べんりや日記

住まいのこと、情報発信!

段差解消機(リフト用)

2010-03-09 20:50:32 | バリアフリーを考える
中島町H邸の玄関に設置した車椅子用昇降機です
階段3段の段差45㎝を解消します


 スロープを設けるスペースがない場合・・・


車椅子にて玄関からアプローチをする場合、基礎の高さと床面を考慮すると概ね45㎝の段差解消が必要です。
健常者の場合は、玄関の上框が18㎝として、残りの30㎝弱を階段2段にて上り下りできるのですが、車椅子の場合は2㎝の段差でも引っかかってしまいます。
スロープを使う手もありますが、通路長さが必要となり、それだけの敷地に余裕がない場合は「段差解消機」を使うのが得策です。



車椅子に乗りながら、リフトによって昇ります


この昇降機によって地盤面から一気に1階床面まで上がることで、車椅子で玄関に入ることが容易になります。
電動昇降機の場合、昇降面のプレートの大きさは色々あるので、車椅子の大きさが予め分かっていれば、それに応じた大きさのものを選ぶ必要があります。

あまり大きい場合は、健常者用の通路部分が狭くなってしまいます。
中島町H邸では、通路幅を7尺(芯々212㎝、有効幅195㎝)とし、昇降機の幅が90センチ、残り105㎝が歩行者用通路となっています。
車椅子がスムーズに通れるように、サッシの開口部分と、昇降機を直線に並べて動線が最小限になるように配置しています。

玄関サッシも、1間用の引き違いサッシだと開口幅が狭いので、3枚戸とすることで、105㎝の開口幅で車椅子が入って、方向転換も余裕で出来る広さにしています。
ただし、3枚戸の場合は、断熱サッシが不可能なため、その外にサッシで囲って「風除室」とすることで断熱性を高めています。
風除室に入るサッシも3枚戸としているので、車椅子の通路としては十分な設計にしています。



風除室の入り口も3枚戸なので、
全開すれば105㎝程開くので
車椅子の出入りが容易です。




玄関とホールの段差も解消しておきます




玄関から居間への入り口は折戸となっているので、
全開すれば、車椅子の回転もスムーズです。



玄関サッシから玄関に入り、ホールに至るまで段差を極力抑えることで、車椅子で部屋へ楽に入る工夫もされています。
この辺りは、吉田町T邸にて経験済みです。
注意する点は、タイルと木部、上框の接点で、ここが直接タイル面に接していると水分を吸収してカビたり腐ったりしてシロアリの餌食になってしまうということ。
防水紙やフェルトを用いて縁を切る必要があり、コーキングにてシールして埃が入らないように仕上げます。

上框が平らになっていると、健常者でも入るのが楽ですが、靴を脱いだり履いたりするのにベンチがあると更に便利になります。

 昇降機設置の様子



部屋の床面と水平付近まで玄関土間を打ちます
コーンの置いてある部分はフタになっていて、
ここに昇降機の機械を入れます。


昇降機の入る部分は、土間よりも低くしておきます(ピット)
中島町H邸では5センチの深さでした。


ピット内の土間を打ち込んだ様子。
奥に電源の配線が見えます。
中央手前に水抜き穴があります。
ここに水が入るように土間に勾配がとってあります。
ポーチの下に開口がありますが、ここに機械が収納され、
上のフタから点検が出来るようになっています。


昇降機を設置する前にタイルを貼っておき、
機械の絡む場所だけタイルを抜いています。
タイルの目地に沿って機械を設置してから残ったタイルを貼ります。
車椅子は、実際に昇降機を使った場合に支障がないか確かめるために用意しました。



昇降機のベースの設置
かなり薄くなります。
土間の上にパッキンを置きながら高さを微調整しています。
土間と機械の間に水が溜まらないように、排水口から放射状に溝がほってあります。(土間コンクリートを打ち込んで半乾きの状態でコテで溝をつけました。)


昇降版の設置
タイルの目地に平行に機械を設置しています。
昇降版の下はジャバラにて覆われます。


点検口の中に、本体が収納されます。



遠隔操作用の手元スイッチの施工
このジャバラコードは、実は園芸用ホースの中に、4芯線を通した私の手製なのでした・・・
長いコードを収納するとき、コイル式ならば邪魔にならないとのアドバイスがあり、色々探し回ったのですが、何処にも無く、最終手段で自作する破目に・・・
4芯線とホースの内径はほぼ同じなので、ここに通すのは至難の業でした。まずホースの中に針金を通して、その針金に4芯線を付けて通したのですが、針金を通す工程で、ホースが曲がっていて、その摩擦でなかなか入らず、潤滑スプレーを吹き付けながらの作業で、滑ってホースから針金が全て抜けるという事態が何度かあり、

「辞めようか・・」

とか思ったりして、何とか通したのですが、針金が通っていも、今度は4芯線もぎりぎりのサイズなので、なかなか入らず、やはり潤滑スプレーをかけながらじわじわと通していったのでした。潤滑スプレーをかけると、やはり、すべるので、手から抜けてしまうことも何度かあり・・半日係でようやく線を通したのですが・・・
お客さんに

「色が気に入らない」

と言われたときには、ショックでした。

「色でも塗ってくれ・・・」

そういった、思い出の品でもあります。


車椅子を実際に乗せてみます


更に、実際に乗ってみて支障がないか調べます


機械の廻りの残ったタイルを貼ります。


こうして設置した昇降機は、乗り降りの段差も殆ど無く、スムーズに使うことができます。タイルも一気に貼らずに2工程にすることで、機械の位置との微妙な調整が可能です。
昇降機を一つ設置するのにも、細心の注意を払いながら施工しなければ、良いものは出来ません。


「バリアフリーを考える」へ・・
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外部スロープ

2010-03-09 20:02:41 | バリアフリーを考える
車椅子用のスロープの勾配は標準が1/12以上
理想は1/15以上です


中島町H邸でのスロープの例です。
玄関用の車椅子用段差解消機の使用もおすすめですが、こちらは寝室の掃き出し窓へ直接行き来ができる通路も設けています。
掃き出し窓のサッシの高さまでスロープで昇っていきます。

外部スロープとするため、コンクリートにて施工。斜面のスベリ止めに「刷毛引き仕上げ」としています。
雁木屋根として、雨の日でも使用ができるようになっていて、夏の日除けも兼ねています。
6尺程屋根が伸びているので、寝室に夏の日差しが入るのを防止し、冷房の効きも良いようです。




スロープと基礎の間には溝があります
溝は勾配が取ってあり、水が入っても出てくるようになっています




寝室のサッシの高さまでスロープを上げています



コンクリートのスロープと、木造本体の縁を切るために、20センチほど溝を空けています。これは、基礎内の通気を確保するために床下換気口を塞がないようにしているためです。
溝に入った水は、外に流れるように勾配がとってあり、その上に木製の蓋をして、間違って足を踏み入れて怪我をしない工夫がしてあります。



建物とスロープの間の溝を塞ぎます
まず、桧のコマの下に土台パッキンを敷いて置きます




その上に杉のスノコを貼って行きます




だいたい塞ぎ終わりました。


寝室から直接外部に出れるので、
晴れた日などは、ここから出て散歩をしているとか・・・



スロープの勾配は緩いほど上りやすく、基準法では1/12以上の勾配とされていますが、理想では1/15以上とりたいところです。(医療施設ではこちらを採用しています)

1/15の勾配ということは、40センチ上がるのに、

   40㎝×15=6m

通路の長さは6m必要ということです。
敷地に余裕がなければ、取れない長さです。

スロープを設置するバリアフリー住宅の設計は(建物の)床の高さを極力低く抑える努力が必要です。
あまり低くしてしまうと、床下通気が十分でなくなります。また、床下の点検も難しくなります。
基礎高さは最低でも30センチは確保したいところなので、概ね45センチが限界でしょう。スロープの長さは7m近くになります。

7mの通路を確保するために、間取りの工夫が必要になります。
敷地に余裕が無い場合は、踊り場を設けて折り返す必要も出てきます。車椅子が折り返す場合、最低でも1.5mは必要です。

通路幅も1.5mは取りたいところです。(この家の場合は1.8mとってあるので、90度曲がって部屋に入るのもスムーズに行えます)


何気ない、雁木のような通路なのですが、バリアフリーの実現のために様々な工夫が凝らしてあるのです。


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