西澤眞蔵／ものづくり中部の革新者たちⅢ

2022-10-23 06:40:55 | ものづくり・まちづくり

ものづくり中部の革新者たちⅢ　より　西澤眞蔵を紹介します。

去る2022（令和４）年９月10日（土）に名古屋都市センター（金山南ビル内）　11階「まちづくり広場・企画展示コーナー」で行われた、第17回パネル展での学びを振り返ります。

ここから　http://csih.sakura.ne.jp/panerutenn.html

今回は、西澤眞蔵　心血を注ぐも前途なお遠し一枝下用水の開削に尽カー　

ものづくり中部の革新者たち Ⅲ
3.基盤づくり産業教育 (1)

西澤眞蔵　心血を注ぐも前途なお遠し一枝下用水の開削に尽カー

■実業家として
西澤眞蔵は、 1844 (弘化元)年、近江国愛知郡八木荘村野野目 (滋賀県愛知郡愛荘町)の、いわゆる近江商人の家に生まれた。
西澤は、家業を継ぎ、麻布や綿布を扱うなかで大阪・長崎に出店し、販路を拡大した。愛知県は綿布の仕入れ先であった。 1883(明治16)年、大阪銀行設立の発起人となり、製糸工場、洋服会社、雑貨商 (アメリカ・サンフランシスコに輸出)などの様々な事業を手がけた.

■枝下用水の開削
西澤は、豊田市南西部を灌漑する農業用水「枝下用水」の開削事業に尽力したことで知られる。
1887(明治20)1年、西澤は、名古屋の時田光介 (山口県出身)らとともに同事業に共同出資したが、資金面や濃尾地震などの災害で計画が難航するうちに他の出資者らが手を引き、西澤一人となった。苦しい運営のなか受益地内の有力者らの協力を得て工事を続行し、 1894 (明治27)年には枝下用水の主要開削当初の枝下用水路 (現在の豊田市朝日ヶ丘)出典: 「しだれ水」部分が完成したが、自己資金をすべて使い果たし、同年12月、偕楽園 (豊田市豊栄町で開拓を進めていた大農園の園長・堀内信に起業権を譲渡した。 1896年、西澤は再び起業者となったが、翌年3月1日、病のためその生涯を終えた。
枝下用水は豊田市越戸町内で矢作川から取水して、豊田市の南西部を中心とする約1,508ha (令和3年現在)をする農業用水である。水路の延長は、幹線支線合わせて約110km。枝下用水の開削は、 1876年 (明治9)頃から計画され、1883年に着工した。 1890年に現在の幹線と来用水にあたる部分が完成し、 1894年に主な水路が完成した。
当初は半官半民の事業であったが、県が工事から手を引き、1890年以後は民間事業として行われた。その開削により、1920年(大正9) までの間に、約1,200ha の土地が新たに開されたり畑から変換され、水田になった。

■水神になった西澤
豊田市平戸橋町にある「流後世」碑 (1899年建立)には、西下用水に投入した金額は「二十万円」と刻まれている。他の出資者らが手を引くなか、西澤がこの事業を続けたのは、国を富ませるという
明治期の思想とともに、「利益を社会に還元させる」という近江商人の由来の経営理念があったからとも言われている。
西澤が心血を注いだ枝下用水の開削によって、水田を中心とした約1,508ha (2021 (和3)年4月1日現在)に広がる地域が矢作川の豊かな水の恵みを得ている。受益者は、それぞれの地域で西澤をはじめ開削者を祀り、枝下用水の影響を建てて用水への感謝を今に伝えている。左上の西澤像は、金谷農事組合 (豊田市)での「西澤」法要で掛けられる肖像である。

(小西恭子)

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