(2022年3月18日)Jacques Lacan(ジャック・ラカン、哲学精神分析、1901~81年パリ)に取り組んでいます(状況の仔細は文末追記に)。セミナー第一作、二作、六作をネット販売で購入。内容確認のためそれぞれのtable目次に目を通しました。
第二作(Le moi dans la théorie de Freud et dans la technique de la psychanalyse,フロイトの精神分析技法における「私」の扱い)に興味深い内容(III章)を見つけ出しました。章題はL’univers symboliqueシンボル化の宇宙。副題Dialogues sur Lévi-Straussとあります。39から53頁までは14頁の分量、短い。多くの方が「ラカン解釈は難しい」と評しているので、この章の「ツマミ読み」から入ればラカンの理解に半歩一歩が近づくか。狙いはラカンを読むにLévi-Straussを脇本として控えてもらう、おのずと理解が早い。こんなコスイ計算を先に立てた魂胆であります。
この手口は、レヴィストロースの力を借りてラカンを探る、ラカン大学を裏口入学せむとする姦計です。これが大正解でした。ドヤ顔(幾分かを許せ)の成果を脇に置いて、本章を紹介します。その底流は;
文頭<Comment pouvez-vous attacher tellement d’importance au fait que Lévi-Strauss fasse intervenir dans son langage des mots comme compensation> (本書40頁)レヴィストロースがcompensation代償なる語を自身の文脈に潜り込ませている事実を、どれほどに重要かをあなた達は説明できるだろうか。これに始まり
<Après Lévi-Strauss on a l’impression qu’on ne peut plus employer les notion de culture et de nature. Il les détruit>(参加者Octave Mannoni精神分析医1899~1989パリの発言、52頁)レヴィストロースが出てからは人は文化と自然を語れなくなった。レヴィストロースはことごとくそれを破壊した。
この文末に至るまで、おおよそ全の行句に彼の影が重苦しくのし掛かっている(小筆感想)章でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/5a/7b/3887c7b62cbd84a0b6fdd1c1ad5270cd_s.jpg)
ジャックラカン(ネットから)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/7b/3887c7b62cbd84a0b6fdd1c1ad5270cd.jpg)
内容は;
ラカン著作を紐解いた方にはお分かりですが、実際のセミナー(初期には勤務するサントアンヌ病院の教室、のちに高等師範学校校長の要請その講義室)での講話を活字化しており、あわせて11巻のセミナー叢書として構成される。
第一回セミナーから速記タイピスト(sténotype)を用意していた。それらを草稿としてJacques-Alain Miller(精神分析医、1944年シャルトーラカン女婿)の校閲をへて刊行された。文の流れは特定課題をとり上げ、参加する若手の精神分析医の理解を尋ね、質問指摘など採り上げてのちラカンから注釈あるいは訂正が開陳される。言い回しは口語であるから軽いノリで終始する。主語にça、cela、ceciなど学術系文章では見かけない語が出てくる。仏語では論文をDissertation形式で書き下すとする。主語を繰り返す場合にはil、elle、lequel、laquelleなど(関係)代名詞で表され、性と数の突合せで特定できる。この文調であれば理解できるかの保証は無いが、文脈は掴める(これまで取り上げてきたレヴィストロースの書体がそれである)。ラカンを読み始めて若干の違和が生ずる。
軽いノリに大家風の断定、独善も感じられる。プラトンの「対話篇」を意識しているわけで、本人もプラトン、ソクラテスに言及している。
口語であるも迂遠高尚な思考を展開しているから、軽く読み進めるとグサリ、理解を途絶する比喩(多くは換喩)が挟まれている。この言い換えの様がトンデモナイ方向に飛ぶから分かりにくい。ラカンが難しいとは換喩の攻略に手こずるに尽きる。Dissertation 調にまとめればより理解が深まるはずだなんて妄想する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/fa/4558eec3a0dcfb9e4c077334c1eb5a88.jpg)
本書、セミナーIII
さてセミナー風プラトン対話流で採り上げられる課題は;
1 ネパール、チベットなどの辺境での嬰児殺しの風習、対象は女児。その代償は人口の男女比の歪さ。この風習に対し「代償compensation=前出」を説明として用いるレヴィストロースに異議を定ずる参加者に、ラカンが私見を披露する。するとそれは明らかに「代償」なのである、まったくもってレヴィストロース思考を再現できる。
2 因果律(causalité)と究極律(finalité)
3 シンボル化機能(fonction symbolique)
4 個と集団は「全く同一」ラカンからの指摘に対するレヴィストロースの返答
5 エディプスコンプレックスに対するレヴィストロースの返答
6 近親相姦(の禁止律)に対する精神分析からの解釈
など盛りだくさん。順を追ってこれらの解説をしていきます。次回はそれら解説の前に、全体をとおしてチョー驚きの感想を述べたい。3点あって;
1 嬰児殺しの風習(前述)には社会へ代償が用意される。別の言い回しで「君たち、頑張って女児を殺したよね。これが褒美だよ」。人道など無視したあっけらかん、乾燥しきった解釈にレヴィストロースとラカンが一致している。
2 (構造主義から)神を追い出したら裏口からマスクを被った神が忍び込んできたーと怯えるレヴィストロース。
3 心理分析にも先験(transcendantal、カントの概念)がある。それがFonction symbolique。
次回(3月21日)をお楽しみに。(2022年3月18日、19日加筆あり)
追:ラカンに取り組むとした部族民的背景とは彼こそが、20世紀のフランス思想界においてレヴィストロースに比肩できる哲学者ではないかと直感したからです。実は幾人かのフランス語圏の思想家を探った、固有名詞は出さないが言語系哲学、啓蒙哲学系など著書を取り寄せたが、レヴィストロースと比較すると思考回路が浅い(と感じた)。浅いとは理解にすぐに至り、その内容にしては「ミーハー的思考奈落に嵌る」を感じさせる。ラカンで3年を食いつなげるかな(蕃神)。
追の補遺:部族民の最終投稿はサッカーの無回転シュート考でした(2月23日~3月2日)おかげさまでスゴック読者の接近が多い(としておきます)。空気の壁と後ろのキャビティの理論は大谷選手(MLBエンジェルス)の決め球、打者コロシのスプリットの威力も説明できます。速度135キロ、回転数800。MLB平均では回転数は2500ほど。ナックルを別にしてこれほどの低回転であればキャビティが絶対に発生している。ホームベース上でストンと落ちる球筋の説明でした。
第二作(Le moi dans la théorie de Freud et dans la technique de la psychanalyse,フロイトの精神分析技法における「私」の扱い)に興味深い内容(III章)を見つけ出しました。章題はL’univers symboliqueシンボル化の宇宙。副題Dialogues sur Lévi-Straussとあります。39から53頁までは14頁の分量、短い。多くの方が「ラカン解釈は難しい」と評しているので、この章の「ツマミ読み」から入ればラカンの理解に半歩一歩が近づくか。狙いはラカンを読むにLévi-Straussを脇本として控えてもらう、おのずと理解が早い。こんなコスイ計算を先に立てた魂胆であります。
この手口は、レヴィストロースの力を借りてラカンを探る、ラカン大学を裏口入学せむとする姦計です。これが大正解でした。ドヤ顔(幾分かを許せ)の成果を脇に置いて、本章を紹介します。その底流は;
文頭<Comment pouvez-vous attacher tellement d’importance au fait que Lévi-Strauss fasse intervenir dans son langage des mots comme compensation> (本書40頁)レヴィストロースがcompensation代償なる語を自身の文脈に潜り込ませている事実を、どれほどに重要かをあなた達は説明できるだろうか。これに始まり
<Après Lévi-Strauss on a l’impression qu’on ne peut plus employer les notion de culture et de nature. Il les détruit>(参加者Octave Mannoni精神分析医1899~1989パリの発言、52頁)レヴィストロースが出てからは人は文化と自然を語れなくなった。レヴィストロースはことごとくそれを破壊した。
この文末に至るまで、おおよそ全の行句に彼の影が重苦しくのし掛かっている(小筆感想)章でした。
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ジャックラカン(ネットから)
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内容は;
ラカン著作を紐解いた方にはお分かりですが、実際のセミナー(初期には勤務するサントアンヌ病院の教室、のちに高等師範学校校長の要請その講義室)での講話を活字化しており、あわせて11巻のセミナー叢書として構成される。
第一回セミナーから速記タイピスト(sténotype)を用意していた。それらを草稿としてJacques-Alain Miller(精神分析医、1944年シャルトーラカン女婿)の校閲をへて刊行された。文の流れは特定課題をとり上げ、参加する若手の精神分析医の理解を尋ね、質問指摘など採り上げてのちラカンから注釈あるいは訂正が開陳される。言い回しは口語であるから軽いノリで終始する。主語にça、cela、ceciなど学術系文章では見かけない語が出てくる。仏語では論文をDissertation形式で書き下すとする。主語を繰り返す場合にはil、elle、lequel、laquelleなど(関係)代名詞で表され、性と数の突合せで特定できる。この文調であれば理解できるかの保証は無いが、文脈は掴める(これまで取り上げてきたレヴィストロースの書体がそれである)。ラカンを読み始めて若干の違和が生ずる。
軽いノリに大家風の断定、独善も感じられる。プラトンの「対話篇」を意識しているわけで、本人もプラトン、ソクラテスに言及している。
口語であるも迂遠高尚な思考を展開しているから、軽く読み進めるとグサリ、理解を途絶する比喩(多くは換喩)が挟まれている。この言い換えの様がトンデモナイ方向に飛ぶから分かりにくい。ラカンが難しいとは換喩の攻略に手こずるに尽きる。Dissertation 調にまとめればより理解が深まるはずだなんて妄想する。
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本書、セミナーIII
さてセミナー風プラトン対話流で採り上げられる課題は;
1 ネパール、チベットなどの辺境での嬰児殺しの風習、対象は女児。その代償は人口の男女比の歪さ。この風習に対し「代償compensation=前出」を説明として用いるレヴィストロースに異議を定ずる参加者に、ラカンが私見を披露する。するとそれは明らかに「代償」なのである、まったくもってレヴィストロース思考を再現できる。
2 因果律(causalité)と究極律(finalité)
3 シンボル化機能(fonction symbolique)
4 個と集団は「全く同一」ラカンからの指摘に対するレヴィストロースの返答
5 エディプスコンプレックスに対するレヴィストロースの返答
6 近親相姦(の禁止律)に対する精神分析からの解釈
など盛りだくさん。順を追ってこれらの解説をしていきます。次回はそれら解説の前に、全体をとおしてチョー驚きの感想を述べたい。3点あって;
1 嬰児殺しの風習(前述)には社会へ代償が用意される。別の言い回しで「君たち、頑張って女児を殺したよね。これが褒美だよ」。人道など無視したあっけらかん、乾燥しきった解釈にレヴィストロースとラカンが一致している。
2 (構造主義から)神を追い出したら裏口からマスクを被った神が忍び込んできたーと怯えるレヴィストロース。
3 心理分析にも先験(transcendantal、カントの概念)がある。それがFonction symbolique。
次回(3月21日)をお楽しみに。(2022年3月18日、19日加筆あり)
追:ラカンに取り組むとした部族民的背景とは彼こそが、20世紀のフランス思想界においてレヴィストロースに比肩できる哲学者ではないかと直感したからです。実は幾人かのフランス語圏の思想家を探った、固有名詞は出さないが言語系哲学、啓蒙哲学系など著書を取り寄せたが、レヴィストロースと比較すると思考回路が浅い(と感じた)。浅いとは理解にすぐに至り、その内容にしては「ミーハー的思考奈落に嵌る」を感じさせる。ラカンで3年を食いつなげるかな(蕃神)。
追の補遺:部族民の最終投稿はサッカーの無回転シュート考でした(2月23日~3月2日)おかげさまでスゴック読者の接近が多い(としておきます)。空気の壁と後ろのキャビティの理論は大谷選手(MLBエンジェルス)の決め球、打者コロシのスプリットの威力も説明できます。速度135キロ、回転数800。MLB平均では回転数は2500ほど。ナックルを別にしてこれほどの低回転であればキャビティが絶対に発生している。ホームベース上でストンと落ちる球筋の説明でした。
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