2019年11月5日)
本ブログ初回投稿(10月31日)にて紹介したKlamath族の神話M529、M530aはCurtis(Edward 1869~1953年、Klamath民族誌写真を残す) 、Stern(Theodore 著作KlamathTribeを残す)、Gestchet(ネット検索できず)氏の採取であるが、その長さと相まって語り手記憶の不確かさから前後の関連など不明であった。とある老齢の女語り部の口述から、両の神話を統合する長大な物語としてのまとまりが1955年に明らかとなり、かつLetkawash(ヒーロー・Aishishイシスの母親)の焼身自殺にいたる道筋が明らかとなった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0e/74/25493c266d21cf56220bed46493f8e4a_s.jpg)
写真:民族誌家写真家のEdwardCurtis。ネットから採取。
<La geste de Aishish , dont Gestchet, Curtis et Stern n’ont recuilli que des fraguements, était apparue vers 1955, miraculeusement preservee dans la mémoire d’une informatice>(41頁)一人の女語り部に奇跡的(miraculeusement)残されていたとレヴィストロースは表現している。
M538 Klamath族、geste de Aishishイシスの冒険 (42~45頁)
M529,530で語られていない部分を紹介する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/74/25493c266d21cf56220bed46493f8e4a.jpg)
Curtis拡大写真。
幾人かの子を持つ女。
娘の一人はさほど遠くはない村に嫁いだ。しかし何かにつけては実家に戻る。一番下の弟は美少年と知られるから母は外には滅多なことで外には出さず、家の中でも地下の穴蔵に住まわせていた。姉の狙いはこの弟であった。
嫁ぎ先に戻る姉に弟が供をすることになった。太陽は中空にかかる、今出立して夕前には到着する行程であるから、母は同行を許した。しかし何故か日がとても早く暮れてしまった(別バージョンでは太陽に早く隠れろと姉が脅す)。野の窪みに二人は宿る。寝入った弟の脇に姉が滑り込む。<La femme vint se glisser pres de son frere endormi. Il s’eveilla et fut choque de la trouver contre lui ((Quleelfole ! Vouloir devenir l’epouse de son propre frere !))>
<女は身をすべらし弟は目覚めた。姉を己の上に見て、ただならぬ衝撃を受けた。なんと愚かな行い、血を分けた汝の弟の妻になろうとは。
姉は寝入り、太い幹を身代わりに置き弟は逃げ出した。この出来事をつぶさに聞く母は大惨事を予兆しおののく。姉の目覚めは昼下がりとなった(早く隠れろと命じた分、翌日にも太陽周期は速まっていた)。
愛しき弟のつもりで抱いた幹が真っ赤な偽り、憤怒に染まる身を走らせた。村中の屋に火を放ち、兄弟達と妻のすべてが死んだ。ただ独り生き残った母は、嫁の一人のSturnelle(ヒガシマキバドリ、鳴き声の良さで知られる)の死骸を探り、腹を割って胎児を取り出した。双子、男と女の子であった。祖母は女の子を男子の背に埋め込み、成長した男子に「前屈みで自身の影を見てはならない、矢を空に向けてはならない」ときつく戒めた。
己身の異常に薄々気づいた子を鳥(pluvier kildirムナグロ)が「空に矢を放て」とそそのかした。矢は真っ逆さまに落ちて背に当たり、二人は分かれた。分身だった妹を、妹も兄を初めて見た。
狩りでる時も妹は兄から離れず質問を続けて兄を悩ます。((Qui sommes-nous ? Pourquoi n’avons-nous pas ni père ni mère ? Qu’a donc notre grand-mere a pleure sans cesse ?))(42頁)私たちって誰なの ?何故、父も母もいないの、おばあちゃんは毎日泣いている、いったい何故?
妹「何でも知っている太陽に聞いてみよう」しかし、彼らの問いを太陽は無視する。妹は矢を取って太陽を射た。やっと太陽が真実を語った。お前達を孤児に貶めた者は今、水中に潜むと。
兄妹は教えられた沼に夜の漁を仕掛ける。<Nuit après nuit ils raporterent du poisson et des loiseuax d’eau en quantite. Enfin ,ils entendirent le cri de la meurtriere ((gocho gocho gochdjip)) La grand-mere l’entendit et pressenterait qu’un jour ,en dechargeant le poisson elle trouverait la tete coupee de sa fille dans le panier.(43頁)
毎夜、魚と水鳥を篭に一杯に満たし二人は戻る。ある夜、殺人者の鳴き声ゴッコゴッコ…を聞いた。その鳴き声は祖母も耳にした。「篭の魚を取り込みで娘の首を見つけてしまう、そんな日が来るに違いない」不吉な予兆に苛まれた。祖母は殺人娘を愛していたのだ。
二人は祖母から逃げる。(竈間の灰に穴を穿って逃げ道としたが、什器の諸々に「誰にも教えてはならぬ」と命じた。しかし錐(alene)には伝え漏れてしまった。案の定祖母の問いつめに錐は逃げ道を教えた。錐への申し付け忘れと秘密の露呈は広く新大陸神話に登場する)
兄は矢を林に見失う。妹に探し出すよう乞う。妹はこの問い「私はあなたの誰なの」に答えてと切り返す。<Elle refusa a moins qu’il ne precisat a sa satisfaction quel était leur lien de parente. ((Tu es ma sœur ?―Non)) 兄の返事は妹だろう。違うわ。返答は叔母、母、いとこ…続くけれど妹からーNonが返される。親族関係の言い回しは、それを口に出すまいと兄が残しておいた、一つの間柄しかもはや残されない。Epouse伴侶を答えてしまった兄に妹のーOuiそうよ、がやっと出た。以来、<bienque frere et sœur, ils vecurent comme des époux>兄妹なれ夫婦として過ごした。
祖母は追う。彼らが遺棄した小屋の竈灰が丸く凹んでいる。身ごもった腹が灰を窪ませた、祖母は孫二人の起こる可くして成った結末を知った。
子は生まれた。兄は森に入った。断食と潔斎で精霊を呼び加護を祈るためである。しかし熊に変身した祖母に喰われた。祖母は孫娘に会いに来た。その意図を先に孫娘が察知して真っ赤に焼けた石棒を祖母の肛門に突き刺した。遺骸を焼くために火を熾した。
ここからM529(女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ一人の魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった…)が続」く。そしてM530 (イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した...)につながる。
イシスの復讐さを受け、全ての心臓を燃やされた(Curtis版ではパイプ)俗神Kmukamchは地上に樹脂の熱雨を降らせる。イシスと家族は助かるものの村人の全滅でM538神話は終わる。
このM538が本巻の基準神話としてこの後も取り上げられる。
投稿子は本文を読み進み、この解析に2の視点を取るべきと提案する。その1着目点を近親姦の罪と罰に限定する 2に神話のschemeスキーム全体の主張の比較である。いずれの解析もレヴィストロースが用いた手法であり、この神話とM1(神話学4巻の基準神話)との関連、伝播の証左を見つけるとする目的である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0c/55/9959e6bfd0b6545a9e385acae7284a0c_s.jpg)
図:神話イシスの冒険の近親姦図(本書47頁)=は近親姦が成就された。注目点は祖母に、姉弟にも=が。拡大による解説は次回7日。
「裸の男HommeNu」を読む3の了。次回投稿は7日を予定。
本ブログ初回投稿(10月31日)にて紹介したKlamath族の神話M529、M530aはCurtis(Edward 1869~1953年、Klamath民族誌写真を残す) 、Stern(Theodore 著作KlamathTribeを残す)、Gestchet(ネット検索できず)氏の採取であるが、その長さと相まって語り手記憶の不確かさから前後の関連など不明であった。とある老齢の女語り部の口述から、両の神話を統合する長大な物語としてのまとまりが1955年に明らかとなり、かつLetkawash(ヒーロー・Aishishイシスの母親)の焼身自殺にいたる道筋が明らかとなった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/0e/74/25493c266d21cf56220bed46493f8e4a_s.jpg)
写真:民族誌家写真家のEdwardCurtis。ネットから採取。
<La geste de Aishish , dont Gestchet, Curtis et Stern n’ont recuilli que des fraguements, était apparue vers 1955, miraculeusement preservee dans la mémoire d’une informatice>(41頁)一人の女語り部に奇跡的(miraculeusement)残されていたとレヴィストロースは表現している。
M538 Klamath族、geste de Aishishイシスの冒険 (42~45頁)
M529,530で語られていない部分を紹介する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/74/25493c266d21cf56220bed46493f8e4a.jpg)
Curtis拡大写真。
幾人かの子を持つ女。
娘の一人はさほど遠くはない村に嫁いだ。しかし何かにつけては実家に戻る。一番下の弟は美少年と知られるから母は外には滅多なことで外には出さず、家の中でも地下の穴蔵に住まわせていた。姉の狙いはこの弟であった。
嫁ぎ先に戻る姉に弟が供をすることになった。太陽は中空にかかる、今出立して夕前には到着する行程であるから、母は同行を許した。しかし何故か日がとても早く暮れてしまった(別バージョンでは太陽に早く隠れろと姉が脅す)。野の窪みに二人は宿る。寝入った弟の脇に姉が滑り込む。<La femme vint se glisser pres de son frere endormi. Il s’eveilla et fut choque de la trouver contre lui ((Quleelfole ! Vouloir devenir l’epouse de son propre frere !))>
<女は身をすべらし弟は目覚めた。姉を己の上に見て、ただならぬ衝撃を受けた。なんと愚かな行い、血を分けた汝の弟の妻になろうとは。
姉は寝入り、太い幹を身代わりに置き弟は逃げ出した。この出来事をつぶさに聞く母は大惨事を予兆しおののく。姉の目覚めは昼下がりとなった(早く隠れろと命じた分、翌日にも太陽周期は速まっていた)。
愛しき弟のつもりで抱いた幹が真っ赤な偽り、憤怒に染まる身を走らせた。村中の屋に火を放ち、兄弟達と妻のすべてが死んだ。ただ独り生き残った母は、嫁の一人のSturnelle(ヒガシマキバドリ、鳴き声の良さで知られる)の死骸を探り、腹を割って胎児を取り出した。双子、男と女の子であった。祖母は女の子を男子の背に埋め込み、成長した男子に「前屈みで自身の影を見てはならない、矢を空に向けてはならない」ときつく戒めた。
己身の異常に薄々気づいた子を鳥(pluvier kildirムナグロ)が「空に矢を放て」とそそのかした。矢は真っ逆さまに落ちて背に当たり、二人は分かれた。分身だった妹を、妹も兄を初めて見た。
狩りでる時も妹は兄から離れず質問を続けて兄を悩ます。((Qui sommes-nous ? Pourquoi n’avons-nous pas ni père ni mère ? Qu’a donc notre grand-mere a pleure sans cesse ?))(42頁)私たちって誰なの ?何故、父も母もいないの、おばあちゃんは毎日泣いている、いったい何故?
妹「何でも知っている太陽に聞いてみよう」しかし、彼らの問いを太陽は無視する。妹は矢を取って太陽を射た。やっと太陽が真実を語った。お前達を孤児に貶めた者は今、水中に潜むと。
兄妹は教えられた沼に夜の漁を仕掛ける。<Nuit après nuit ils raporterent du poisson et des loiseuax d’eau en quantite. Enfin ,ils entendirent le cri de la meurtriere ((gocho gocho gochdjip)) La grand-mere l’entendit et pressenterait qu’un jour ,en dechargeant le poisson elle trouverait la tete coupee de sa fille dans le panier.(43頁)
毎夜、魚と水鳥を篭に一杯に満たし二人は戻る。ある夜、殺人者の鳴き声ゴッコゴッコ…を聞いた。その鳴き声は祖母も耳にした。「篭の魚を取り込みで娘の首を見つけてしまう、そんな日が来るに違いない」不吉な予兆に苛まれた。祖母は殺人娘を愛していたのだ。
二人は祖母から逃げる。(竈間の灰に穴を穿って逃げ道としたが、什器の諸々に「誰にも教えてはならぬ」と命じた。しかし錐(alene)には伝え漏れてしまった。案の定祖母の問いつめに錐は逃げ道を教えた。錐への申し付け忘れと秘密の露呈は広く新大陸神話に登場する)
兄は矢を林に見失う。妹に探し出すよう乞う。妹はこの問い「私はあなたの誰なの」に答えてと切り返す。<Elle refusa a moins qu’il ne precisat a sa satisfaction quel était leur lien de parente. ((Tu es ma sœur ?―Non)) 兄の返事は妹だろう。違うわ。返答は叔母、母、いとこ…続くけれど妹からーNonが返される。親族関係の言い回しは、それを口に出すまいと兄が残しておいた、一つの間柄しかもはや残されない。Epouse伴侶を答えてしまった兄に妹のーOuiそうよ、がやっと出た。以来、<bienque frere et sœur, ils vecurent comme des époux>兄妹なれ夫婦として過ごした。
祖母は追う。彼らが遺棄した小屋の竈灰が丸く凹んでいる。身ごもった腹が灰を窪ませた、祖母は孫二人の起こる可くして成った結末を知った。
子は生まれた。兄は森に入った。断食と潔斎で精霊を呼び加護を祈るためである。しかし熊に変身した祖母に喰われた。祖母は孫娘に会いに来た。その意図を先に孫娘が察知して真っ赤に焼けた石棒を祖母の肛門に突き刺した。遺骸を焼くために火を熾した。
ここからM529(女Letkakawashは子を背に負い、燃えさかる薪火の前に立った。因縁浅からぬ一人の魔女の死骸を焼かむと熾した業火であった…)が続」く。そしてM530 (イシスは複数の妻を持つ。妻の一人にKmu…が懸想しイシスを村から放逐しようと画策した...)につながる。
イシスの復讐さを受け、全ての心臓を燃やされた(Curtis版ではパイプ)俗神Kmukamchは地上に樹脂の熱雨を降らせる。イシスと家族は助かるものの村人の全滅でM538神話は終わる。
このM538が本巻の基準神話としてこの後も取り上げられる。
投稿子は本文を読み進み、この解析に2の視点を取るべきと提案する。その1着目点を近親姦の罪と罰に限定する 2に神話のschemeスキーム全体の主張の比較である。いずれの解析もレヴィストロースが用いた手法であり、この神話とM1(神話学4巻の基準神話)との関連、伝播の証左を見つけるとする目的である。
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図:神話イシスの冒険の近親姦図(本書47頁)=は近親姦が成就された。注目点は祖母に、姉弟にも=が。拡大による解説は次回7日。
「裸の男HommeNu」を読む3の了。次回投稿は7日を予定。
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