
音の響きからとても印象的だった名前です。ヒッチコック劇場は一時チープなテレビドラマの模倣に消費されていました。それだけ素材としてヨカッタんでしょう。

ティッピ・ヘドレンを主役に抜擢して、大ヒット。金髪フェチのこの巨匠が肉体関係をも迫って、次回作を餌にチラつけながらも、毅然と突っぱねたティッピはヒッチコックに飼い殺しにされ、「鳥」以降苦い水を飲まされ続けたそうです。契約と法律を逆手にとって制裁を加えたこの監督の変態的な一面を感じます。
ジェームス・エルロイの小説みたいな匂いが漂ってくるのが怖い。
人間性は関係ないのです。この世界=ハリウッドバビロンは。
才能と運だけで勝ち抜く特殊な活動写真界って、本当は生々しく毒々しくグロテスクな顔をしています。
いかがわしさが陰。きらびやかなスターの世界が陽。
陰と陽の世界。
ヒッチコックの映画は面白い。
「サイコ」はあの変態性が無ければ成功しなかったと思う。
斬新な映像マジックだって、陰と陽の体現だと思う。
グレース・ケリーもティッピ・ヘドレンもこの才気と狂気溢れる男はフィルムに閉じ込め監禁したのだ…幻想の世界。夢の世界。
しかし、そこまでだった。ハリウッドバビロンの王でも本物は手に入れられなかったのだ。夢はいつかは覚めるのだ。
ヒッチコックの葬儀に参加したティッピはインタビューで気丈に答えた、確かにキャリアを奪われたかもしれないが
私の人生そのものを奪われた訳じゃないわ。
カッコいいとはこのことだぜぇ~