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シュリ

2012-03-25 07:11:44 | 映画短評
シュリ

このコーナーに久しぶりの書き込みです。


1999年 カン・ジェギュ監督

「シュリ」を久しぶりに見ました。見るたびに感動します。

「シュリ」は、私が好きな映画、10本の指に入ります。

1位は「デーヴ」、2位は「七人の侍」、次は何かな?  あとでゆっくり考えます。

初めて見た10数年前から、これまでに何度見たか分かりませんが、初回は特に驚きました。
完成度の高さ、エンタテイメント性、演技力、ストーリー、社会性など、「日本の映画よりすごい!」と思ったからです。というか、期待をよい意味で大きく裏切ったと言ってよいでしょう。
それまでの私は、韓国映画と香港映画の区別が曖昧でした。

大まかなストーリーはつぎのものです。


韓国の有能な諜報部員ユ・ジョンウォン(ハン・ソッキュ)とイ・ミョンヨン(キム・ユンジン)とは、結婚を控えた恋人です。
ユ・ジョンウォンの周囲では、謎の事件(殺人、テロ等)が頻発し、バックに北朝鮮の女スパイ、イ・バンビの存在が浮かび上がります。そのすごさは冒頭部に流れますが、007顔負けです。
ところが内部情報がことごとく漏れており、同僚のミョンヒョン(ソン・ガンホ)をも疑います。
その中で、イ・バンビの上官・北第八部隊長(チェ・ミンシク)は、イ・バンビらとともにテロを決行します。その舞台が、韓国と北朝鮮両国の首脳が列席するサッカー南北交流試合。
超強力な液体爆弾をめぐって、スパイ同士の息づまる駆け引きが繰り広げられます。


これくらいでやめておきましょう。

単純なアクション映画としてもおもしろいのですが、ラブストーリーとしても上質です。

さらに、南北朝鮮の問題が、日本映画にはない社会性がありあす。

北第八部隊長は、「北では子供が餓死しているのに、こっちではゲロはいている」
「この50年間、国のトップはなにもしていない。おまえらがハンバーガーやコーラを食べている間に北では子供が餓死している」
六か国協議の話もぶっ飛んでしまわないかと思えるほどの北への強烈なメッセージです。

ここで留意したいのは、新指導者である金 正恩は、おそらく、このシュリを見ていると思うのです。

韓国歴代観客動員数の1位から6位までの映画の中で、南北問題をテーマにしていない映画は3位の『友へ/チング』(カン・ジェギュ監督、2001年)のみです。

1位『ブラザーフッド』(カン・ジェギュ監督、2004年)、
2位『シルミド』(カン・ウソク監督、2004年)、
4位『Welcome to ドンマックゴール』(パク・ガンヒョン監督、2005年)、
5位『シュリ』(カン・ジェギュ監督、1999年)、
6位『JSA』(パク・チャンウック監督、2000年)は南北問題を素材にしています。

金 正恩は、おそらく、これらを見ることができる状況にあったのではないでしょうか。

最近攻撃的になっている北朝鮮を前に、今後もこうしたメッセージ性の強い映画を作ることが出来るのか、韓国映画界の今後も注目したいと思います。

日本では、昨年「太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-」「聯合艦隊司令長官 山本五十六」が公開されたように、ほぼ毎年のように戦争映画が作られています。

日本が戦争をテーマに取り上げるのと同様に、韓国社会も南北問題が重い十字架になっていることが映画の題材からわかります。

話が長くなりました。


さて、「シュリ」。

ここからは、ネタバレになりますので、ストーリーを知りたくない人は見ないでください。




最高の場面は、イ・ミョンヨンがユ・ジョンウォンに撃たれる場面。
恋人に撃たれるなんて、できすぎた筋書きですが、やっぱり悲しすぎます。
撃たれた直後のキム・ユンジンの演技は、特に秀逸です。



これ以後、留守番電話を聞き、感傷に浸る場面は涙なくしては見ることが出来ません。


前半、ややグロさにげっそりしたり、乱射が当たらなさすぎたり、韓国軍が弱すぎたり・・・と、マイナス点もあるのですが、それを引いても十分見応えがあります。

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