蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

ムルンギン族体系の続き 一般化交換 1

2021年06月22日 | 小説
(2021年6月22日)写真1はムルンギンのノーマル婚姻の流れです。サブセクションの名と略称(Ngaritがa1、Balangはb1などが読める)Hommeは男Femmeは女、Enfantは子。第一行の意味はa1のNgarit男はb1Balang女を嫁にとり成した子はd2Bangardiに貰われるを表します。




写真の仕組みをパワーポイントで図式化した。

a1b1子がd2に移動するを赤の弧の破線で表す(パワーポイント図)。以下同様で限定交換の婚姻と子のやりとりの図にて、同族サブセクションの動きと親族のあり方を見せています。

たすき掛け交換(下図)がMurngin体系の本質、じつは一般化交換である、その事実を暴く切り口となります。


下の図、右に目を移してください。


標準と選択的が交互に現れる場合を図式化した、オレンジ線が選択的の流れ、対して青線は標準の系統を表す。これはレヴィストロースの想定です。何を根拠にこの交互性をこの様でモデル化したかに彼の説明がない。類推するに元の民族誌資料(Warner等)から探り出したと思う。
またこの図には破綻がない、両の手順が阻害なく並立している。この仕組みをしてすき掛けは「間に合わせ」ではない、交互(altere)交換は確立した規則として実践されていると受け止めよう。
ムルンギン族の親族関係の骨格と言える8サブセクション、4セクション、男系半族、女系半族を下図3(既出)にて表示しています(既出、過去ブログにて詳細説明を入れています)。これは標準交換でも選択的交換でも、そして交互入れ替えの仕組みでもこの骨格を形成します。(女の交換でたすき掛けにしても中央分離帯線を越さない、子の交換では必ず中央線を越すに その由来が求められる)



簡潔にしてなお複雑、多次元での対称性を抱える親族体系です。しかしながら美学的見地を取ることを避けるレヴィストロースは、構造主義の視点から以下に厳しく、乾燥気味の評価をくだす。

<Ces particularites s’expliquent si on accepte de voir dans le system Murngin une structure primitivement asymetrique , et ulterieurement reproduite(218頁)
訳:この特殊性は、ムルンギンの親族体系はかつての非対称的仕組みを後に再構築したと理解してこそ明確になる。
彼の推察回路を探ると;
<derriere le systeme explicite (double systeme d’echange restreint a huit classe). ce que nous appelons plus haut le systeme implicite ( le systeme d’echage generalise a quatre classe), qui constitue pour nous la lois du systme Murngin(215頁)
訳:覚知出来る(explicite)体系(8の階層=サブセクション=と2重限定交換)の背後に、すでに述べているが覚知出来ない(implicite)体系が潜む、それは4の階層(classes)による一般化交換の体系であり、そちらがMurngin体系の法則を形作っている。
アボリジニに普及している巡回型一般化交換がMurngin体系の原理でもあると主張する根拠ともなります。続く、

投稿の番外:クイズの回答。
昨日投稿は頭の体操でした



この仕組がいかにして交差いとこ婚を保証するのか、皆様に考えていただきたいとの提言でした。。回答コメのツブテ嵐と心配したが1件の返信もなかった。易しすぎたか。下のパワーポイント図を見てくれ。夜に床を求めず卓に座し箸を取らず2日で考えた部族民の答え~がこれだ!



右説明のとおりだが、解説を次回投稿(24日予定)の末尾に。よろしく皆様の再来を待つ。


コメント
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