シンガポールのコワーキングオフィスのOne&Coで、「早く言ってよ」のCMで有名な名刺管理サービスSansanさんのプレゼンがありました。Sansan本社の取締役の塩見さんも来られていたのですが、ムンバイからシンガポールに拠点を移されたばかりの池西さんが、Sansan社の企業およびそのサービスに関して説明されました。今年の6月に東証マザーズに上場したばかりの会社ですが、アナログの名刺から、様々なデータを引き出して、ビッグデータとして管理している。そのイノベーションの凄さにあらためて驚きました。
その説明の中で、「ホモフィリー」という言葉が登場しました。名刺交換を分析していくと、自分と関連性の高い人との繋がりが多いという傾向があるそうなのです。人間は、同質性の高い人と繋がりたがる、ということなのだそうですが、この「ホモフィリー」という言葉、その場では、”homo”=「同質」ということしか思いつきませんでした。
実は、私は、大学時代、英文学をやっていて、「知的生活の方法」で有名だった故・渡部昇一先生に、英語の語源学 (Etymology) を教わっていました。英語では、どんな難しい単語も、分解していけば、語源から大体の意味は推測できると教えられました。
”homo”は「同質」という意味なんだけど、「フィリー」ってなんだったっけな?「フィロソフィー」の「フィロ」と同じものかな?と家に帰って調べてみたら、”homophily” = “homo” + “phily”でした。”phil”は「愛する」という意味のギリシャ語、”philos”から由来する言葉で、つまり”homophily”とは、似た者同士がお互いを好む傾向ということになります。
ちなみに、”philosophy”は、”philo” (愛する)+ “sophy” (知恵)=哲学、という意味。私は愛知県出身なのですが、”philosophy”を無理やり漢字に置き換えると偶然「愛知」となりますね。上智大学の英語名は、”Sophia University”です。欧米で、”Sophia”とか”Sophie”とかの名前は、日本では「知子」とか「智子」という感じに近くなりますね。蛇足ですが。
“Phil”(愛する)に話を戻すと、”philanthrophy”は「慈善事業」を意味しますが、元々は、phil (愛する)+anthrophy (ギリシャ語のanthropos=人間)です。”philharmonic”は交響楽と訳されることが多いですが、元々は、phil (愛する) + harmonic (音楽、ハーモニー)です。
アメリカにPhiladelphiaという都市がありますが、これはphil (愛する) +adelphia (兄弟)=兄弟愛という語源になります。シンガポールのシティーホールにアデルフィ(Adelphi)という建物がありますが、元々はシンガポールで最も古いホテルの名前だったのですが、これも語源は「兄弟」です。
なんとかファイルという時の語尾につくファイル(phile)も「愛」という意味です。例えば、”audiophile”(オーディオ愛好家)、”bibliophile”(本好き)などですね。
「ホモフィリー」から話が逸れてしまいましたが、組織論ということになると、同質の人間だけで組織を作るとそれはまたよくないということも。これに対する言葉としては、「ダイバーシティー」があります。以前、日産自動車の人に聞いた話では、人事戦略として、あえて「ダイバーシティー」を重視しているということでした。同質の人間だけ(例えば、日本人の、日本に居住している、男性の技術系の人間だけ)で製品を開発しても、イノベーションは生まれない。それを避けるため、あえて女性や外国人や、異質な人間を採用してダイバーシティーを実現しているとのことでした。
「ホモフィリー」ということでいうと、考え方は異なっても、志の熱量の高い人間が集まれば、そこで何かが生まれるというのはあるかと思います。それは幕末の時代にもそんなのがあったでしょうし、先日同じ場所で講演された加藤頼彦ポールさんの、社長になることを目指している学生ばかりを集めて切磋琢磨させ、ほとんどの学生がその後実際に社長になったという事例でも実証されていますね。
このイベントが行われたコワーキングオフィスを見ていると、こういう場所では、ホモフィリーとダイバーシティーが両立する可能性があるのでは?とふと思いました。ネーミングも何かそれを示唆しているような… まああくまでも個人の感想ですが(笑)。
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