(2022年12月19日)親族の基本構造Les structures élémentaires de la parenté 、婚姻制度を説明しているさなかのレヴィストロースが« univoque » なる聞き慣れない語を、突然 といっても当てはまるほど唐突に、持ち出した(207頁)。 « Les paires sont univoques au lieu de d’être réciproques. C’est-à- dire qu’elles unissent seulement les hommes d’une des sections avec les femmes de l’autre section »
訳:対はunivoqueの関係にある、相互的(réciproque)ではない。と云うことは、全セクションの中の1セクションの男は、別のセクションの女を娶とる(その仕組みを安堵している)。
この文節でオーストラリア先住民のMurngin族の嫁交換の仕組み、とくにその運動の様態をレヴィストロースは解説していた。同族は2部に分かれる4のセクションそれぞれが嫁(同族は母系居住、matri-localであるので実際は婿)を順繰りに贈り貰い、この交換運動が族内を周回し、起点になって嫁を贈ったセクションが嫁を貰って一巡が終わる。一のセクションは必ず対峙する相方に嫁を贈り、その相方がさらに奥の相方に贈る。運動は一方向、この流れをしてレヴィストロースは « univoque » と定義し、部族民渡来部は「片務性」と訳した。
この訳は運動として交換を捉えているから、理解しやすいと(勝手に)自負しているのだが、幾分かの「訳しすぎ」的わだかまりも感ずる。辞書を開けばそのような意味は読み取れない。この理由はレヴィストロースが「行為」の意味づけに用いているに対して、辞書では言語の「意味の作用」として捉えているからと推察した。
理屈を探っても意味がわからない。まずは言語としての意味合いをしっかり理解して、次に交換運動での作用を追求せむと感じ入った。

嫁の交換でPaires(対)の下流側に責務が発生する仕組みの図

対は2のセクションの交換。AはBに贈る。対での交換運動は集結する。新たにBがCへ贈る。この運動様態を「片務的」と訳した。対比される語 « Biunivoque » 双片務性、及び反義語 « Equivoque » 不明瞭。これらと合わせこの語義と含意、そして意義と思想…の観点から« univoque »を考えてみよう。
スタンダード辞書では「同義で数個に適用される」とあるが、分からない。別辞書を紐解くと;
Un terme ou un concept appliqué dans le même sens à des choses différentes. Ainsi : « animal », appliqué au poisson et chien ; « chien » appliqué à un boxer et à un setter. 訳:言葉あるいは観念、異なる物事を一つの語で当てはめる。例えば「動物」は魚にも犬にも当たる。「犬」はセッターにもボクサーにも当たる。
仏語では魚も「動物」、魚と犬を切り取る同義は動物となる。2の動物を集合する用い方を « Univoque » とする。もう一つ;
Une relation dans laquelle un terme entraine toujours le même corrélatif ; s’il y a réciprocité la relation est biunivoque. (引用はいずれもDictionnaire de la langue philo. Puf)
一つの語が言い指す相方に常に同じ連関を巻き込む関係。もし相互性(réciproque)が認められれば « bi-univoque » とされる。
Univoque : une relation dans laquelle chaque antécédant détermine un seul conséquent. Lorsque cette relation est réciproque, chaque conséquent n’ayant qu’un seul antécédent, on la dit bi-univoque. (Dictionnaire de philo. Nathan)
上流側が下流側の反応を唯一として決められる関係。下流が、唯一の相方上流に対峙している場合は相互 « bi-univoque » とされる。
3の説明を合体してMurnginの婚姻に応用すると:
1 上流が与え下流が受け取る。
2 上流側には運動に伴う責務は発生しない
3 下流側には決まった責務が発生する。その責務は常に一定している。
その責務とは何か? 続く
訳:対はunivoqueの関係にある、相互的(réciproque)ではない。と云うことは、全セクションの中の1セクションの男は、別のセクションの女を娶とる(その仕組みを安堵している)。
この文節でオーストラリア先住民のMurngin族の嫁交換の仕組み、とくにその運動の様態をレヴィストロースは解説していた。同族は2部に分かれる4のセクションそれぞれが嫁(同族は母系居住、matri-localであるので実際は婿)を順繰りに贈り貰い、この交換運動が族内を周回し、起点になって嫁を贈ったセクションが嫁を貰って一巡が終わる。一のセクションは必ず対峙する相方に嫁を贈り、その相方がさらに奥の相方に贈る。運動は一方向、この流れをしてレヴィストロースは « univoque » と定義し、部族民渡来部は「片務性」と訳した。
この訳は運動として交換を捉えているから、理解しやすいと(勝手に)自負しているのだが、幾分かの「訳しすぎ」的わだかまりも感ずる。辞書を開けばそのような意味は読み取れない。この理由はレヴィストロースが「行為」の意味づけに用いているに対して、辞書では言語の「意味の作用」として捉えているからと推察した。
理屈を探っても意味がわからない。まずは言語としての意味合いをしっかり理解して、次に交換運動での作用を追求せむと感じ入った。

嫁の交換でPaires(対)の下流側に責務が発生する仕組みの図

対は2のセクションの交換。AはBに贈る。対での交換運動は集結する。新たにBがCへ贈る。この運動様態を「片務的」と訳した。対比される語 « Biunivoque » 双片務性、及び反義語 « Equivoque » 不明瞭。これらと合わせこの語義と含意、そして意義と思想…の観点から« univoque »を考えてみよう。
スタンダード辞書では「同義で数個に適用される」とあるが、分からない。別辞書を紐解くと;
Un terme ou un concept appliqué dans le même sens à des choses différentes. Ainsi : « animal », appliqué au poisson et chien ; « chien » appliqué à un boxer et à un setter. 訳:言葉あるいは観念、異なる物事を一つの語で当てはめる。例えば「動物」は魚にも犬にも当たる。「犬」はセッターにもボクサーにも当たる。
仏語では魚も「動物」、魚と犬を切り取る同義は動物となる。2の動物を集合する用い方を « Univoque » とする。もう一つ;
Une relation dans laquelle un terme entraine toujours le même corrélatif ; s’il y a réciprocité la relation est biunivoque. (引用はいずれもDictionnaire de la langue philo. Puf)
一つの語が言い指す相方に常に同じ連関を巻き込む関係。もし相互性(réciproque)が認められれば « bi-univoque » とされる。
Univoque : une relation dans laquelle chaque antécédant détermine un seul conséquent. Lorsque cette relation est réciproque, chaque conséquent n’ayant qu’un seul antécédent, on la dit bi-univoque. (Dictionnaire de philo. Nathan)
上流側が下流側の反応を唯一として決められる関係。下流が、唯一の相方上流に対峙している場合は相互 « bi-univoque » とされる。
3の説明を合体してMurnginの婚姻に応用すると:
1 上流が与え下流が受け取る。
2 上流側には運動に伴う責務は発生しない
3 下流側には決まった責務が発生する。その責務は常に一定している。
その責務とは何か? 続く