梅雨が明けたら星の写真を撮ると宣言したものの、どうもすっきりした星空に出会えない。わずか数日チャンスが有ったが、それを確認したのは仕事帰りの遅い夜だった。その多忙に拍車をかけていたのが、毎年のことだが山の中の小さな天文教室だ。
岡山県吉備中央町。かつて彗星の探索家として世界に名を馳せた本田実さんが晩年観測所を置いた場所だ。縁あって僕はその観測所「星尋山荘」の管理人の1人に名を連ねている。仕事が忙しいのと僕は僕で自分の天文台「竹取庵」を持っているため星尋山荘にはなかなか足が運べない。その代わり地元への星の恩返しとしてこの天文教室をやらせてもらっている。過疎地だけに地区の子供は年々少なくなっているが、教室への参加者は公民館の人たちのご苦労も有ってあまり減らない。そしてその子たちが毎年育っていくのを見てきた。
教室前半の天文工作は毎年趣向を凝らしてきた。今度はなんだろうとみんな楽しみにしてくれている。今日みんなに作ってもらったのは「七夕の走馬燈」だ。基本になるセットは「メイトウサイエンス」と言うところから仕入れてみた。それにネットで見た無料イラスト(ECデザイン)の織り姫彦星をベースにオリジナルのカササギの橋、天の川の波や星を加えて走馬灯の心臓部としている。出来上がりはこんな感じだ。
(この画像は織り姫と彦星を合成しています。本当はこんなに近くはありません。下のURLをクリックすると動画が見られます。)
予想外だったが、参加者にとって一番難しかったのは外枠を切り出すところのようだ。僕が20分も有れば楽勝と思っていたのに、優に1時間半掛かってしまった。なので、僕を加えて3人の管理人がサポートしてようやく12人全員が工作を終了。終わったら4時半を過ぎていた。
みんないったん帰宅して、午後7時からはすぐ裏の小学校校庭に場所を移して観望会を行う。これには工作教室に参加しなかった地区の大人や家族連れもたくさん来てくれた。夜は雷雨という予報で、近くでゴロゴロ音がしていたにもかかわらず、何とか雲間に月と木星、土星が見え隠れし、みんなとても喜んでくれた。星を追尾できる僕の望遠鏡では何人もスマホで月を撮影していた。あぁ、今年も責任を終えたと言う実感が沸く。
午後9時を回ったころ機材を車に乗せて帰路に就いた。毎年ながら暗く長い夜道をたどりながら考える。さて、来年は何を作ってもらおうか。
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