この映画で私にとって、もうひとつ興味深いシーンがあった。
渡辺美佐子はヒロイン田中裕子の亡くなった母の
女学校時代の友達で小説家。
彼女の夫は上田耕一扮する元英文学者で、認知症である。
立派な書斎で蔵書に囲まれて、いかにも学者にふさわしい容貌だが、
一人で自宅を出れば、戻る事が出来ないような状態に症状が進んでいる。
彼の頭の中を映像で表現しようとする場面があった。
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時計を見ると「今、午前10:00」
妻のいない事に気がつき、名前を呼びながら家の中を探しはじめる。
いない・・・時計を見る・・・「午後3:00」
いない・・・時計を見る・・・「正午」
と・・・食卓の上にお味噌汁のお椀がひとつ・・・
いない・・・時計を見る・・・「9:00」
事態を掌握できない不安でパニックになり、家を飛び出してしまう。
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私は、なんとなく認知症の人の不安な気持ちが
少し理解できたような気がした。
記憶がだんだん薄れていく不安。
時間の経過も、日にちの感覚も噛み合わなくなっていく。
きっとそういう自分でも理解できない気持ちのせいで
鬱状態になるのかと思った。
筒井康隆の「敵」というのを、1、2年前に読みました。確か、使える(書けるだけでなく発音できる)文字が一つずつ消えていく老いた男...と云う世界。極端なデフォルメ。
20年ほど前、彼、筒井康隆は私の愛読書リストの上位にありました。しばらく離れていてて、この作品は久々でした。
本棚に「三丁目の夕日」が並んでいます。
寝るときに今でも時々読みます。
だから映画はどうしようかな・と悩みますね。
映画を見て「ビッグ コミック...」と気付いたのは、散髪屋の待ち時間の雑誌にあったのをチラチラ見ていたからです。読んだのは「ゴルゴ13」や「釣りバカ...」で、この作品は「チラチラ見」でした。映画は「関係あるけど別物」と割り切ってご覧になっては...