住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

小上がり

2015-11-09 15:15:08 | 建築設計

世界の建築・インテリアを紹介しているウェブマガジンhomifyに「有楽の家」が紹介されております。

https://www.homify.jp/ideabooks/178384/

和室について日本の内外のデザイナーの作品についてのレポートです

今回のお話はその和室について

私の設計では小上がりの和室をよく作ります。

小上がりは一段高くなっているため、空間に変化が生まれます。床を高くした分、その床下を収納にする事もできる。障子やふすまといった建具を開放性のあるものを採用することにより、一つの大きな空間としても、仕切ることで個室のようにするなど、多目的に利用できる。また、小上がりの高さを調整することにより、椅子に座るかのように気軽に腰かける事が出来るし、その使い勝手から和洋ともに相性が良い

その「小上がり」について、当事務所の施工例を基にお話します。

 

(画像をクリックすると大きくなります)

今回、Homifyで紹介されたこの家は、居間の中に現れた水色の壁紙にラッピングされた箱の様なたたずまいの内部が3畳大の小上がりの和室になっております。建具は施主が以前のお宅で使っておりました雪見障子。8枚折戸の為、開放性を確保できました。この建具(支給品)は他の部分との調和と、細かな寸法と歪み(使用されたものはその使用状況の良し悪しにかかわらず多少の歪みや変形がある)に注意を払い使用に至りました。

折戸と引き戸を閉めますと、内部は土塗り壁の純和風な空間になります。和室を居間から向かって左側の金色の蜂を模った障子紙部分は仏壇置場になります。普段はすっきりと静かな場所に設置するため、柱ごと移動出来る壁?障子?にしました。(写真右側は襖を開けた状態)

小上がりスペース全体に言えることかもしれませんが、その使い勝手と空間の利用状況から、限られたスペースでの設置が多いので、収納方法を一工夫しなくてはなりません

「有楽の家」

TVや雑誌でご活躍のガ-デンデザイナ-の吉谷桂子さんのお宅は、2畳半+(堀)机のスペースの、洋風空間の中にある小上がりの畳スペース。二枚のふすま紙の素材は英国Farrow&Ball社製の壁紙で、その引き戸は2枚とも脇に引き込めるので、部屋全体を一体的に使用できます。このお宅は部屋の中は靴での生活をされてますので、生活の合間に腰かける長椅子のようにも使用されています。日本では「縁側」といったところでしょうか?庭に向かって言葉は適切ではないかもしれませんが、「掘りごたつ」の様な足を入れられる窪みと、それに合わせ横板を渡し、ちょうどテーブルと椅子の関係に近くし、庭を眺めながら書き物や作庭の構想を練るのにちょうど良い書斎スペースとなりました。また、畳に油圧ダンパーを内蔵し、床下収納にしています。

写真は以前、雑誌「ミセス」にご紹介いただいたもの。

「花と庭の家」

 

 

こちらはマンションのリフォームです。3畳大の和室です。写真の右側、の3枚引き戸の枠はあえて作らず、一本の面付柱(角に丸太の丸みがある)にして、壁からは離し、部屋の一体感を損なわないよう配慮した。引き戸を開けた状態では、あたかも床柱のようなたたずまいになります。ウイリアムモリスの花の壁紙を背景に面付柱がすっ-と立つ

こちらも床下収納になります。

「南大沢・南風の家」

 こちらは主に客間として使われておりますが、3畳大の和室+ベットルームです。小上がりは腰掛けた状態から、畳スペースへの移動は比較的楽です。このお宅でではないですが、私の高齢の母親の行動を見ていると、立った状態から和室に腰を下ろす(しゃがむ感じな)のが辛そうで、ゆっくりと、しかも何かに掴まらないと不安定な状態です。枠に手を置き、いったん小上がり腰かけくるりと回転し、畳に座るのは多少楽そうに見えます。このお宅では高齢者もいることから、手摺を加え、ステップを一段付加し、立ったままでも和室に入れるように配慮しました。小上がりに座ることを考えると高さはどうしても350~400㎜前後になり、一段での上り下りはきついからです。余談ですが、ベットルーム廻りの腰壁の境に三方手摺を設け、起床就寝時に配慮しました。

小上がりの和室、そもそも畳が必要か?という話になるかもしれませんが、座ったり寝転んだり、おむつ替えに使ったり、また寝室代わりにしたりと、たとえ3畳大、いや3畳大畳が使い勝手がとてもよいと思い、積極的に畳の導入をおすすめしています。

「K-white邸」