著者名 :カビール・セガール
書籍名 :貨幣の「新」世界史
出版社 :ハヤカワ文庫
発刊日 :2018年10月15日
価 格 :1080円プラス税
ジャンル :世界史(お金)
読 日 :2019年7月7日
経 歴 :アメリカの電子決済サービス企業ファースト・データ企業戦略担当。元JPモルガン新興市場部門ヴァイスプレジデント。ダートマス大学、LSE卒業。ジャズミュージシャンで音楽プロデューサーでグラミー賞を2度受賞。大統領選挙戦のスピーチライターなども手掛ける。
構 成 :3部8章。1部:精神(なぜお金を使うのか)2部:身体(お金とは何か? お金の形態論)3部:魂(お金をどう使うべきか?)著者の問題意識は人間の未来がお金によって形成されていることをもっと知ってほしいとのこと。確かに。自分あるいは家族計画の未来を考える際にお金の算段も必ずと言っていいほど考えている。読んだところ、こんな流れだ。
著者は25か国を回り過去・現在・未来を考えた。まずはダーウィン種の起源のガラパゴスから。ここですべての生物はエネルギーを交換しあっている。食物連鎖もある意味そう。植物と昆虫の関係も。生物にとってエネルギーが貨幣とも言えることに気づく。動物だって余剰は困ったときに保存しておく。熊は冬を超えるためにお腹にエネルギーをためて冬をしのぐ。これも生き残るための行為。交換行為自体が生き残る機会が増す行為だから交換を行う。貨幣のルーツは物々交換または債務の流れで始まった。人類は、幸い、森から離れ、食料を求めて二足歩行になったときに余った手を使い、物を作ることを始める。道具は専門化を促す。専門化は分業を促す。分業はコミュニティネットワークを促す。そして、集団狩猟へ、そして農耕へと進化していく。手斧ははるか昔の120年万年前ごろのものが見つかったらしい。時代が近づくにつれて見つかった手斧の段々刃が薄くなっていくらしい。手斧が貨幣の役割も果たしていたのではという学者もいるそうだ。貨幣は、①価値尺度②交換③価値保存の役割・機能を持つと定義できる。ただ経済から離れて、価値の象徴としたほうが、より広い視点で貨幣を考えることができるという。物を作り始めて、表象的思考を手に入れることにつながる。表象的思考は、脳内で具体的なイメージを持つことである。都市計画等が旨く行くというのはまさに集団知がなせる業でしょうか。お金が社会で価値の象徴であることを共有している(さらに先ほどの①~③の3つを信頼しあっている)からこそ、価値の象徴、価値:重要なもの・貴重なものの象徴としての意味を持つ。金融危機が起こった時などは、国の経済施策より信頼がおける金(きん)に逃げたりするのもそのせいだ。原始通貨=金・銀・大麦等の他、代替通貨として地域通貨、マイル、ポイントカードと紹介され、決済、政治的な通貨供給量のコントロール、ビットコイン(通貨としてよりプロトコルとしての技術が評価されている)、クレジット決済、携帯決済、ペイパル等が紹介される。
お金=集団知が有効な社会でないとウォーキング・デッドのようなお金が機能せず、物々交換でしかやっていけない場合、特に初回交換時には血みどろの交渉が前提となってしまうことを考えると天災が起こっても機能できるセーフティネットやインフラはBCPならぬ国民生活復旧計画のメンタルセットが必要と思われます。また、国民生活安定のための道州制あるいは昔の藩今の都道府県レベルに権限を委譲したほうがうまくいくのでしょうか。おらが村根性の出し合いになってうまくいかない可能性も考えられるし、結局優秀な人が官僚や政治家になりたいという国にしていかないとお金だろうが金(きん)だろうがインターネットだろうが、携帯決済だろうが、ペイパルだろうが、終末やカオスになったらひどいことになるのは色々な映画や伊坂さんの『終末のフール』でも描かれておりますね。