山形県遊佐町吉出字懐ノ内□□
水の山「鳥海山」の麓の町 遊佐町は、町中のいたるところに湧き水が湧き出ていますが(里山だけで約500カ所の湧泉地があるそうです)、その中でも名水中の名水として知れわたり、遠方からも水汲みの人々が集う場所がこの「胴腹滝」(どうっぱらのたき)です。
通常、滝とは地上を流れてきた川が崖下に落下する様を言いますが、胴腹滝は岩の裂け目から地上にこつ然と水が湧いてその下に落下するのです。
まるで身体の胴腹(どうっぱら)から湧き出るような滝、という意味からこの名前が付けられたと言われているように、子安大聖不動明王を祀る社の両脇、岩の裂け目から左右に大量の湧き水が滝となって湧き流れています。
滝の流れの下の方には、その滝の足元から直接水を引いた水汲み場が設けてあり、「カルシウム、マグネシウム等の硬度が11mg/リットルと低く、淡白で癖がない。蒸発残留物が40~50mg/リットルと少なく、不純物を含まない極めて良好な水」が、一年中凍ることなく湧きだし、年間を通して水汲みに来る人たちが絶えません。
ちなみに、この二つの滝の水は、味が違うとよく言われます。左の滝は冷たくコーヒーに合い、右の滝はまろやかな清水で日本茶に合うのだそうで、通の人々は飲み分けて利用しているようです。
また、身体の「どうっぱら」から清水をどんどん生み出す様から、安産の神としても崇められており、季節によっては滝下の流れの中や子安地蔵の前に安産祈願の人たちがお供えしたお花をよく見かけたりします。
胴腹滝の豊かで良質な水は下流域の人々の暮らしを支え、信仰の対象にもなってきました。
美味しい水を求めてやってくる人々、安産を願い祈りにやってくる人々、人間と自然が美しく調和した風景、そして何よりも、かけがえのない恵みをもたらすこの滝は、これからの世代にそのまま引き継がなければならない大切な財産だと思うのです。
水汲み場の看板から
『神の瀧のおいしい水』
「遥か神代よりこの地に恵みをもたらしてきた鳥海山には、鳥海山大物忌神と月山神 両神の不思議で魅力的な伝説が多く伝えられています。ここ胴腹滝の水の神秘もその一つです。鳥海山は日本有数の高山でありながら、岳人に水筒要らずと言われるほど水質の良い泉や流れの豊富な山です。その八合目を源とし、岩中の間隙を幾日も辿りながら、なぜか源泉の冷たさをそのままに、優れたミネラルバランスの水が此処に流れ出し続けているのです。子安大聖の謂われの通り、人の身体に自然と吸収されるこの瀧水は自然本来の水の味と香り、そして心の潤いを思い出させてくれます。」
『胴腹瀧不動堂』
「そもそも胴腹瀧と申し奉るは、人の身躰一切を守り賜う故を以って胴腹瀧と唱え奉る。この瀧は、往古より子安大聖不動明王として胴より始めて腹部の守護するなり。」
胴腹滝は、山形県里山環境保全地域第1号に指定されました。
向かって左側の滝です。
この水は冷たく、コーヒーに合うそうです。
向かって右側の滝です。
この水はまろやかな清水で日本茶に合うのだそうです。
射し込んだ陽の光に輝き、
まるで宝石が流れて行くようにきれいです。
滝水は一気に下り降りて行きます。
鳥海山という神様がくれた、命の水です。
安産祈願に供えた花でしょうか。
美しい祈りの風景です。
この道を鳥海山目指して何処までも真っ直ぐ行くと
胴腹滝に出逢えます。
遊佐町はいたるところに水が湧いています。