昨年吹き荒れた強風で、2トンもある竹取庵の屋根が一瞬だが2センチほど持ち上げられた。ストッパーが無かったら飛んで行ってしまったかも知れない。その後一見無事に見えた観測デッキだったが、屋根裏にくっ付く様に直立させていた口径45センチの反射望遠鏡かぐや姫が、持ち上がった後落ちてきた屋根に叩かれてわずかに歪んだようだ。どうしても光軸が合わない。
姫がここに鎮座して6年。長年の取り回しのお蔭でトラスの塗装はあちこちで剥がれ、トップリングも凹んでいた。独自設計が自慢の主鏡セルも一部不具合が出ている。それに加えて強風によるダメージだ。そこで意を決してかぐや姫を改造することにした。赤道儀化への第一歩でもある。
と言う訳で、とりあえず耳軸上部の半分を外すことにした。外す時に判ったのは、鏡筒の前後3か所に取り付けている遮光リングのアクリル板が風化している事だった。かぐや姫が陽に曝されることはめったにない。風化は潮風と経年が原因だろう。
ここまで作業して空を見ると予想通り雲が西から押し寄せていた。頑張っても星空は望めない。明日は仕事だし、明るいうちに帰ろうか。デッキの妻を閉めて丘を後にした。ふもとの農地では麦秋が終わって田植えが進んでいる。仕事にかまけているうちに季節がまた一コマ風景を変えていた。