イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

定番は子供と裸婦?地方都市の公共アートの必然性

2025年01月16日 13時01分56秒 | 日本

JR船橋駅北口前の巨大な石彫アート作品です。

ハトと幼児。「にらめっこ」という題がついています。

子供を性的な対象としてみることにつながるかも…と幼児の裸体像を見て居心地の悪い思いをする神経質な欧米人はけっこういるかもしれません。ヨーロッパでは見かけない対象です。

雰囲気がほほえましく、写実性が低く漫画っぽい表現、むきだしなのはかわいいお尻だけのこの作品はぜんぜん問題なさそうです。ただ…そう言われてみると子供の裸の必然性が気になる人も出てくるのではないでしょうか。

もしかすると問題視する人がいるかもしれない「アート」を無邪気に駅前広場に設置する日本人はちょっと…のんきなのかもしれません。

それに、なぜここにアート性は低そうな、それでもかわいいと思う人も一定数いそうな裸の子供たちの像が…?

そもそもヨーロッパには私の知る限り、少なくとも英国には、アーティストとのコミッション契約で購入される、屋外の高価な公共アートがあまりありません。

日本には、本当に多いですよね。

地元住人の美意識の向上、地域の化意識の高さをアピールするなど、いろいろな思惑があってのアート投資なのでしょう。

同じロータリーに面したブロンズ像、「歓び」。

思いっきり古典的です。作品名に反して表情が楽しそうではありません。

親しみやすい日本人体形なのに、日本では見慣れない竪琴を持つこの裸婦像、寓意的な意図があるのかもしれません。

でも惜しい、駅前ロータリーに広場を有する大掛かりな陸橋が設けられて以来、ブロンズ像の前の歩道はなくなり歩いて通ることができません。

陸橋から下のバスターミナルに降りて、バスが頻繁に通る幅の広い道路ごしに遠くから鑑賞するしかありません。スマートフォンのカメラで撮ったピントの緩い望遠写真ではじめて作品名を知ることができました。

ブロンズ像の設置は、30年以上前に始まった駅北口前の再開発以前です。背面も二階建ての駐輪設備にかこまれ、そばで見ることができません。

(おそらく税金で購入された)立派な公共のアートを大切に扱っていないようなのが残念です。

 

駅前広場から300メートルぐらい離れた、大通りに面した公園入口には造形的に美しい裸婦ブロンズ像「希望」があります。

やはり安心感をもたらす日本人体形ですが顔の造作は国籍不明。

古典的裸婦像も、言ってみれば公園や(しかも人が通れない)ロータリーに設置する必然性が低そうです…

裸婦像はこの地域に限らず日本中の屋外に多数あるようなのに、古代ギリシャ彫刻のような男性裸体像がなさそうなのはなぜ?

この、やはり子供の石像も同じ駅前ロータリーの目立たない反対側に置かれています。

「交通安全の像」。

これには、交通安全意識を高めてもらう啓蒙的意図がある…のかもしれません。

なんだか旧ソビエト連邦衛星諸国で製作されたような作風ですね。

 

英国の町の公共アートといえば、建築物を部分的に取り壊した後の大きな壁面や仮囲いなどにプロのアーティストによって描かれたミューラル mural(壁画)など、ポップで安価で親しみやすい一過性のアートが主流です。

それと、多くが20世紀以前に設置された国王や郷土の名士や英雄(軍人)のブロンズ像…

加えて、最近ではポップカルチャーやフェミニズム、公民権運動、スポーツなどで知られた地元出身の有名人の像、それに慰霊のための兵士の像なども各地で見かけます。

 

海外ではお金のかかった永久設置の屋外「アート作品」が少なく、日本にとても多い要因の一つに、日本と海外の公共心の違いを挙げる人がいます。

…たしかに海外では名前やスローガンを独自の書体で壁面に書きつける「タギング tagging 」という落書きが日本より圧倒的に多いです。高名なアーティストの作品を破壊したりタギングしたりされては設置に投じたお金をどぶに捨てるようなものですし、地元の評判に傷がつく…なんて思惑もあるのかもしれません。

とは言え…!

英国ではそこら中にある英雄偉人の銅像、ブロンズ像への破壊行為は知る限りほぼ、ありません。

よくあるのは(ストックポート日報でもたびたびしつこく取り上げてきたように)偉人像の頭の上にトラフィック・コーンをのっけたり、手にビールの缶やブラジャーやコンドームを持たせたり、とにかく郷土の英雄がまぬけに見えるようなイタズラ行為!

迷惑行為ではありますが、破壊行為ではありません。

 

私の考えですが…ヨーロッパ(少なくとも英国)では、日本より税金の使い道に関する意識がシビアだからだと言えるかもしれません。公共の福祉につながらない出費をヨーロッパ(少なくとも英国)の有権者はひどく嫌がりますから。

そういえば、船橋駅周辺の古典的な2体の裸婦像は1,980年代に設置されています。

いわゆるバブルの頃なのでした。ありあまる税金の使い道に苦慮していたのかもしれません。

バブル崩壊後には公共アートの購入を各自治体も控えはじめたのではないでしょうか。

 

市内各所にある遊歩道の、自転車から降りるように促すボラードにとまる…

かわいらしい金属製の小鳥は大量生産でしょうね。気が利いています。

 

子供への性犯罪は日本でも長いあいだ懸念されているはずです。

 

 

 

 

コメント (4)
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