日記

音楽教室のことや、その日に起きた出来事をご紹介します。

ノルウェイの森

2011-02-10 13:12:15 | Weblog
年末からずいぶん時間がかかりましたが、やっと「ノルウェイの森」を読み終えました。

主人公のワタナベと、彼を取り巻く環境。
彼の周りには常に「死」というものがつきまといます。
成人して、大人としての責任を自覚しようとしている多感な時期に、どうしてこれほどまでの
重苦しい事態が重なるのでしょう。
重苦しい日々を葛藤しながら生きるワタナベは、誠実さと思慮深さをもって歩き続けます。

生と死は対極にあるものではないという考え方。
生きるエネルギーを強く発する女の子に惹かれていく気持ち。
どうしても解決できない死んだ人への思い。

いろんなことが本当にリアルに描かれていて、村上春樹の想像力と観察眼に
あらためて敬服しました。

一番素直な感想は、「時々憎らしくなる人がいても、生きていてくれるだけで
ありがとうという気持ちになれた」ということでしょうか。

しかし、そんな気持ちになることを、疑わなくてはなりません。
「ありがとう」という肯定的な気持ちの裏には「こうしてほしい」「これはやめてほしい」という
負の感情が必ずくっついているからです。

心で思っていても伝わりません。
言葉にしたり文章にしたり、とにかく何らかの手段で伝えなければ、人には何もわかりません。
誰かの頭に自分の頭をくっつけて、今考えていることから言葉で表せないような微妙な感情まで
全部伝われば楽だろうなと思うことがあります。

きっと「ノルウェイの森」の悲劇のヒロイン直子も、そんなふうにできれば
だいぶ楽に生きていく道を選べたんじゃないかな?と思いました。


さて、次は女性の作家4人がヨーロッパを旅して書いた少し軽い物語を読もうと思います。
読書は楽しいです。


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