色々な愛の形があると思いますし、永田と沙希ちゃんの関係もありなのかもしれません
内容としては、悶々と苦しい内容ですし、エンディングは一見爽やかに感じますが、モヤモヤも残ります。
しかしながら、又吉氏の筆力は確実に上がっており、読ませる内容としては充分だと思います。
★★★3つです。