※またまた昨日の続きのようになるけれど
祖父と祖母が始めた店は、私が生まれた時は移転していて、俗に云う駅裏と云う場所にあった。
未舗装ながらも片側1.5車線はある広い通りに面していて、風呂屋や歯医者に薬局や郵便局、酒屋や市場もある活気ある場所の一角に、祖母の店はあった。
店の奥には、台所や便所に風呂があり、その近くに祖母の部屋、叔母夫婦の部屋、そして廊下の突き当りに父母や私の暮らす部屋があった。
つまり三世代部屋別の同居と云うことだ。
私がしっかり歩けるようになった頃だから多分3歳頃だと思うが、気が向いた時しか相手にしてくれなかった父と部屋の中で相撲をとった。
敵う分けは無いけれど喜んで何回も挑んでいる内に、父に強く押されて仰向けにひっくり返り、頭の右後ろを柱の角に ゴンした。当然私は火の出るように泣いたし、もう父とは相撲をしないと決めた。
柱にぶつかった場所は 線状にハゲた。
数年後、母がそのハゲを見て「どうしてハゲたか知っている?」と訊いてきたので「お父さんと部屋の中で相撲をとっていて投げられ、柱にぶつかって そこがハゲになった」と云ったら「覚えているものなんだねぇ」と驚き
「何処の柱だかも知っているの?」と云うから「部屋に入って最初の右角にある柱」と詳しく説明したら絶句した。
私は得意になって「夜中にお父さんとお母さんが相撲しているのも見たことあるよ」と云ったら、近くにいた叔母が急に忙しそうにして茶の間から消えた。
「最初 喧嘩しているのかと思ったけれどお母さんは泣いていなかったから相撲だと思って安心してまた眠った」と云ったら、父は下を向き、お婆ちゃんは珍しく「バカ」と云う言葉を残して茶の間から出て行った。
今は分かる。喧嘩でも相撲でも無かったのだろうと云うことを。
ゴメンね、余計なことを言って・・・・・
でもそのハゲが残っている限り、私の記憶が消えることはない。