クリント・イーストウッドの素晴らしい終活映画だ。
原作本も読んだがそれとの違いを書くつもりもない。
ただこの映画は良かった。観て良かったと思える映画。
イーストウッドはこの映画を作って何を伝えたかったのかということ。
今、世の中では老いた芸能人の寂しい人生の行く末が蔓延している。
それをテレビで見てこの国では老いることが人生の終焉として辛く寂しいこととして私に訴えかけている。
老後の不安を煽りにあおるこの風潮。
ウンザリだと思っていた時に、この映画を観たら良いと思う。
人生の終焉を迎えつつあるこの成功者が私に訴えかけてくる。
老いることは素晴らしいことだ。死を迎えるその日まで味わい尽くせ。
楽しみ尽くせと。
そこで私はイーストウッドに言い返す。そりゃあんたは良いだろうよ。ハリウッドで俳優のみならず監督として間違いなく成功した。楽しい人生を約束されたようなもんだ。たくさんの女優とも浮名を流し尊敬も集めている。
しかも何より現役だということ。バラ色の老後人生だ。
そうしたら不思議なことが起こった。
物語が進行している中でイーストウッドは不貞腐れた私にこう言うのだ。
・・・・・そうじゃないんだよ坊主。
お城のような家と高級車と美女とかそういうものでは味わえないんだ。
この映画化権を40代の私が取得した時まだ時期早々と棚上げしていた。
原作の主人公が37歳の設定なのにだよ?
そして90も後半に差し掛かろうとしている私が今こそお前に見てなにか感じてもらいたいと思ったからだ。
肉体も思考力もなにもかも衰えていき死んでいくのが老いだ。
それが素晴らしいことじゃないとお前は思っているのならこの映画の私を見ながらもう一度考えてみてくれ。
その対話を画面越しにイーストウッドとした時に意味が分かったのだ。
ふふふ。