腕時計。

しばらく(と言うには長い期間だったかもしれない)使っていなかったバッグを、久しぶりに開けてみたら、腕時計が入っていた。

バッグにしまったまま忘れていたんだ。

15年前の6月、私の誕生日に、大切な友達が贈ってくれた腕時計。
｢私だと思っていつも身につけていてね。なんて言ったら気持ち悪いかな？」と言って彼女は笑った。

彼女が亡くなったのは、その僅か半年後だった。

私はその時計を、肌身離さずつけていた時期もあったし、逆に辛くなって見えない所にしまったりしていた時期もあった。そんな繰り返しで、やがてバッグにしまってそのままになってしまってい

たのだ。

今日、時計屋さんに持って行き、電池とベルトを交換してもらったら、息を吹き返したように、でも、何もなかったかのように、時計は時を刻み始めた。

｢私だと思って」と言った彼女の笑顔がよみがえり、もういない彼女と、復活した時計との対比が切なくて、胸がいっぱい。