きざし
山形県酒田市中牧田(旧松山町)□□
2月も終わりを迎え、ここ庄内でもやっと春の兆しが漂いはじめました。
と、いっても、どんどん暖かくなってきているわけではなく、所謂“三寒四温”の言葉通り、寒くなったり温かくなったりを繰り返して徐々に暖かい日が勝ってきているといった感じです。
この時期の空は、厚く暗い雲に覆われていた冬空とは違い、雲が割れて陽が射すことが多くなってきます。
偏西風は相変わらず強いものの、冬へと向かうときのそれとは明らかに違い、どことなく希望のかおりがする明るい風です。
陽光は確実に雪を融かし、雪解けの川の水面を揺らして、大地を暖め、暗く憂鬱な冬雲は、偏西風にちぎられながら東の空にグングンと流されていきます。
時折、思いついたように降る名残雪も地面を濡らすだけのものでしかなく、それはむしろ春を呼び寄せる兆しにしか感じられません。
この時期は、そんなふうに冬と春とがせめぎ合いを見せながら過ぎる季節です。
季節の移り変わりを真っ先に知るのが、空です。
長らく空を支配していた冬雲は、次の季節の陽光に解かれ、日に日に力を失い消え去ろうとしています。
スイッチが入った春の兆しはその歩みを止めることは無く、その“兆し”はやがて生きものたちが目を覚ます“萌し”へと変わってゆくのです。
二つの季節が出合う空。 冬と春との“行き合いの空”です。
最上川も雪解けの水で溢れます。
遠く米沢から300㎞近い旅を経て日本海へと流れて行きます。
雪解けの冷たい水面に陽射しが輝いてとても綺麗です。
光の音色―優しい時間のなかで 米美知子写真集 米 美知子 文一総合出版 このアイテムの詳細を見る |