これだけ映画版と原作の辿る道に乖離があるのはめずらしい事でもないのか。
作者デイビッド・マレルはスタローンの映画は嫌っていない。
原作小説のランボーは凄絶に死ぬが、映画版は生き延びる。
作者はそのことについてランボー2の小説の前書きで感謝している。
映画はアクションに徹している。小説は男と男の一対一の戦いだ。
どちらも孤独を背負いどうにもならない運命的な出会いと不思議な心の交流。
でも生易しくない血が噴き出る暴力の交流。
そして山と森の容赦しない大自然の恐ろしさ。
不思議だ、殺し合わなければラブストーリーにも見えるような残酷な戦いと殺し合いの連続場面。
これは映画では描かれていない。アクションに絞っているから。
自分の弱さとの向き合い方。本当に強いとはなにか。死ぬとは。
こんなことを想像させる場面が畳みかけるようにやってくる。
デイヴィッド・マレルの筆力。確かな自然描写。文章のセリフの力強さ。美しさ。
だからこれは乱暴ではない。
むしろ、詩人ランボーの詩のごとく。地獄の「冬の」季節というところか。
いい小説を読んだ。