桜楓図小柄笄二所 中川一匠


① 桜楓図小柄笄二所 銘 音なし川辺一匠作

② 桜楓図鐔 銘 杉岡一拳(花押)
後藤一乗一門でも一琴と並ぶ上手が中川一匠(いっしょう:1829~1876)である。一匠は、津山松平家に仕えていた金工中川家の勝継の子で、藩命によって一乗の門人となった。Photo①の小柄笄の二所物は、先に紹介した一秀の小柄と同様に桜に楓の取り合わせの図。銀地に平象嵌と毛彫の手法。平象嵌は色合いの異なる金と素銅で、金の真砂象嵌も加えている。明るい銀の色合いは春の朧なる空気感を想わせて桜を表現する上でも効果的であり、微細な石目地が魅力的。美しさを追究した作品である。一匠の活躍期は幕末から明治初期で、他の金工と同様に新たな金工芸術模索の時代の一人である。
Photo②は同じ一乗門下の杉岡一拳(いっけん)の鐔。鉄地を高彫とし、春秋の風景画としている。桜と川瀬の取り合わせで、吉野、あるいは吉野の雅よ京に移した嵐山が知られている。楓と川瀬の組み合わせは古歌「千早ふる神代もきかず竜田川、から紅に水くぐるとは」で良く知られているところで、画題としても間々みられる。この鐔は高彫に金銀の象嵌、川は銀、金真砂象嵌を散すことにより、春はほころび始めた草の芽の鮮やかな様子を、秋は吹き寄せられた枯葉の様子表現している。



① 桜楓図小柄笄二所 銘 音なし川辺一匠作


② 桜楓図鐔 銘 杉岡一拳(花押)
後藤一乗一門でも一琴と並ぶ上手が中川一匠(いっしょう:1829~1876)である。一匠は、津山松平家に仕えていた金工中川家の勝継の子で、藩命によって一乗の門人となった。Photo①の小柄笄の二所物は、先に紹介した一秀の小柄と同様に桜に楓の取り合わせの図。銀地に平象嵌と毛彫の手法。平象嵌は色合いの異なる金と素銅で、金の真砂象嵌も加えている。明るい銀の色合いは春の朧なる空気感を想わせて桜を表現する上でも効果的であり、微細な石目地が魅力的。美しさを追究した作品である。一匠の活躍期は幕末から明治初期で、他の金工と同様に新たな金工芸術模索の時代の一人である。
Photo②は同じ一乗門下の杉岡一拳(いっけん)の鐔。鉄地を高彫とし、春秋の風景画としている。桜と川瀬の取り合わせで、吉野、あるいは吉野の雅よ京に移した嵐山が知られている。楓と川瀬の組み合わせは古歌「千早ふる神代もきかず竜田川、から紅に水くぐるとは」で良く知られているところで、画題としても間々みられる。この鐔は高彫に金銀の象嵌、川は銀、金真砂象嵌を散すことにより、春はほころび始めた草の芽の鮮やかな様子を、秋は吹き寄せられた枯葉の様子表現している。