NHKの朝の連続テレビ小説『エール』の第100回を神回と呼ぶ人も多い。山崎育三郎さんが演じる佐藤久志が、戦時歌謡の歌い手としての負い目から立ち直り、甲子園のマウンドで、『栄冠は君に輝く』をアカペラで歌う。山崎さんが、こんなにも説得力のある歌を歌える人なんだとあらためて感心したと同時に、ドラマとしての構成が素晴らしいと思ったのでした。
山崎育三郎さんも小学校時代は野球少年だったそうです。今年は、コロナのせいで、甲子園での高校野球が中止になってしまったということもあり、この歌には様々な思いが込められてました。ドラマの中でも、様々な登場人物が未来に向かって立ち上がるためのエールとなっていたのです。
主人公の小山裕一は言います。「作詞した多田さんは16歳の時、試合中のケガで足を切断して甲子園の夢を失ったそうだ。もう二度と野球ができないという葛藤の日々を乗り越えて、多田さんはあの詞を書いた。自分にできることは、未来ある若者を応援することだって。絶望を経験した彼だからこそ、あの詞を生み出せたんだと思う」と。
多田良介さんを演じたのは、寺内崇幸さん。じつは、元巨人軍の内野手。2006年ドラフトで巨人軍に入り、何年か一軍で活躍するのですが、脚の故障もあり、2018年戦力外通告。現在は、栃木ゴールデンブレーズスの監督をされている方。実際に悔しい思いをした方だからこそ、ほんの数秒のシーンであっても圧倒的な存在感を出しているます。言われないとわからないですが、見事なキャスティングですね。こちらがその寺内崇幸さんが登場するシーン。
そして、裕一の久志への説得は続きます。「僕たちも多田さんの思いを形にして、未来ある若者に一緒にエールを送ろうよ。勝った人にも負けた人にも、頑張ったね、頑張ろうねって、一生懸命な姿を見せてくれて、ありがとうって。久志、君なら歌える。おまえじゃなきゃ、ダメなんだよ」 感動的なセリフです。このドラマが「エール 」というタイトルになっているという意味がここに表現されています。
そして、曲の盛り上がりに挿入される登場人物それぞれのカットが見事です。
それぞれが、戦争で精神的に傷つき、どん底を経験し、新しい時代に向かって立ち上がっていく。そしてそれを応援する人々。まさに「エール」が凝縮しています。
「栄冠は君に輝く」の山崎育三郎さんのアカペラも素晴らしかったのですが、オリジナルの伊藤久男さんの音源がYouTubeにあったのでシェアさせていただきます。
あと、100回記念大会のダンス編、こちらも何度見ても感動します。
私は、高校一年の時に母校(愛知県立成章高校)が春の選抜に出て、応援団として甲子園に行きました。そんなこともあり、また、音さんが地元の豊橋出身という設定もあり、今回の「エール 」は格別です。来年は、コロナも収まり、甲子園で、未来ある若者にみんなでエールを送れるようになれると信じています。
NHKであれば、もう少し史実に基づいて作って欲しかった。