雨ざらしのままで心配はしていたが、今日丘に上がってみると竹取庵の南に張り出していたテラスが崩れていた。
このテラスは竹取庵を作り始めて3年ほどたった2003年の夏に、みかんの丘の持ち主のおじさんがここに作ってほしいと頼んだものだった。もちろん手間もお金も少しずつ掛かったが、テラスはその年の12月に出来上がり、おじさんはその下に古いソファーを持ちこんで、時折そこでたばこをくゆらせていた。満足そうな笑顔を今でも忘れない。僕はそのテラスの上に小さな望遠鏡を据えて、おじさんとおばさんが星だけでなく景色も眺められるようにしておいた。
その、言わばおじさんと僕を繋ぐプラットフォームのようなテラスが崩れた。
材料に使っていた丸柱は元々古い電柱で、クレオソートが圧縮注入されている。しかし桁は普通の材木だ。数年に一度クレオソートを塗り続けていたが、最近劣化が目に見えて進んでいた。よく見ると、テラスの板が接続していた竹取庵本体の桁にまで傷みが及んでいる。
仕方無く応急処置ではなく完全に取り外すことに決めた。何か月も掛けて組み上げたテラスも壊すのはわずか4時間。おじさんとの大切な思い出が一つ消えてしまった。仕方が無いか。思えば17年間も雨ざらしでよく耐えたものだ。おじさんも許してくれるだろう。
廃材はみかん畑の一角に置く。今日は穏やかだが空は曇っていた。もし晴れていても星を見る気にはなれない。次に来た時には床下を片付けて、竹取庵本体の桁の補修をしなくては。
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