映画「蝉しぐれ」を観てきました。
結論から言うと、とても素敵な映画でした。
10月8日にも書きましたが、小説「蝉しぐれ」は思い入れの深い作品でしたので見に行くか行くまいかちょっと躊躇しましたが・・・、やっぱり行ってきました。(^^ゞ
映画を見に行く前に、原作と比較して見るのはやめよう、と心に決めて観に行きました。小説には小説の楽しみ方があるし、映画には映画でしか表現できないものがあるのだから、素直にまっすぐに「映画」を楽しもうと映画館に向かいました。
まず映画の冒頭、吹雪の庄内が映ったときには、ちょっと鳥肌が立ちました。ここに住む人々にとっては何でもないただの吹雪の風景なのですが、私もかつてはそうだったように遠く離れて暮らしている庄内出身者にとっては、この何でもない吹雪の風景こそ庄内なんだと思えたからです。
その後、ふく がヤマカガシに噛まれるシーンから始まり、文四郎と祭りに出かけるシーン、逸平や与之助との友情のシーン、格闘シーンなどなど、短い時間の中で小説の盛りだくさんの内容を伝えようとしている苦労が見えて、「シナリオは原作をもっと省略して、ゆったりとした流れにした方が良いのでは?」とも思いましたが、名場面の多い小説で、それが全て繋がっていますからしょうがないかな、とも思ったりして・・・。
この映画では特に感動した場面が二つありました。その場面は、小説でも名場面と言われている部分なのですが、映画でしか表現できない空気感というものを感じました。
ひとつは、切腹させられた父を文四郎が大八車で引いていくときに、きつい坂道で ふく が現れて、涙を堪えながら無言で必死に大八車を押しているときのふくの表情です。
そしてもう一つは、物語の最後、ふく が文四郎と逢い話しを終えた後に、今まで「おふくどの」と呼んでいた文四郎が堪えきれずに「ふく」と呼んだ時のふく(木村佳乃さん)の表情です。じっと文四郎を見つめた大きな目に、少しずつ少しずつ涙が溜まっていき、その表情がまるで20年間想い続けた時間を結晶させているようで、とても美しいと感じました。
映画でのこの二つの場面は、実は原作通りでは無いのです。
原作通りでは無い場面で感動できたのですから、これは黒土三男さんの「蝉しぐれ」であり、そして映画「蝉しぐれ」として心に残る良い作品だと思うのです。
しかし、感動した二つの場面はどちらも全く台詞が無く、俳優の表情だけの場面なのですが、その表情が本当に素晴らしかったなぁ。今でも余韻が残っています。
区分するのはあまり好きではありませんが、イメージ的には「たそがれ清兵衛」や「隠し剣、鬼の爪」が芥川賞とすると、「蝉しぐれ」は直木賞・・・、と言ったところでしょうか。(^^ゞ
庄内の風景をとてもきれいに捉えているし、この作品のDVDは買いですね。発売になるのが今から楽しみです。(^o^)
DVD発売予定日は2006/04/14。ただいま予約受付中です。
→ 蝉しぐれ プレミアム・エディション
(参考)
「蝉しぐれ」公式HP → http://www.semishigure.jp/
「たそがれ清兵衛」公式HP → http://www.shochiku.co.jp/seibei/
つるおか旅読本HP → http://www.tsuruokakanko.com/index.html
海坂藩研究所HP → http://www.e-yamagata.com/unasaka/index.htm
庄内空港HP → http://www.shonai-airport.co.jp/
鶴岡市HP → http://www.city.tsuruoka.yamagata.jp/