今日は午後4時過ぎまで仕事だった。僕の職場からは外が見えない。だから建物から出て驚いた。青空だ。それもかなりの透明度。え、写真が撮れるのかな。どうせまた日が暮れたら曇るのだろう。ここ最近ずっとそうだ。でもそうかな。いやこの空はいつもと違うぞ。はやる気持ちを抑えながら家に帰り、撮影機材が一式入った手作りのカメラバッグを車に積んでみかんの丘を目指した。
丘に到着した時は5時半を回っていた。もう大工仕事は出来ない。観測デッキは風が強かったためかずいぶん埃が入っていた。望遠鏡の掃除をした後外気に慣らすためにデッキの屋根を少し開け、外に出る。昨日のまとまった雨で、丘の植物が勢いを得ていた。あの食べられる雑草セミズオトゥもはびこっている。みかんの実は直径1センチほどに膨らんでいた。その実の向こうに八日月が浮かんでいる。幽月と呼ぶには存在感が有りすぎる。もう6時を過ぎていた。
この月が沈むのは夜半だ。それまでは空が明るすぎて淡い星は撮影できない。だとすれば今夜狙うのはこの月だな。そう決めてデッキに戻った。