蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造ムルンギンの親族体系 7

2021年06月04日 | 小説
(2021年6月4日)前回(6月2日)まで表題を主題にして6回を投稿している。すべての回でパワーポイント図(Jpeg化)で解説するが、今回、一歩に踏み出しを変えて文章と図をまじえる形にします。主題は限定交換(echange restreint)と一般化交換(echange generalise)の意味と両者の差異。
<le mariage s’y conforme toujours a la regle : si un homme de A peut epouser une femme de B, un homme de B peut epouser une femme de A. Il y a donc reciprocite entre les sexes au sein des classes. (本書205頁)
訳:そこ(2の集団が小規模サブセクションであろうとより大きな半族集団であろうと)において、婚姻形体は規則に定められている。もしA集団の男がB集団の女と婚姻出来るのであれば、Bの男はAの女と婚姻できる。A.B両集団には性の分布で相互性を取れる。

<Nous appellons les systemes presentant ce caractere , quel que soit le nonbre de classes, des systemes restreints, indiquant par la que ces systemes ne peuvent faire fonctionner des mechanismes de reciprocite qu’entre des partenaires dont le nombre est deux, ou un ,ultiple de deux>(同)
訳:こうした機能を有する交換体系を「限定交換」と呼ぶ事としたい。階層の数の多寡はあろうが、この体系は2あるいはその乗数の集団間で働くを意味する。
<Il resulte immediatement qu’un systeme a deux moities exogamiques doit etre toujours un systeme d’echange restreint>外婚半族を2抱える集団はおのずと限定交換の婚姻体系を持つ。
この体系をこれまでの作図から振り返ってみよう。

図1:2の外婚集団間の女交換。

コレがまさに限定交換。下は拡大。


図2:Murngin族の婚姻体系を示した。外婚の2集団(半族、YiritchaとDua)はそれぞれ4の(Ngarit,Bulainなど)持ち、計8 サブセクションが同族を形成する。


NgaritはBuralang続くBulainはBalangなども同じく同列で階層(classe)をなし、婚姻はこの階層内で仕切られる。Nagritの男は必ずBuralangの女と、その逆方向と合わさり内婚の階層セクションを形成する。ここには限定交換の原理が働く。嫁入り前の娘をはずして、Nagritの性分布ははNagrit系統の男とBuralang系の女で構成されるの意味で、相互性とはBuralangはその逆である事を言う。

<Mais il existe une seconde possibilite : si un homme A epouse une femme B, un homme B epouse une femme C.Dans ce cas, le lien entre les classe s’exprime , a la fois, par le mariage et la descendance. (206頁)もう一つの可能性が指摘される。Aの男がB女と結婚する、B男はC女と結婚する。この場合は階層のつながりは婚姻と子孫を通じてとなる。
共時的婚姻のみならず、経時のつながり、すなわちAの子孫はBになりBの子孫はCとなる(女系である場合)と言っている。
<Nous proposons d’appeler les systemes qui realisent cette formule systemes d’echange generalise,この公式を具現している交換体系を「一般化交換」と呼ぶを提案する。

 
写真は4の支族を想定して女の交換を一般化した図です。左右の矢印が逆方向なのはAがBに女を贈るか、BがAに贈るかの違いです(206頁)。


図はMurngin族の子の交換を表しています。A1の子はd2に贈られ、d2は子をa2にa2はd1にd1はa1に、これで1の周回が閉じる。この交換が一般化交換となります。またa1に限らずどのサブセクションも子を贈らなければ子を貰えない、上の写真の周回交換(oriente)と同じ原理です。

まとめ:限定交換対一般化交換。
とある部族、移動中に知らない部族と出逢った。下調べに立ち入るとなんと年頃の娘が。族長「ウチの息子の嫁にあの娘を貰いたい」別族長「ホイキタ、しかしウチにも息子がいる、オマエンとこ娘をくれるか」「別嬪が一人いるぜ」まとまって、これが限定交換。制度化して2の半族の部族となる。
聡明さが名高い族長、嫁を貰って娘で返す、コレ何となく閉鎖的だな。そうだコウしようで族長達を集め「オレんとこが嫁を貰ったら、別の支族に娘をあげる。コレを順繰りに繰り返して娘をあげるといずれ嫁が貰える制度にしたい」全員の賛成を取った。一般化交換の嚆矢となる世界史的快事でした。

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