上橋菜穂子『物語ること、生きること』
著者が父親から竹刀を振り回していた中学生ぐらいの時に言われた言葉。
「~武士にとって、刀を抜くということは、そんな甘いものじゃなかった。チャンバラ映画ではすぐに刀を抜いて切り合っているけど、あんなのは嘘だ。おばあちゃんが言っていたものだ。
武士は、刀の鯉口をきったら、自分の命はそれまで、家族の命もそれまでと思うものだと。
刀は、抜いたら、必ず相手を殺さねば武道不覚悟。御家も断絶するかもしれない。そのくらい大きな、重いことだったんだ。~」
著者はこの言葉を覚えていて、作品では下記のように使った。
「カンバルではね、それを息子に渡す儀式のとき、父親がいう言葉があるんだよ。
剣の重みは、命の重み。その短剣は、そなたの生であり、死である。それを抜くときは、自分の命をその刃に託したものと覚悟せよ。」