中国の「反体制」デモ、鎮静化しちゃいましたね。

「中国人がんばれ、もっと怒れ!」と陰ながら応援していましたのに残念です。
写真は昨日と一昨日撮ったクリスマス前のうんざりするほど浮かれ切った英国の光景です。クリスマス対応商品を棚に詰め込んだスーパーマーケット、コンビニエンス・ストアとチッピー(フィッシュ&チップスの持ち帰り店)で撮りました。

話かわって、安倍元総理の国葬、2か月も前の話で恐縮ですが、私の日本滞在期間におこった最もセンセーショナルなニュースでした。
(一方、ここ英国では私の留守中、首相の交代2回と女王の死去というほんものの重大ニュースが目白押しでした)
安倍元総理の政見やら功績やら人柄やらをここで評価/批判するつもりはありません。

が、国家を挙げて追悼するにあたいする、外国の首脳クラスの人たちを呼びつけていっしょに追悼してくれるよう国家が要請するほど国家にとって意味のある、国税を12.4億円も使って国家を挙げて弔うべき人だったかというと...
答えは否です。
彼を支持する人や敬愛する人がたくさんいたのは知っています。在任中に経済の活性化に尽力したとか、気さくな人柄だったとかもききました。それに憎むべき暴力事件の犠牲者ですものね、たしかにいたましいことでしたし動揺する人も多かったですから。...だからと言ってどさくさまぎれに、首相をやったことがあるけど(けっこう長かったから影響力はたしかにある)現在はふつうの人を国葬にする決定、しますか!?
彼の突然の死を悼む人たちは、自分なりのやり方で心から追悼の意を表明すればよろしい、自民党にとって重要な人だったらしいので「党葬」とやらをやってもよかったね...という話ではありませんか。

さて、私の夫は私の日本滞在中、ヒマなものですから英国にいて英語で読める日本のオンラインニュースをあさりまくっていました。そして毎日知り得た知識をビデオチャットで私に披露するのをとても楽しみにしていました。
夫にとってアべ国葬はかなり「オイシい」トピックだったようです。もちろん国葬に値するかどうか検証するのがおいしさのポイントです。(以下、カタカナ表記は敬称と肩書略)
夫は、銃撃事件後に調べてみるまで私もよく知らなかった家計学園や桜を見る会の件、ユニフィケーション・チャーチ(統一教会)とのつながりなども英文情報を読んで熟知していました。
うちの夫のようにヒマでこだわりのある人じゃなくても、調べれば海外でも簡単にわかることです。
...「自分が信じてもいない(しかも反社会性の高い)宗教の集まりに顔を売ってまでしてお金をもらうなんて、政治家としての良心はあるのか」って、ふつう思いますよねぇ..? 私は思いました。
日本では、統一教会のアコギな献金要求や信者の家庭崩壊などが明るみになるまで問題視されなかったようですね。たとえアコギじゃなかったとしても、高い地位にある政治家がそんな浅ましいお金集めをするのか?って不思議に思うのが国際社会の常識なのですが...するんですね、日本では。(安倍元総理だけではなく、他の自民党の議員も!)

好ましくないことをしたのが国民に知られちゃっているのが海外でもバレちゃってる人の葬儀を国がとりおこなって、各国の元首級の人も招待しちゃうって招待された側は「?」だと思うのですが。
エリザベスII世の国葬に比べると出席者の顔ぶれがかなり寂しかった(失礼)のが「?」の答だと言っていいでしょう。単に海外の国葬出席どころじゃなかった事情の国も多かったでしょうが。

安倍元総理の国葬が海外ではどう見られているのか、気になった日本人はおおいでしょう。
大きな話題にはならなかったかもしれませんが、自国の元首級の人が招待された先進国の国葬ですから、どの国でも報道されたはずです。

そしてやはり、多くの国での報道の焦点は(たぶん)「日本国民の国葬に対する考え」だったはずです。
海外でこの件に興味をもつ人は「日本人にとって本当に国葬でいいのか?」といぶかっていたはずです。

当日の朝、NHKニュースで、国葬反対デモに参加する人々を取材するBBC(英国国営放送)と韓国の放送局の特派員へのインタビューを見ました。2人とも「我が国の視聴者は日本国民の反応に一番興味をもっています」という旨、答えていました。
夫がワクワクして見たというニュースはBBCではなく、民放ニュース局のスカイSky だったそうです。葬儀のようす(全員マスク着用で着席する参列者とアベの巨大な遺影)が3秒ぐらい映って、国葬反対デモ隊の言い分と、交通規制による大混乱ぶりがそれぞれ5分ぐらい見られた...ということでした。

「結局、何だったのアベの国葬って?!」というのが夫の感想でした。

日本人は「サッカーの国際試合で相手チームの応援席のゴミ拾いまでした日本人応援団を世界が絶賛」というような情報が好きですよね。
(自分が出したゴミを持ち帰るのは当然のエチケットとしても、相手チームの応援席まで出張っていってゴミ拾いをするのは、私はやりすぎだと断言します)
この国葬のような出来事が国際社会で国外の人たちにどう映るかももっと気にするべきだと思うのです。
私の祖国、日本にとって唯一の救いは、各国報道陣が国葬反対に声を上げる、自分の意見を持つ日本人の姿をしっかりと報道してくれたことです。

私は日本国民ですが、「国葬はよくない!」とテレビの前でひとりごとをいうか周りの人と愚痴るだけで何も行動を起こしていません。日本に住んでいるわけでも税金を払っているわけでもないし、かなり他人事です。
それでも外国の報道陣に国葬反対の意見を言える私と同じ日本人がいたことをうれしく思います。
サッカー試合のゴミ拾いを誇りに思って、国葬は疑問だけどもう決まったことなんだからほっとこう...と思う人ばかりの国だと他国の人に思われたくありません。

中国の「反体制デモ」はやりすぎの「ゼロ・コロナ政策」の撤廃がおもな要求で「民主化」を求める運動とは根本的に違ったようですね。
それでも、言論の自由のない中国ではっきりと意思表示をする若い人たちはじゅうぶん勇敢です!
国民の7割以上が国葬に反対していたと報道された日本の街頭インタビューで、国葬についての意見を聞かれた日本人が誰一人として「国葬をするべきではない」と明言しなかったのが寂しいですね。(カメラの前で言いにくい気持ちは充分わかるのですが...!)
今回の中国のプロテストのニュースと同時に、BBCのニュース番組で2019年(天安門事件30周年)に撮ったと思われる短いビデオ映像を見ました。
天安門広場の民主化要求デモ活動を鎮圧するために出動した人民解放軍の戦車の前に立ちはだかる若い男性の映像をBBCの特派員がラップトップで、多くの2019年の北京市民に見せている映像です。
すべての人が「知らない」「見たことがない」「中国の戦車じゃないだろう」というようなことを言っていましたが、もちろんあの天安門事件を知らない50歳以上の北京市民がいるわけがありません。「知っている」などと答えたら怖ろしいことになりそうなのが目に見えているからこその反応です。
言論弾圧の怖さを見せつけられたビデオ映像でした。

日本はとりあえず言論の自由は保障されているはず...とここ数日、テレビで中国のニュースを見るたびに思ってしまいます。