「私は父も母も知らない。どこでいつ生まれたのか、聞いておりません」
「そりゃ、ひでえ」ササゴマが顔をしかめる。
「酷いということはない」カガンが首をふった。
「人間、何があるかといえば、これ我一人。ほかは、何もないものと同じ。余計なものがあるほど、むしろ重くなる」
「重くなる?」ササゴマが首を傾げる。
「身が重くなるように、心も重くなる、ということ」
「重いと、ダメなのか?」
「いいや、そうとばかりは言えん。重ければ、風に飛ばされない。押されても動かない、つまり安定してはいるかな」