近頃、西の空に輝いている二つの星はなんですかという問い合わせを時々受ける。明るいほうが金星、暗いほうが木星。しかし暗いといってもマイナス2等、全天一の輝星マイナス1.4等のシリウスを凌駕する明るさだ。
天文の世界では、こんな風にいくつかの星が近づいて見える様子をランデブーと言う。木星の英語名「ジュピター」はラテン語で「父なるゼウス」が訛ったものだそうだ。ゼウスならば大神ではないか。しかし、どう見てもこの光景はビーナスのほうが偉そうに見える。何しろ金星はマイナス4.3等で、木星よりはるかに明るい。きっとゼウスは部下のビーナスの買い物か何かに付き合わされているのだ。その証拠にビーナスのほうがはるかに足が速い。1日でずいぶん位置を変えてしまう。この二つの星が最も近づいたのは実は昨日。しかし地区の寄り合いを終えて空を見上げた時、二人は西の山に沈んだ後だった。今日撮らなければランデブーが終わってしまう。とは言え仕事の後でみかんの丘に上がっていては間に合わない。そこでやむなく我が家の庭から望遠レンズで狙ってみた。ピントを合わせようとカメラのモニターを拡大すると、木星の衛星も見えた。ああ、やっぱりこっちがジュピターだ。
うちの西には大きな古墳がある。この写真を撮った後まもなく、二人は古墳に茂る木立の向こうに消えていった。