早いもので1月も終わりです。
チャリティ・ショップに大量に持ち込まれる寄付品...年明けの年中行事です。
チャリティ・ショップ charity shop は、ー般からの寄付品を販売して利益を慈善事業の基金にする私営の、英国ではおなじみのセカンドハンド・ショップです。
私が6年間ボランティアでお手伝いしている、おもに発展途上国に援助の手を差し伸べるオックスファム Oxfam でも年明けから約1ヵ月ほどの間、大量の寄付品が連日持ち込まれました。
上の写真は1日に持ち込まれた寄付品の一部です。
検品や値付けをする前に一時的に収納場所に持ち込まれた年明け後、2週間目の寄付品です☟
この時期に寄付が集中する理由をあげてみます。
その1;クリスマス・プレゼントにもらった大量の余剰品の処分
毎年、惰性で贈り合う悪しき習慣のクリスマス・プレゼントをやめよう、という意見が各方面から出ていますが...それで「経済がまわっている」のだから(日本式表現)...で反論する人もいそうです。
とにかく「欲しくないプレゼント」!!チャリティ・ショップは大歓迎です!
「クリスマスにもらったいらないプレゼントを寄付してください」と呼び掛ける、別のチャリティショップのお願い表示です☟
ラベルがついたままの新品は中古品よりかなり高く売れます。特にクリスマス向きの商品(定番の入浴剤やボディクリームなど数年先が使用期限なモノを含む)は大歓迎、今年の12月にクリスマスプレゼント推奨品として売り出すために、12ヵ月間しまっておきます。
クリスマスに新しいものをもらって、古いものを処分する人もいるかもしれません。
オックスファムのバレンタインデーのプロモーション用ディスプレイです☟かなりハズカシイ品ぞろえです
その2;片付けを決意
余分なものを処分するデクラッター declutter は年間を通じて英国でも多くの人の関心事です。
年明けに処分するべきものが多く目につき、寄付が集中するのは「新年の抱負 New year's resolution 」と関係あるはずです。 年が明けて心機一転、片付けて家の中をスッキリしたいスイッチが入るためでしょう。
年内に片づけをすませ、キレイな家で清々しく新年を迎えたい日本的な感覚は英国人一般には理解されにくいようです。
私の家でも、お正月前だからと、ふだんしないような場所を掃除していると、「クリスマスが終わってまだお祝い時なのにバタバタしないでほしい」と家族から苦情がでます。
来る年に、禁煙、減量、規則正しい生活習慣、資格取得...等を実現するつもりなら、年が明けるまでは喫煙しまくり、食べまくり、怠惰な生活を続け、勉強は先延ばしにして、年が明けた1月2日(仕事始め)に目標に向けてビシッと規律ある日常に切り替える...のが正しいらしいのです。どうせあと数日しかない年内に、結果が出ないことにわざわざ手を付けて中途半端に新年のスタートを切るのは不合理ですから。
デクラッター、片付け、大掃除...も然り。
大晦日に、畳をあげ、障子やふすまを貼り替えたりする家庭は日本でも今は少ないでしょうね。昭和の中ごろまでは、仕事も学校も休みになって家族総出で1日あれば終わったらしい家庭内大掃除...モノが少なかったからできたのでしょう。
同じくバレンタインデー用のウィンドウディスプレイ☟
理由その3;クリスマス前に多い部屋やキッチンの模様替え
「クリスマスまでにお届けそなえ付け、支払いは新年後」という家具やキッチン・ユニットの宣伝を夏の終わりごろからテレビでよく見ます。
親戚や友人を招待、キッチンにも大勢が入って料理するクリスマスまでにステキにしたいんですね。もちろん、家具もキッチン・ユニットもドカンと値下げするクリスマスの翌日(ボクシングデイ・セール)以降に買い替える家庭も多数!
模様替えの際、インテリア用品や食器などもー式取り換える家庭も多いようです。
1990年代のはじめ頃の英国人ー般の生活は、「バブル」の頃に来た私にはとても質素に見えました。物価がモノの質に不釣り合いに高かった記憶があります。
30年以上たった今、英国人の購買意欲は驚くほど上がりました。モノがあふれる家庭が多くなっているようです。
「経済のグローバリゼーション化」とやらのためか、安い値段でそれなりに質の良い製品が買えるようになりました。またー般の人がSNS で発信するファッションやライフスタイルの情報も「買えるなら買う」モノあふれの傾向に拍車をかけているようです。
「バブル」は遠い昔、しかも不況でお給料が上がらないらしい今の日本なのに「買えるなら買う」のモノあふれ状態が未だに続いているようですね。
日本人によるSNS に投稿された「汚部屋」の片づけ、「断捨離」、親が住む「実家の片づけ」の実況ビデオやブログをこの頃とても多く目にします。フォロアーのコメントを読んでも切実さが伝わってきます。100日、年内、あるいは子供のバーズデー・パーティを目標とした、とても年末の数日では終わらないー大挑戦のようです。
買えるものをためらいなく買うようになり、モノがあふれ始めて久しい英国でも「少ないもので豊かに暮らす」美学がもてはやされています。それだけ何とかしたいという人が多いのでしょう。
そして、概して言えば、「実家の片づけ」ビデオなどを見るかぎり、日本のほうが買い込み続けた不要なモノを手放すためらいが圧倒的に強いように思えます。
英国では、デクラッターの大きな味方、チャリティー・ショップの存在がモノを手放すハードルを大きく下げていると断言できます!
不用品で人助け!家もスッキリ、一石二鳥!...ですから。
私がボランティアをしているオックスファムは高級住宅街にあるため、寄付品の質は概して言えば高いですし、売り値も高めに設定しています。店の雰囲気もこぎれいで、みて回るのが楽しい、とお客さんから好評です。
破れたり割れたりしていないかぎりどんな状態のモノでも格安で売る、ガラクタ屋のようなチャリティ・ショップもたくさん存在します。それなりの固定客がいるようです。
掘り出し物が見つかりそうなガラクタ屋のようなチャリティ・ショップの一例です☟
こぎれいなチャリティショップでは売り物の品質にこだわるため、多くの寄付品がゴミ箱行きなのは残念ですが事実です。
オックスファムでは、衣類など繊維類は厳選されたものだけを店頭に出しますが、それ以外の繊維類も一切廃棄することなく有効に利用しています。英国内での販売にむかない衣類も等級分けして、ちょっとくたびれているだけなら発展途上国での販売用、かなりなくたびれ具合でも穴や破れがなければ救援物資用、ボロボロ衣類はリサイクル...など廃棄0%活動を進めています。
ところで、格安で買えて、しかも売り上げが社会的意義のあることに使われるチャリティショップに行くとついつい不要なモノまで買ってしまい、結局モノを増やしてしまうという古典的ジレンマを多くの人が感じています。
ボランティアの店員と話をしたがるお客さんはー定数います。
「Seasalt (ブランド名のー例)のコートがたったの19ポンド99ペンス、しかも私のサイズだし..買わないわけにいかないわね。でもうちにはコートがもういっぱいあるのよ(ため息)」なんて話しかけられたら、必ず言ってあげる言葉を用意しています。
「わかるわかる! でもあなたが払ったそのお金でアフリカの子供1人か2人が学校に行けるのよ!」
これで、けっこうたくさんのお客が罪悪感なしにまた新たに増え続けるモノを買っていってくれることになります。「井戸を掘れば汚い河の水を飲んで疫痢で死ぬ子供が救える」話も効果があります。
...洋服ダンスがいっぱいになったらアフリカの子供たちのために、ためらいなく寄付に持ってきてくれるでしょうし!
ここ、20年ほど、私はほとんどすべての自分が着る衣類をチャリティショップで購入しています。倹約の目的だけではなく他人が不用としたものを有効利用する意義は大きいですから。必要な日用雑貨も、新品を見る前にまずチャリティショップで探すことにしています。
ついしてしまう衝動買いは(たま~にですが)やめられません。モノが増えるメカニズムは理解しているつもりです...